【感想・ネタバレ】「超常現象」を本気で科学するのレビュー

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Posted by ブクログ

たとえば幽霊について「存在するか否か」で考えるのではなく、「幽霊(という現象や概念)は役に立つかどうか」で考えるのは、非常に有益な視点だと思います。

また、存在についても、「心理的存在(個人的存在)」「社会的存在」「物理的存在」の段階を追っている点も、有益な視点だと思います。

若干、超常現象に肩入れしている印象はありますが、そのバイアスを排除して読むことができれば、示唆に富んだ本だと思います。

科学にとって「疑う」ことは非常に大切な姿勢ですが、「疑う」ことと「否定する」ことは違います。
そういった、科学の基本的な姿勢を確認できる、という意味でも、よい本だと思います。

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2014年10月20日

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ネタバレ

タイトルのとおり、本書では超常現象を本気で科学的に考えていきます。幽霊から始まり、超能力へと移っていきますが、とっかえひっかえするようにトピックを渡り歩くのではなくて、幽霊現象をしっかり考え抜いたうえでそこからの繋がりとして超能力現象へ移り(19世紀末にあらわれた心霊研究の流れを汲むものが20世紀アメリカの超能力研究でした)、そこで得た知見をもちいて再び幽霊現象と超能力現象を眺めるとそこに通低している原理と推測されるものがわかっていく。

本書は「超常現象」と呼ばれるものを科学的に見ていくだけにとどまりません。まず、「幽霊はいるのか」ではなく「幽霊はなんの役に立つか」という実用性の視点から見ていきます。つまり、従来の超常現象観を発展的に捉えなおしているのです。「幽霊はなんの役に立つか」と考えていくことは、超常現象にまとわりつく迷信や無益な不安、恐怖の感覚をはぎとって、現象そのもののエッセンス・本質に近づくことになります。ここまでが本書の中身の半分です。残りの半分は、議論の旅の果てにたどりついた場所で知る「なんの役に立つのか」の解答を論じていくような中身になっています。そこがとてもエキサイティングでした。

交感神経(意識)と副交感神経(無意識)は、お互いに抑制し合いながら、どちらかが優位なときにはどちらかが不活性状態になるというかたちでバランスがとられています。覚醒状態、睡眠状態、夢見状態が知られますが、神経科学等の研究者たちは「第四の精神性」と呼ばれる交感神経系(意識)と副交感神経系(無意識)が両方とも活性化した状態があることを指摘し、超心理学の研究者たちは透視などの超能力現象が「第四の精神性」のときに生じやすいことを主張しているそうです(超心理学とは厳密な科学的手法に則ったやりかたで透視やテレパシーを研究する学問領域です)。

そういったところから考えていくと、どうやら「無意識」が幽霊も超能力も、そしてシンクロニシティやセレンディピティをも生じさせているようだ、とわかっていく。そして、最後に辿り着くのは創造性です。クリエイティブな能力は、どうやら無意識が担当している。そして、社会性つまり社会のいろいろな面を知ること、言い換えれば現実世界そのものの在り様を意識上でしっかり理解していることを前提として、優れたアイデアが無意識からどうやら生まれるのだ、という結論に至っていく。もう「超常現象」を科学する本だとだけ思いながら読んでいましたが、びっくりするような飛躍をしました。裏テーマが「クリエイティブ論」ですから。とはいいながら、そういった展開をしてくれたほうが僕にとってはありがたい読書でした。すごく興味のある分野でしたから。

さて、ここまでで一気に本書の中身を貫いた形になりました。最後におもしろかったトピックをひとつ紹介します。人付き合いにおいてまめに連絡をとったりなど関係を維持し続けることには、気苦労が多くなったりして短期的にみれば損だけれども、長期的にみれば自分の助けになる、という見方がされていました。人生をギャンブルとして見る人の考え方にのっかって論じた話のなかでです。このあたり、乱数や確率の話でもあって僕なんかには身を持ってよくわかる話でおもしろかったです。それに、近頃ではよく、人とのつながりは大事だよなあと思うようになって、これは背中を押してくれる考え方なのでした。

と、そんなところですが、新書タイプの本ですし200ページくらいなのでさくさく読めること請け合いです。超常現象と創造性のどちらにも興味がある方ならば、とても好い読書時間になると思います。また、「無意識」を知りたい人にとってはかなりよく知ることができる入門編でもあると思います。おすすめです。

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2022年02月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルに「超常現象」とあるわけで、この本を読む人は暇なんだけど読むものがこれしかなかった等のことがない限り超常現象に興味がある人だと思う。
かく言う(かく書く?w)自分も当然大好きな人で、そういう体験をしたこともあるから、(それをそう定義づけするのなら)「超常現象はある!絶対!」と思う方だ(爆)

というか、「幽霊(のような存在)と見た」とする人は古今東西枚挙にいとまがないわけで。にもかかわらず「そんなものはない!」と断言(否定する方って、なぜか“きっぱりと断言”する方が多いw)出来ちゃえるほうが不思議な気がするんだけどなぁ~(笑)
と言っても、「それは絶対死者の魂だ!」と思っているのではなくて。
もしかしたら死者の魂かもしれないし、たんなる錯覚かもしれない。
つまり、ソレが死者の魂なのか錯覚なのかはともかく、「幽霊を見た」という人は沢山いるのだから、(そのことを超常現象と定義するなら)それを“ない”と言うほうがおかしくないだろうか?w
そもそも「幽霊」なんて定義づけ出来ない(出来ていない)わけで、そんなものは科学的に否定も肯定もしようがないと思う。

よって、当たり前だがこの本にも万人が納得のいく回答はどこにも書いていない。
ていうか、著者の意図は回答を書くことではないのだろう。
もっとも、著者は好きな人のようなので、回答を書けるものなら書きたかったろうなぁーと思う。

この本のことは前から知っていた。でも、この手の本に納得いくようなことは書きようがないわけで…、まぁ読むほどのことないよね?みたいなw
読む気になったのは、先だって理系の友人と話していて、そういう話になったから(爆)
というのも、前にも同じような話を聞いたことがあったのが、理系の人が超常現象に興味があると、大学や会社で教授や先輩から「超常現象なんかに興味持っていたら出世できないからやめろ」と諭されるんだとかで。
もちろん、自分のテーマの研究やら仕事をちゃんとやらなきゃ出世できないのはわかる。でも、仕事や研究の合間に「それは何なんだろう?」と考えるのは、気分転換や思考の訓練としてもいいことだと思うんだけどなぁーと思っていて。ふと、思ったのは、「あ、今の日本企業から新しいモノ・コトが生まれない理由って、もしかしてソコなんじゃない?」と思ってしまった…、
というわけ(笑)

この本は、幽霊なんて怖くない的な「反」、主に超能力の実験を紹介する「半」、幽霊を役立てようの「汎」の三章にわかれている。
正直、「反」と「半」の章は今一つだった…、かなぁ(笑)
「反」は総花的すぎて、どれもどこかで聞いたような説明になっちゃっていたし。「半」は、著者がしている研究ならともかく、読者としては次の「汎」につなげるための章になっているように感じてしまうからだ。
では、その「汎」が面白かったかというと、うーん、ちょっと期待外れ?w
ていうか、想像していたことの斜め45度辺りのことを書いてきたなーという感じ(?)

というのも、それこそ、幽霊を見たというのは古今東西あること。なら、ソレが見える仕組みを解明して、次世代モニターを開発。モニターの世界シェアを握ったらいい、くらいのことが書いてあるのかと思っていたのだ(爆)
確かに、「無意識」を活用して創造力を活性化させるというのもわからなくはない。猫も杓子も日がな一日スマホでSNSやゲームに熱中している「無意識」のない状況じゃ創造が入る隙間がないよなぁ…なんて気がしないでもないから(笑)
とはいえ、本の主題が「超常現象」だけに、もっと“超常”な面白いことを書いてもよかったような気がしないでもない。

ただ、示唆に富む(と個人的には思った)こともいろいろ書いてあった。
“無意識は、生物の歴史から見ると、人類以前の多くの哺乳類が身につけている「進化する仕組み」”とか。
また、“かつては個人が超能力実験を信じることがESP実験の成功率を上げると考えられてきたが、最近は社会的な態度が態度が重要だとされる”なんかは、戦後の焼け跡からGDP世界2位になるまでの復興を遂げた経験があるくせに、一度バブル崩壊したくらいで「もうあんなことは2度とないよ」とみんなして悟り顔してりゃぁ、そりゃ失われた10年が20年、20年が30年になってもおかしくないということなんじゃないかと(笑)
さらに、個人的に興味深かったのが“現在の脳科学実験では、「自由に意思決定したと自覚する瞬間」よりかなり前の時点で、すでに「無意識に決定したと相当する生理的信号」を脳内から検出できている”という話。
そういえば、確かそんなことが書いてあったSF小説があったよなー思いつつ。これはその小説を読んだ時に漠然と思ったことなんだけど、ソレって幽霊の正体の一つなんじゃない?なんて(爆)

そういえば、テレビでどこかの会社の社長が言っていた、「夢がなければ会社はモチベーションが続かない」という言葉。
ま、超常現象の本の感想でそれを出されても、その社長も困るだろうし。何より、その社長の言う「夢」は超常現象ではないんだけどさ(笑)
とはいえ、2000年前後の日本の家電メーカーで人員・給料が削られるのに仕事はどんどん増え、正月も働かないと仕事が追いつかない。なのに、シェアは結局新興国企業に奪われていった、あの状況を傍で見ちゃっただけにねぇ…。
冗談でなく、今の日本の会社に必要なのは即戦力ではなく、“どうやったら幽霊で儲けられる?”みたいなおバカな課題を突き付けられることなんじゃないかと思えてならない。
ていうか、日本の会社が巧くやっていたあの頃って、その手のおバカなことを言ってた会社、結構あったよね?w

と、それはともかく、ここまで書いていてふと思ったのは、なぜ幽霊を怖いと思うのか?という論考が抜けているんじゃないかと。
それを「反」の章でするのが適当なのか、「汎」なのかはわからないが、個人的には、よく言われる“ソレが未知の存在だから”だけではないように思う。
幽霊や超常現象の面白さというのは、“ソレが謎だから”とともに、“ソレが怖いから”というのは大事な視点のはずだ。
鬼太郎の境港やロンドンのゴーストツアーなんかはまさに「汎」だし。
交通事故の多いん場所に幽霊の看板を立てたら事故が減ったなんていう「汎」も昔はあった。
ぜひ著者には、もうちょっと具体的に踏み込んだ第2弾を期待したいところ(笑)

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2019年02月11日

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科学の視点から、心霊現象や超能力を理解する本。
心霊現象や超能力を全否定するのではなく「役に立つか立たないか」という視点で解説しているのが面白い。
宇宙人誘拐=金縛り、には驚いたけれど、読むと腑に落ちる。

学生の頃、石川先生の講義が毎週楽しみだったのを思い出した。

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2018年07月24日

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文字通り「超常現象」を科学の世界から丹念に解きほぐそうとする一冊。

陰謀論みたいにわかりやすい結論があるわけではないし、現在も解明されてない部分もあるが、それ故に真摯にアプローチしているように思えた。

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2018年07月02日

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簡単に言うと超常現象を超常的現象として科学サイドからプラグマティックに捉える試み。と言ったらいいように思う。面白い試みだと思うしキライな連中を炙り出すのにも有用なように思うし、非科学的な態度として全面的に退けられていたり課題にならなかったことに建設的に取り組んでいて面白いなと思った。

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2017年12月18日

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現時点で著者が超心理学という科学の視点から、心霊や超能力を考えるものだった。現在の科学では解明されないものがあり、万能ではないのだから頭ごなしに心霊・超能力現象は否定されるべきではないという至極当然な考えに立脚しているのが好印象。怖い幽霊から役に立つ幽霊なんて面白い考えだ。ポルターガイストと念力が同根であるという仮説も妙に納得できる。全ての超常現象に対し考察を加えるものではないので、幽霊の映像であるとか、念力の真偽を解説しているわけではないので、これから読む人は注意が必要だ。

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2017年08月28日

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 科学で証明できる超常現象もあれば、今の科学で説明できない部分をもったものもあり、それらについての説明を面白く読んだけど、本書の肝はその超常現象はあるかないかではなく、社会性のある創造となりうるかどうかにある。超常現象には人の無意識の関係が強いらしく、その無意識が生み出しうる創造を社会や個人に活かすことを考えるという視点が、オカルトを扱った本を初めて読む私には新鮮に感じられ、とても面白かった。創造的な挑戦の姿勢が無意識の生む可能性を拡げるということを心に留めておこうと思う。

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2015年12月20日

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超常現象の解説そのものよりも、その解説のために紹介されている、いろいろな認知科学・脳科学の知見をまとめておさらいすることができる、という意味でとても面白った。
「無意識」にスポットをあてるため、認知科学の先生にしては、ユングをはじめ、深層心理学をちょっと重んじ過ぎてないかな…という気もしなくはなかったが、でも確かに、まだよくわかっていない「無意識」をこれからどんどん解明していくに当たって、やっぱりユングは避けて通れないところはあるだろうし。
なお、先生がこの本を書くきっかけは、北野武監督との対談だったとか。ホント多才だね、北野監督。

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2015年05月29日

Posted by ブクログ

幽霊や超能力といった類をあるかなしかではなく、実用的な角度で実際にそれが社会や生活に役立つのかを考えるというのは新しい考え方になった。現実と同時に未だ何かとスピリチュアルなことも望まれる現代、個人の認識や科学的にも必要なものの見方だと思う。

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2015年03月19日

Posted by ブクログ

一般向けに簡単に書かれている。ESPとシンクロニシティの関係、無意識と意識が同時に高まった意識状態(第四の意識状態)がESPや神秘体験に関わること、こういった意識が創造性に役立つこと、などが書かれている。科学的で中立であることを考慮しているのが読み取れた。なぜシンクロニシティやESPが起こるのかという原理については謎のまま。これは今後の課題ということか。

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2014年12月08日

Posted by ブクログ

幽霊や超能力などの現象を科学の観点から解説した本。こう書くと普通の超常現象否定本みたいだけど、ただ単に否定するのではなく「そう錯覚してしまうのは何故か?」を分かりやすく解説してくれている。社会にとって役に立つ・立たないという視点から超常現象を論じているのも新鮮だった。

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2014年08月03日

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超心理学 顔の認識 リチャードワイズマン幽霊否定派 ジェシーべリング、プリンセスアリス実験 回帰効果の誤認サプリメントとの関係 確証バイアス 認知的不協和の解消 レオンフェスティンガーの実験 エマヌエルスウェーデンボルグ ジョゼフバンクスライン ガンツフェルト実験チャールズホノートン ウィリアムロール、ボルダーガイスト シンクロニシティ、ユング 無意識、続ける事
 

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2014年07月04日

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幽霊はいるかいないか、ではなく、役に立つかどうかという視点が有効。どのような力で動いたかより、何を訴えかけているのか。無意識が科学されると非常に役立つ。

科学は置いておいて、役立てようと。それはそうかも。

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2014年11月01日

Posted by ブクログ

≪目次≫
序章   なぜ超常現象を科学するのか
「反」の部ー幽霊をめぐる非科学的主張に反論する
第1章  幽霊が見えた?
第2章  迷信とお守りの誤解と詐術
第3章  夢と幽体離脱
「半」の部ー超能力現象を半信半疑で検証する
第4章  超能力と夢の中の世界
第5章  それは誰のしわざか
第6章  未来がわかるとはどういうことか
「汎」の部ー超常と日常を合わせて広汎に考える
第7章  「無意識」の大きな可能性
第8章  幽霊体験の社会化
第9章  解体される超常現象

≪内容≫
超能力やオカルトを罵倒する本かと思いきや、超常現象の可能性を述べている本。と言っても、眉唾なものははじめから一刀両断だが、ESPカード実験はわずかながら透視能力や予知を見出し、幽体離脱にも科学的な判断を下している。そして、幽霊の目撃や金縛りを含めて、
「無意識」という概念で説明できないか、その可能性を述べている。科学と言うか「心理学」がここまで研究しているのかという驚きで本を閉じた。

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2014年06月12日

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