【感想・ネタバレ】クビライの挑戦 モンゴルによる世界史の大転回のレビュー

あらすじ

13世紀初頭に忽然と現れた遊牧国家モンゴルは、ユーラシアの東西をたちまち統合し、世界史に画期をもたらした。チンギス・カンの孫、クビライが構想した世界国家と経済のシステムとは。「元寇」や「タタルのくびき」など「野蛮な破壊者」というイメージを覆し、西欧中心・中華中心の歴史観を超える新たな世界史像を描く。サントリー学芸賞受賞作。(講談社学術文庫)

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Posted by ブクログ

啓蒙書のためか第一部「あらたな世界史像をもとめて」など頼りないほど粗っぽいが、これをこう書くためにはそれこそ目の潰れるほどの研鑽の蓄積があるのだろう。

数年前に「チンギス・ハーン」に関する本を小説を含めて十数冊読んだが、それと相俟って面白かった。

中国は「元」の時代を自国の歴代王朝の一つに組み入れているが、杉山は「大元ウルス」は中国を占領したモンゴル政権だという。

全体として「南宋」「明」に対する筆が厳しい。

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2012年01月04日

Posted by ブクログ

p.73
「……ながいあいだ人類の営みのおもな舞台であったユーラシアの歴史のうえで、きわめてまれな例外として、ユーラシアの中央部をおおう史料の雲が晴れ、東西の世界を文献のうえからもひとつのまとまった姿で眺められる時代がある。それは、モンゴル時代である。もとめれば、たしかな証拠がもとめられ……もとめようとするだけの史料の壁と言語の壁をのりこえることができる状況が、いまようやく開けつつある。それが成就したとき、『世界史』は西欧中心史観とはまったく別のもうひとつの全体像を真の意味でとらえることができる……。」

本書はもともと朝日新聞社より1995年に発売されたらしく、それを講談社学術文庫が再出版した作品。同じ作者が一年後の1996年に講談社現代新書から出した文章の方がおもしろかった。上下巻で内容も本書より濃かったように思う。その分、本書は少し稀薄で物足りない。

モンゴルはヤクザで中華文明に侵略し勝手に自滅して消えていった一発屋……そんな今までのモンゴルについての誤解を解きつつ、何なら今の世界で当たり前となっている通商観念や経済活動はどれもモンゴルの大元王朝に始まると説く。
モンゴル時代の東方は世界を牽引し続けたが、モンゴルを駆逐した明は内向政策をとりはじめたため、今までモンゴルの蔭に隠れていたヨーロッパが俄かに海に乗り出し、東方で発展した銃火器を進化させて一気に世界史を席巻しはじめた……。

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2025年04月18日

Posted by ブクログ

歴史の教科書では学べなかった、歴史上世界最大のモンゴル帝国でなされていたことがわかる本。どこまでが事実かわからないものの、かなり現代化されたシステムが1300年代にあったかもしれないことがわかる。

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2022年01月02日

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クビライは、各王族が自立的な動きを見せながらも大カァンを中心とするシステムをユーラシア大陸に築きあげた。元を中国史の王朝交代の文脈でみるとスケールを誤るのは分かった。

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2020年04月07日

Posted by ブクログ

元々史書の習慣がない遊牧民のため「元朝秘史」など限られた文献しか残されていないモンゴル帝国。ゆえに破壊者の歪んだイメージが先行しがちだが、彼らの功績にスポットを当てる。

いまの世界史の起源は東西を結び付けたモンゴルだと思うし、通商により世界を活性化させたのはチンギスでありクビライであろう。殺戮者という一方の見方の裏側を、被支配国からの視点で分析したのは面白い。

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2014年09月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者らしく、既存概念へのアンチテーゼを強調しているのか、モンゴルへの称揚と伝統中華やヨーロッパへの批難が激しい。特に明朝に対しては手厳しい。残虐なモンゴルへのイメージ脱却のため、世界帝国形成の間の戦況を説明し、モンゴル征服後も人口の大幅な減少が起こっていないこと、都市の繁栄は続いていることを強調する。モンゴルの快進撃は、イスラーム帝国が急激な膨張をしたように、改宗を迫らなかったこと、降伏させて経済的に取り込むことを優先したことが挙げられる。
クビライが大元大蒙古帝国として志向したのは、経済統合による世界システムだった。ムスリム商人を取り込んでの自由経済の奨励と、そこからの商税、そして大半を占めるのが塩の専売から上がる富が中央政府の財源であり、その富を各地の王室へ銀として賜与して政治的に繋ぎ止め、各王室は賜与銀をムスリム商人へ投資し、商税として回収する。そうした経済的な点と点の支配がクビライ構想の支配体制だった。
モンゴル帝国が崩壊した理由を、世界的な寒冷化天災を一因ともしつつ、クビライのシステム構想が早すぎ技術的条件が整っていなかったためとしている。私見では、時代的な早さもだが、勢力拡大時に極力現地文化制度をそのままにしたため、強固なシステムを構築・根付かせることができなかった速さが大きな要因だと思う。

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2022年01月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

モンゴル帝国にして元朝の皇帝クビライの人物、あるいはモンゴル帝国の研究書。従来のモンゴル帝国にたいする再評価を迫る作品である。NHK『文明の道』第5週でモンゴル帝国が海上交通や駅伝網を重視し、緻密な行政システムを作り上げていた研究成果を示した。これに関する詳細な文献を探していたところ本書にたどりついた。モンゴル帝国に関してはヨーロッパからの評価を引き継ぐ形で今まで語られることが多く、野蛮な遊牧民族の側面、軍事的な側面ばかりに注目されてきた。しかし実際は「通商王国」ともいうべき交通の発展をもたらし、東西文化の結節の役割を果たし、「大航海時代」を準備したと結論付ける。著者の主張は明快でダイナミックに富む。今後もモンゴル帝国の国際性、行政システムに関する分析が待たれるところである。中学・高校日本史の授業においてもテーマ授業として取り扱いやすく、従来の歴史観を相対化させる題材として良いと思った。

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2011年10月27日

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