あらすじ
大学の構内でおっとりと上品な学生・行人と出会い、いかにも苦労知らずの彼を無性に傷つけてやりたくなる田上。しかしどんなに露悪的にあしらってもにこにこと慕われ、辟易してしまう。やがて手酷い裏切りを最後に姿を消した田上だったが、その行方を執念深く捜し出した行人は、田上を許すばかりか起業のパートナーになってほしいと申し出て……!?
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Posted by ブクログ
▼あらすじ
先見に長けて計算高く、ひねくれ者の田上。裕福で純粋な行人を傷つけてやろうと近づくが、思いがけず懐かれてしまい…!?
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田上(攻)と行人(受)、交互に視点が変わるのでお互いの気持ちの変化が分かって面白かったです。
見事に性格が正反対なので二人の掛け合いでちょっとクスリとしてしまった部分も(笑)
とにかく見た目ふわふわ系男子の行人に振り回されてしまう悪党になりきれない悪党の田上が個人的にはツボでした。
なので田上の唸りながらのキスはニヤニヤが止まらなく、それと同時にもどかしくて
く〜っ!焦れったい!と思いながらひたすらページを捲ってました(笑)
あと、何気に行人のお祖父さんが良い人というか、後ろを向けば後悔でも前を向けば教訓に変わる…みたいな名言を残してて地味に感動…。
心理描写もしっかりしているし、二人が成長しながら気持ちを変化させていく様子もきちんと描かれているので唐突感もあまり無く、最後まで楽しく読む事が出来ました。
ヨネダコウ先生のイラストも相変わらず素敵です!
Posted by ブクログ
自分がこんなに攻視点で物語に共感したのって初めてかもしれない。
しかもロクデナシ攻に。
裕福な家庭に育ち、何でも器用にこなし、端正な容貌と明晰な頭脳を兼ね備えた行人。
人当たりの良さと『何でも出来て悩みなんてなさそう』なんていう自分の上っ面だけ捉えた周囲の評価にいちいち傷ついたりしない強かさも持ち合わせている。
ある日、行人は教室の最前列を陣取り、講義に没頭する男、田上に目をとめる。
ふとしたきっかけで言葉を交わすようになるが、誰とも馴れ合わず、どこか斜に構えている田上の辛辣な物言いさえ新鮮で、次第に興味をひかれる。
田上の方はと言えば、行人は最も嫌いなタイプだった。無視してしまわなかったのも、根底には悪意があったから。
田上は金を集めていつか事業を起こし、生まれながらに恵まれた人間の上に立って見下してやりたかった。そのために人を騙したり、傷つけたりすることに罪悪感なんてない。騙される方が悪いのだと。不遇だった自分の生い立ちを言い訳にして。
行人から金を騙し取って行方をくらましたのは、次第に行人に興味を持ち始めた自分に危機感を覚えたせいでもある。
田上の裏切りに、あぁやっぱりと思う反面、たかが300万円程度の価値で切り捨てられてしまった自分に行人は衝撃を受ける。
でも行人がただの深窓のお坊ちゃんではないのは、ここからものすごい執着心を見せるところ。それはもう、田上にして『最悪のストーカー』と言わしめるレベル。ついには居所を突き止める。
警察には訴えない代わりに、自分の片腕となって一緒に会社を起こして欲しいと、半ば脅迫めいた提案を持ちかける行人。
行人が飽きるまで付き合ってやると観念した田上。
行人の夢みたいな発案を現実的なレールにのせていく田上。
実はお互いが最高のパートナーなのだということに気付き始める。
悪意すらも飲みこんでしまう行人の鷹揚さに、愛されて育った者だけがもつ揺るぎのない健やかさに、そのしなやかな強さに、好感以上の感情を抱き始めた田上は動揺する。
いつか自分は激情にまかせて行人を壊してしまうのではないかという恐れ。それすら凌駕するほどの破壊衝動。
再び田上は行人の前から去る決意をする。
やっと自分の片腕として手に入れた田上が自分の元を去ろうとした時、行人は自分の執着心の正体を思い知る。
そして再び、追いかける。追いかける。
田上への自分の気持ちを自覚してからの行人は、それはもう、とんでもない誘い受だ。卑怯だッてくらい。
悪党だったはずの男が、あっという間に毒気を抜かれて、すっかり懐柔されていく図はなんとも微笑ましい。
こうと決めたら愛することを疑わない行人とぎこちなく愛を乞う田上はなんだかんだいって結構いいカップル。
悪い男の話だったはずなのに、不思議と気持ちの良い読後感。