【感想・ネタバレ】魔道師の月のレビュー

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Posted by ブクログ

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本棚を整理した際、未読本として出てきました。
タイトルと表紙に惹かれて(本との出会いは一期一会だったりしますので)購入したものでした。それからおよそ7年を経てようやく頁をひらくこととなりました。

まず、とても読みやすいことがあげられます。翻訳ものにありがちなどことなく存在する違和感がない。最初から日本語で書かれたからであろう、異国の名称もぎこちなさを感じない。しかし日本で書かれた洋風ファンタジーのような「なんちゃって」な空気もない。遠い国で編まれた物語が長い旅路を経て届けられた重厚感がそこにある。それは筆者の圧倒的な「魔力」というなの言語力に基づくものでしょう。

本編でわたしたちは幾人もの人生をなぞる。
「暗樹」との戦いの軌跡を、痛みを、苦しみを経験する。太古の昔から繰り返される「闇」の眠りと台頭に巻き込まれる。
人間に与えられた永遠の命題は、一筋の光とともに物語の環を閉じる。それはつかの間のことなのか、永久のものなのか、誰にもわかりはしない。

前作も続編もぜひ読んでみたくなる、大きな大きな物語でした。

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2021年09月21日

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前作の『夜の写本師』から続けて読みました。

前作にも登場したキアルスが主人公(レイサンダーも主人公かな)。
タペストリーの中のテイバドールの人生を経験することでキアルスが精神的に成長していく姿が良かった。

ファンタジーが好きな割には私の脳はファンタジーへの適応力が低いのか、レイサンダーが巻き込まれた不思議で大変な体験の情景がなかなか頭に浮かばなかったので(私の読み方がまだまだ浅いのかも)、星は4個にしました。

闇に喰われたガウザス皇帝を討ち取った近衛隊長のムラカン、とても信頼できる上司ですね。この人が新しい世を支えることが出来なくて残念です。

カーランはひょっとすると『夜の魔道師』に登場したエイリャの前世の姿かな?と思っています。

次の作品『太陽の石』も読んでみたいと思います。

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2021年05月08日

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前作「夜の写本師」を読んだ時も圧倒的な世界観に驚かされたけど、今作ではこの世界の『魔導師』の定義や、魔法のあり方自体に驚かされた。大抵のファンタジー作品の魔法は、才能と決められた儀式によって受け継がれてるものだと思うんだけど、この世界では魔法の種類によって、お互いの魔法がどのようなものなのかさえわからないってのが面白い。読み始めに、時系列がよくわからなくなってしまって戸惑ったが、そこが読み取れれば壮大な物語をあとは楽しむだけだ。私は楽しめた。

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2016年03月13日

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『夜の写本師』に続く2作目(しかしあくまで独立している話)ということで、さっそく読んでみた。

前作の世界観を引き継ぎ、登場人物の一人であったキアルスが主人公の一人となっている。

「暗樹」の不気味さが際立っていて、ホラーさながらのおそろしさ。

前作は相手が生身の人物であったために気にならなかったが、今回はもっと宇宙の根源的な存在。その壮大すぎる設定や、抽象的でややもすると難解な描写の連続に対して、決着のつけ方には少し拍子抜けするような感じを受けた。

またメインの二人が問題意識や目的を共有する、互いに信頼関係を築く、その過程になるようなエピソードや時間がほとんど存在せず、ただ「テイバドールの体験を通して」理解し合う、というのも若干腑に落ちない印象だった。

しかし古代ローマや周辺世界の諸民族を思わせる精緻な世界観や、きっちり設定された魔法体系の構築は相変わらず感嘆させられるし、筆致の濃密さは魅力的である。

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2015年10月11日

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夜の写本師のシリーズ2作目。
魔法の世界や仕組みの細やかな描写が、筆者の魅力なのだと思います。でもそちらより、私はストーリーやキャラクターを重視。2作目でようやく広がりや深みが見えてきた気がするので、これからに期待します。

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2015年05月06日

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今作も読み応えがありました。自分の中に闇を持ち、その闇に呑み込まれないようにしなくては、秀でた魔道師にはなれないという前提に、今作はさらに深さと重さが加わったように思います。

特にレイサンダーという若き魔道師の存在感は、秀逸。

闇を持たぬ魔道師が、暗樹との衝突の中でその一部を自分の中に封じ込め…太古の暗黒が内側に棲まうとんでもない魔道師になる。ここまでは、その背負ったものへの不安や底知れぬ恐怖に苛まれてゆくことになるのであろうと当然ながら予想したのに。

…まさか、暗樹そのものを。いや、まさか。しかも飄々と、直感で。

今作では、彼の存在が世界の救いであり、キアルスの癒やしであったことに気づかれた方は少なくないのではないか。

レイサンダーには自然を愛し、規律を尊び、人や生き物を大切にする強さがある。本人はそれを意識もせず、信じもしないのに。しかし、ストーリー全体をもう一度見渡してほしい。キアルスはいつの間にか…あの忌まわしい事件に囚われ続ける日々を抜け出してしまっているではないか(今生に限ってのことだが)。帝国は保たれ、よりよき君主の元で再生の道を歩み始め、世界は彼という唯一無二の存在がなければ崩壊していただろう。

闇を持たぬ魔道師であったからこそ、できたこと…なのではなかったか。あの事件以来、とてつもなく深い闇を抱えたままのキアルスには、レイサンダーの役は務まらなかったのではないか。

そうしてまた、唐突に気づいたことがある。キアルスやレイサンダーは、崇高な正義を胸に行動したのではない。時に恨み、時に嘆き、時に羨む。そんな自らの感情に身を委ねたり、抗ったりしながら進んでいる。預言ですら、暗樹の末路を示すことができなかったのに、ふたりの魔道師が不可能を可能にした。預言に従うのではなく、あるがまま、心のままに振舞うことで。

あの偉大なキアルスをさえ変えたレイサンダー。
彼の無様でたどたどしい生き方に、最も共感した。彼の物語を、もっと読みたい。

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2015年03月31日

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なかなか壮大な物語だった。キアルスがメインの物語ではあるけれど、テイバドールの枠が想像以上に多かった。レイサンダーはどう絡むのかと思ったら大変重要な役割を担っていて、視点がいろんなところに飛んで大変だった。世界観が壮大。作り込まれている。自分の理解がまだ足りてないなと思った。この世界の物語をさらに読んでみたい。

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2023年07月27日

Posted by ブクログ

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いやちょっとまって。これ女性が書いた話だったよね…?とショックを受けた。なぜなら強姦されてできた子供を愛せず苦しむ女性を、哀れで愚かな女のように弟が言及する箇所がある。子に罪はないからだそうだが。
姉の苦しみに向き合ってこなかった、その弟のような男たちこそ、彼女を追い込んだ一因ではないのか?
その弟が主人公の化身のような存在なので、一気に感情移入できなくなり。
この世界に生まれた闇は、この弟たちのような男性によって生まれたんではないのか。なんて勘ぐってしまい、男たちの奮闘によって闇が封印されても「ああやっと後始末をつけたのね。世界を救ったかのように威張ってるけど」などと冷ややかに見てしまう自分が…
しかもゲイの皇帝が悪者だし。
一巻で女性性を深く考察しているなんて解説されているけど、むしろ保守一色にしか読めない。

私の底意地が悪いのか…
また些細な女性蔑視描写でファンタジーの世界に入っていけない、悪い癖が出てしまった…悔しい。

描写は相変わらず見事だし、私の好みが偏りすぎているに違いないから、あんまりな低評価は避けたい。よって星三つ。

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2020年09月06日

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