【感想・ネタバレ】「育休世代」のジレンマ~女性活用はなぜ失敗するのか?~のレビュー

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Posted by ブクログ

自分が男なみに評価されるために頑張ってきたこと、これがそれからは通用しないために悩むことになることを突きつけられた。いずれ降りることになるなら今の頑張りはなんの意味があるのか。結婚で選ぶパートナー、仕事はもっとしたたかに選ばなければならないのか。女性として生きていくことってしんどいなあと思った。

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2022年02月14日

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ワーキングマザーが子育てをしながら、仕事にどう向き合っていくか、インタビューを基に分析。

「育休世代」という筆者の世代は、やりがい、自己実現重視。
なので、仕事をしっかりやりたいという気持ちで入りながら、大学までにはほぼ感じなかった、様々な”女性的な”扱いを経験する中で、人それぞれの対応をしていく

仕事に意欲があった人ほど早く見切りをつけて辞める。
色々と条件面を考慮して残っていた方が良いと冷静に判断した人間が残るのと、いわゆる女を捨てて、男勝りに戦っていく人が残るというのは、確かにそうかもと思える部分があった。

1984年生まれの筆者自体が東大卒の総合職、早めの結婚出産ということで、インタビューも同様のサンプリングのバリキャリ、早く結婚、出産のいわゆる勝ち組を対象にしている。
なので、ある意味偏った母集団の話であるというところを意識して読む必要もある。

あとは、インタビュー対象が若い年であるというのも、偏りになっていると思う。年齢ごとに仕事に対する情熱やイメージは移ろっていくものなので、歳をとってくると、先を計算しだして、いつまでも純粋に「やりがい」と言っていない気もする。
世代の考え方なのか、歳なりの考え方なのかを歳を追って定点観測することで導き出して欲しいなと思った。

もともとが論文を新書向けに書き直しているので、少し硬く、読みにくいところもありますが、なるほど、そうだよねというフレーズも盛りだくさんで、働く女性も、むしろ、女性と働いている男性が読むべき本だと思います。

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2020年09月23日

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一緒にプロジェクトをやったことのあるママの社員と雑談している時に「ぜひ!」と勧められた本です。結果的にこの夏の「はたらく」ことについて考える課題図書第四弾になりました。「女性活用はなぜ失敗するのか?」という副題の構造を調査によってかなり明確に顕在化した本だと思います。「なんとなく感じていた…」ことと「なるほどそうなのか…」ということがないまぜになった複雑な読後感です。ハッキリしたけどスッキリしないような…。そのモヤモヤ感が会社と社会が抱えるこの問題の難しいところなのでしょう。国も会社の制度として施策を打っているのだと思いますが、教育と会社の接続のところでジレンマが起こっているがよくわかりました。「一億総活躍社会」を提唱し女性と高齢者の労働力を社会に組み込もうとした首相が退陣することになりました。その路線を継承するといわれている次の首相候補はこの問題をどう考えているのか聞きたいところです。一方、今回のコロナ禍でリーダーシップを発揮しているドイツ、メルケル、台湾、蔡英文、ニュージーランド、アーダーンの女性トップの存在が注目されています。女性首相が生まれればいい、ということではないとも思いますが日本社会が女性活用の先進国になるにはまだまだ道遠し、かもしれません。ただ、著者のいう『「育休世代」のジレンマ』をテーマとしることはロールモデルの顕在化という観点から、その数が少ないにしてもインパクトが大きいと思います。そして、人生は続きます。「育休世代」の子供たちが大きくなった時の彼女たちのキャリア形成についても息長く調査して欲しいと思いました。著者その人が当事者なのできっと。

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2020年09月06日

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制度が整ってきたのに、どうして総合職正社員の女性が出産後退職するのか。
どのようにして「ぶら下がり」になっていくのか。
筆者が大学院の修士論文に加筆したもの。
学術的で様々な視点から分析されており、説得力のある良書。
ワーママを部下に持つ世代、ワーママ世代、これから結婚出産をするであろう若い世代の男女に是非目を通してもらいたい良書。
論文なので、気軽に読めるというわけではないが、斜め読みでもいいので、色々な人に読んでもらいたいと感じた。

メモ。
仕事の量は調整してもらいながらも、内容(質)は変わっていない例が継続の見通しがある。
預けるだけの収入を得られることに加え、やりがいがあることが、保育園に預けることの罪悪感を減らす。

雑感。
サンプルの方々、筆者の分析が自分と重なることがありすぎて、興味深く読めた。
サンプルが15人と少なく感じたが、筆者が過去の論文等で計量分析では一人ひとりの経路が見えなくなるため、敢えての15人とのこと。

学生時代に女性と認識していないマッチョ系(就活も女性が働きやすい会社とかではなく、やりがいや、男性社会の中で頑張ることを選んだ人)が辞めていく。男性同等に働き、意欲を持っていた人が、自分や会社が求めている働き方ができなくなり、諦めて辞める。(サンプルではマスコミや建築関係)また、マッチョ系の人は男性の育児参加や、子育て理解にも保守的。(バリバリ働いている男性を見ているからか?)
自分が女子校出身等で、女性であることを受け入れて過ごしてきた人は、女性が活躍できそうな会社を選び(やりがいと引き換えか?)、出産後も会社の制度を利用してマミートラックにも多少耐えながら継続している傾向がある。

会社は、育休明けの人の仕事の質を落とさずに、量を調整することで、離職を避けることができる。心理学的に仕事にやりがいが無いと、長時間子どもを預けてまで自分がやる必要のある仕事か?と思ってしまい、辞めることを考える。特に、新卒総合職で就職した女性の伴侶は同じくある程度の給料をもらっているため、共働きでないと生きていけない経済状況ではない。
母親側は、職場に諦めるのではなく、できるだけ交渉することで、仕事を継続することを検討する。次世代のためにも。
女性同士で戦わない。(これは非常に難しい…)

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2020年01月09日

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高学歴、高収入の総合職女性が、現場でどういったプレッシャーを与えられ、結果として職場を去る決断やキャリア実現に対するモチベーションを一部下げる(諦める)ようになってしまうのかを、様々な論点に渡り議論している良書。
現在の15人の女性を調査する形式で、彼女たちの育った環境(家庭、教育面)、現在の環境(職場、夫、両親)等に光を当て、幅広く分析している。

私の年齢層よりは若干上の方々が、どういったことに悩み、そうなってしまったのかを知る上で非常に参考となった。
女性に限らず、男性にも、あらゆる年齢層の人にも読んでほしい。そして、思うだけでなく小さなことからでも行動していってほしい。

以下、雑感。

・女性には現在、制度があるがゆえの「産め、働け、育てろ」プレッシャーがある。聞いただけで辛い。
・夫の家事参加が非常に低い。今の社会の現状を変えていくには、女だけが訴えるのではなく、働く女性と同じ目線に立った男性たちにも声をあげてほしい。
・女性は諦めて職場を去ってしまう。それでは今の世の中は変わらないと思う。高学歴、高収入の仕事についている恵まれている層の女性にこそ、社会の変革に立ち向かい、声を上げる義務があるのでは?諦めたり逃げても何も変わらないと思う。絶対辛いことが予想されるけれど、私も逃げずに立ち向かう人でありたい。世の中を少しでも変えるための努力をしたいと思った。
・高学歴な女性ほど、家事育児に協力できない男性と結婚してしまうという現実には非常に納得。男性のみなさんには、働き続けたいと考える女性からすると、育児家事をやらない男性は非常に魅力が下がるという事実を男性にも気づいてほしい。一方で、そういったプレッシャーが男性たちにもかかっていることは過剰であるとも思う。
・結論として、日本人は働きすぎだから、短時間で効率良く成果を出し、男も女も家庭のことを普通にできる未来にしていかなければならないと思う。この意味では、日本はすごく遅れてる。今住んでいるイギリスではあり得ないことだ。
・アカデミックな見方をすると、研究としてよくまとまっていると思う。reserach questionのまとめ方。reserach methodの選択、limitation、考察、過去の研究事例などを踏まえたliterature reviewなどなど。社会科学分野の学生には良い研究手法の手本になる本だと思う。文庫本にしては内容が非常に充実しているし、限定的ではあるものの、深い部分まで洞察していると思う。

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2019年02月09日

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社会学の書籍としても、組織論の書籍としても、ジェンダー論の書籍としても優れた良書。現時点の日本では、女を受け入れ、女としてのキャリアで妥協している層がキャリアを積んでるとうのが皮肉だった。

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2016年06月03日

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個人的に今読むべき本だった。
なぜあんなにバリバリ働いていた女性が出産を機にぶら下がりのように見えたり、辞めてしまうのか。そこには男性のオトコ並み働き方を前提とした社会、そこに対応した名誉男性と女性性を受け入れている女性同士の対立でそもそも社会は変わらない、など…

今までの自分の考え方に新しい視点を入れてくれた良書。

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2015年10月10日

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自分自身もまさに「育休世代」であり、本書に書かれている問題に直面しているので、非常に共感を覚える。
同時に道は険しいとも感じる。
筆者の「本を書くことで世の中を変えたい」という思いに賛同します。

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2015年06月09日

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産んで育てて男性と同じ位働けっていうゲームには参加したくない。って社会人2年目位で思って、そこから抜け出していないし葛藤続きの私には、とりあえずやってみている人たちは、まずそのことがすごいなと思う。

選択の自由がある道にいて、こんな社会で大変だけど子どもを持つことが大切な人や産んでから気づいた人は調査対象のようになり、先に気づき矛盾に苦しみ戦うほど子どもを持つことの優先度が高くないと(他にも理由はあるが)私のようになる。

違う選択をしているけれど、私もこの人達と表裏一体。

もともと知ってはいたけど、自分の中の矛盾した希望や価値観のせめぎ合いが明示されていて分かるなぁと思うこと満載。

個々人の一度しかない人生は、社会の影響を多大に受けるんだよなぁと、しみじみ。

サンプル数が少ないということを著者が言及していましたが、私が13年働いている子育てをする女性が沢山いる会社で周りの先輩や同期の状況、葛藤、周囲の反応をみていて感じ考えていたこととの乖離感じなかった。
男並みに働いていた先輩は子どもの成績悪化であっさり退職、子育て中は葛藤しつつ全部60点で良しとするのと話してくれた先輩は働き続けている。

私にできることは‥、立場の違う女性同士の誤解に行きあったら表裏一体なだけだということ、共感の視点を伝えて女性間の分断の解消に微力だけど貢献できるかも。管理職や意思決定に関われる立場の女性と接点があり、私が子どものいない女性だから相手に聞いてもらいやすい気がする。(つい先週も女性マネージャーが、ぶら下がり女性社員と評する子どものいる社員への厳しい見方をしていた) あと、そういう人にはこの本勧めよう。

#Bookoff

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2017年05月04日

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女性には少なくとも2つの層があると思う。
第一に、周囲の期待に応えよう、あるいは既存の性役割を乗り越えようと、「女だてらに」と言われながら幼少時より男性なみに勉強し、男性なみに働いてきた/働こうとしている女性。
第二に、既存の性役割を受容し、あるいは積極的に活用し、女性という枠組みの中でみずからの主観的幸福感を最大化してきた/しようとしている女性。

第一の女性は一見すると、性役割を軽やかに乗り越えたかのようにみえる。けれども結婚・出産という、既存の性役割が顕在化されるステージを迎えたとき、本書に描かれたような葛藤に必ず直面する。

本書は、そこで結婚・出産を選択し、キャリアから「降りる」ことを余儀なくされた女性、いわば第一の層から第二の層に移ることを余儀なくされた女性の悔し涙に主眼を置いている。
けれども、葛藤ということでいえば、キャリアから「降りない」女性にだってある。名誉男性への道を進もうと、結婚や出産をあきらめ、第一の層にとどまり続ける女性にだって、同じように流す悔し涙がある。
出産・子育てを敢行しながら、歯を食いしばって第一の層にふみとどまる女性だっている。

このように考えた時、結局、終始一貫して第二の層にいる女性、はじめから性役割をうけいれ、周囲の期待に応えようとか、ロール・モデルを目指そう、などと思いもしない女性たちがもっとも葛藤から縁薄く、ストレスフリーなのだと痛感する。社会が変わらないのならば、女性もまた変わらない方が「利口」なのだ。
筆者のいうとおり、女性の性役割はまだしばらく揺らぎ続けるのだろう。

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2017年04月09日

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サブタイに「女性活用」って入ってるから敬遠してた1冊。読んだら著者の意図がわかりました。今バリバリ働いてる出産前の女性と、管理職のおじさまに読んでもらいたい1冊。

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2015年04月20日

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どうしてこんな思いして働いてるんだろう、とかほんとに共感できた。ワーママに読んで欲しい。みんなジレンマをかかえてる。

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2019年03月15日

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ネタバレ

共働き世帯が半数を超えた今、
各家庭のぎりぎりの努力で毎日が紡がれている。
夫婦間でも、実は、
お互いの辛いところや悩みを共有できていないかもしれない。
現状をデータから語り、分析した本。
管理職に特に読んでほしい。

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2018年05月18日

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1番面白かったのは、あとがき、巻末部分だと思う。総合職女性の言語化できないモヤモヤ。1番すべきは、夫が定時で当たり前に帰る事、それに付随する社会的影響。応援したいと思いました。

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2018年05月09日

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出産を経験した女性総合職にターゲットを絞り、彼女たちが抱える葛藤を研究した一冊。

総合職として働く道を選択した女性たちは、なぜその道を選択し、
入社、結婚といったライフイベントを経て、仕事や家庭への感じ方や考え方どう変わり、
出産を機にどんな道を再選択し、その選択にはどんな理由があるのか?

といったことを、企業に総合職として就職し、20代で出産を経験した15人の女性へのインタビューを通じて研究した本です。

【感想】

私は今まで、「女だから損している」というような感じ方をしたことがないのですが、
出産や育児をもし今後経験するとしたら、もしかしたらそのとき初めて、「女だから」に直面するのかな・・・

と思い、予習(?)のためにこの本を買いました。

出産するのは女性しかできないことなので、「産休」を女性がとるのは仕方ないけど、
育児は男性がやっても女性がやってもいいはずなのに、なんで女性ばっかりが育休をとらされて、キャリアをあきらめなきゃいけないのか?

・・・というような葛藤が、筆者と15人の女性たちもには共通してあるようでした。

企業の側が、女性が働きやすい施策を打ち出せば打ち出すほど、
家庭の中では 「おまえ(女性)が仕事休めば/時短勤務すればいいじゃん」 という話になり、
男女差別を助長してしまう、というジレンマがあるのだと。

・・・ほー。

確かに、女性が働きやすい施策というのは大事だけど、
女性だけが働きやすい施策は、結局女性を苦しめてしまうのかと、 なるほどと思いました。

本当の意味で女性が働きやすい会社になりたかったら、
女性だけが働きやすくなるための施策はだめで、女性も男性も働きやすくなるための施策が必要なのだということに、とても共感しました。

その他、なるほどと思ったこと。

・男性は基本的に総合職しか選べないのに、女性は一般職という選択肢があるのは、女性の「特権」だと思っていましたが、
 本書ではそのことを、男の仕事・女の仕事 という男女差別が、 総合職・一般職 という職種差別にすり変わり、より本質が見えにくくなったと書いてあり、
 なるほど、そういう見方もあるのかと思いました。

・女性管理職が少ないのを、女性の意欲の問題にするのはだめらしい。
 「そもそも、男性は意欲があってもなくても管理職になっていくのに、女性の場合はなぜか意欲が問題にされる。」 というのはなるほどと思いました。

・多くの企業における男女平等は、「女性と男性を同じように」ではなく、「女性を男性と同じように」扱おうとしているところに問題がある、という指摘。
 それで 「男なみ」 の考え方や生き方をしている女性だけが上に上がれる仕組みを作っても、
 結局 「男性」 と 「男なみ女性」 の意見しか経営に反映されないことになって、真の女性活躍とは言えないんじゃないの、という主張にナルホド。

読んでいるときは議論の粗さが気になり、あまり良い本じゃないような気がしていましたが
(筆者が修士論文として書いたものを、一般向けに改訂した本だそうです。)、
感想を書いてみて改めて、色々感じるところのある本だったと気付きました。

研究としての精度より、多くの人に読んでもらいたくて書いたという筆者の狙いは、当たっているな! と思いました。

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2017年05月06日

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著者が1984年生まれで同い年、ワーキングマザーの書いた本ということで手に取ってみました。

勉強もできて、大企業の総合職に就いて、晩婚・少子化が進む現代においては比較的早く結婚して出産もした。
言ってしまえば「勝ち組」のバリキャリ女性たち。生め、育てろ、働け、の全てをこなす“スーパーウーマン”たちは、はたして偉い人たちの言うように輝いているのか?というと、既存の企業のシステムや世間が求める「母親像」などに苦しめられたりして、実はボロボロだったりする。
…とはいっても食うに困っているわけでなし。こんなことは贅沢な悩みだ、私たちの苦労なんて苦労じゃないよね。…と、ものわかりが良く声をあげない彼女たちに対し、著者は言います。

贅沢だとか、あんたたちはどうせ勝ち組だとか、人は言うかもしれないけれど。
同じ立場の男性たちは全く経験しない苦労を味わっていることを、隠してはいけないのでは?
最終的に「女だから」「男だから」という言葉しか残らない不平等がある。悔し涙があり、憤りや生きづらさを感じたということ。そういう気持ちに誰も寄り添ってくれない世の中ってのはおかしいのではないか。つらいって言ってもいいんだよ、私たちだって。
(これで終わりません。)
というかむしろさ、勝ち組なんだからさ、エリートなんだからさ、私たちが感じた理不尽を出発点に私たちが社会を変えて行くんだよ!涙拭いたらやることやるぞ、おまえら!

という感じの、優しうて後に強し、なアツい本です。

※勝ち組とかバリキャリとかって言葉はキャッチーだしイメージがわきやすいから本書でも使われていたように私もここで使っているけど、なにかと議論を呼ぶ言葉ですね。ま、それはここでは割愛。


アツいといっても想いだけが空回りということもなく、どういう構造がこういう現象を引き起こすのか?といったところの分析がとても丁寧です。それもそのはず本書は著者が育休中に大学院で書いた論文を出版用に書き直したものなのだそうで。新書とはいえ「流行の話題と上手いタイトルが目を引くが1章だけでほぼ言い終わっててあとは薄味」みたいなことになっておらず、頭からつまさき、指先まであんこみっちり。その点だけでも感服の力作です。

以下、備忘メモ。

■「育休世代」という定義
・均等法施行から何年とよく語られる、施行直後の世代とはまた違う苦労があるよねという差別化。
・各種制度も整ってきて、昔に比べたら恵まれている。だけど!同じ女としての苦悩があるよね。

※この、「私とあなたとで状況は違う、お互い羨んだり妬んだりという気持ちを持つことも正直あるかもしれない、だけど、実は共感し合えるところもある、そこを出発点に、建設的に物事を変えて行く話をしようよ」っていう主張は、本書全体を通して、ある。世代間、未婚・既婚、子供のいるいない、出産後仕事を辞めたか・続けているか、さらには復職者同士でさえ、あの人は親と同居だからとか、シッターまで雇ってるとか、旦那さんがどうだとか・・・そういう対立構造、意味ないよね、と。

■高学歴で大企業の総合職、バリキャリ女性15人だけにインタビュー対象を限定していることについて
・著者自身がそうだから、自分の友人やその友人などをインタビュイーにしたようである。彼女たちの発言の引用を見てもかなりくだけた口調なので、いろんな発言を引き出せたであろうことは伺える。
・それはそれで強みでもあるが、同じ手法で別のグループの人たちを対象にこの研究をするのは難しそうだなあと思った。たとえば「絶対に家事をしない夫たち」の気持ちとかすごく聞き出したいのだけど、この著者には語ってくれなさそう(笑)。
・また、そんなバリキャリ女性は世の中の少数派だという批判に対しては、「そういう対立構造(を煽る姿勢)から脱したい」という話と、「(エリート意識と言われるかもしれないけど)バリキャリが活躍してこそ女性全体、ひいては社会全体の利益にもつながる変革を起こせるのだという理念」で回答。
・傍目からは恵まれているように見えても、みんなそれぞれの事情を抱えて頑張ってる、こうやって生活してる、そういうことをつぶさに伝え合えたら知り合えたら、もっとわかりあえるんじゃないのか?ということでまずは入り口として、この人数のインタビューなのであろう。
・私自身本書の定義で言うと「バリキャリ」なので、同じ穴のムジナですが、はたしてどこまで多様な層に著者の思いは届くだろうか。

■「ケア責任を負う就労者」という概念
・そもそもこうした就労条件のばらつきやなんかの話って「女性」の問題にされがちだけど、実は女性に限らない。育児や介護などのことを「ケア責任」という言葉で表現するらしいのだが、これまで慣習としてケア責任を負うのは女性とされてきたというだけのことで、今後企業は「女性を」ではなく「ケア責任を負う就労者を」どう活用するかを考えなければいけないよという指摘。ちょっとずれるがLGBT的な意味でも。

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2017年05月04日

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分析対象のサンプル数が少ないので定量的には説得力がなく、筆者の「書きたいこと」が色濃く出ているので嫌いな人もいるかもしれないけど、
こういう「日本社会における女性の働きにくさ」を実際に経験して、具体的に声をあげることは大事だと思う。

現代に働く女性の一人として、制度はどんどん新しいものができているのに、依然として変わらない男性優位社会に漠然と不安を感じていたので、そこをビシッと指摘してくれていたところがよかったな〜

こういう本に対して「フェミニストが!」とか「女は生意気」と言われることがあれば、日本は本当に終わってると思う。
自分だけがよければいい、既得権益を守りたい、なんて考えはモテないよ。
漠然と将来に不安がある時代だからこそ、共感力というか、寄り添える力が必要なんじゃないかな〜

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2017年04月09日

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産休・育休等の制度が徐々に整備されてきているが、仕事を辞める女性、意欲が低下したようにとらえられる女性がいる。まだまだ課題はたくさんある。

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2017年02月05日

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なんでバリキャリ女性ほど出産を機に辞めてしまうのか、その辺の理由、背景が分かりやすい。
確かに、男性にも読んでほしい本。

自分が出産を控える立場になって感じることだが、復帰してバリキャリを続けるか、それなりに妥協して働くか、会社を変革してさせるようなパイオニア的なスーパーな女性を目指すか、戻る場所があることに感謝して淡々と与えられた業務をこなす日々を送るか、など、どんな立ち位置とかスタンスで行くべきか、将来の自分を想像しながらもまだまだ他人事として考えてしまう。

実際に、育休から復帰して、両立してみてはじめて見えてくるものもあるんでしょうね。

色々考えさせられた。

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2016年05月20日

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やる気はあるのに、思うように働けない女性たちがいる。両立が出来ないのではない。周りがやりがいを奪っていまっているのだ。もちろん子供ができて優先順位が変わる人もいる。それでも、やる気ある女性が不必要な配慮をされることなく、働き続けることのできる社会であってほしい。
論文としての有意性はともかく、こんな女性たちがいるんだという、生身の声が世に出ることに意味があるんだと思う。あとがきに著者の思いが詰まっていてじんとくる。

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2016年01月01日

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論点は分かりやすかった。
ただ、本書にもある通り、サンプリング事例がある程度偏っており、まずはここから、ということなんだろう、と思う。

比較的恵まれている層でこのレベル、と考えると実態はもっとひどいんだろうなあ、と思う。
本書の読み方にもよるのだろうけど、もっと残業のない社会(夫も育児しやすい環境)が大切なんだろうな、と感じた。それが難しいから、なんですが。。

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2015年08月24日

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ネタバレ

彼らよりちょっと上で、降りてしまった身としては大変実感があるのとそれでもやはり私たちの時とは違うのだとの感慨と。女であることのめんどくささは変わらないねえ。

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2015年06月17日

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産休・育休や育児支援の制度が整った2000年代に総合職として入社し、就業継続の意欲を持って働いて、その後出産した女性に焦点を当てている。彼女らを「育休世代」として、なぜ彼女らでさえ、出産後に仕事を辞めてしまったり、仕事を継続していても意欲が低下したように見えるようになるのかについて分析している。分析は、15人の「育休世代」の女性に詳細にインタビューを行うという質的調査に基づいている。
本書を読んで感じたのは、まず、職場環境の重要性である。制度の有無よりも、職場として、ロールモデルとなる先輩がおり、育児をする女性を支える雰囲気が醸成されているかどうかが大切であるということだ。ただ、出産した女性に対する配慮が過剰であっても、やりがいの剥奪となり、女性の意欲の低下につながるということが指摘されており、そのバランスが難しいと感じた。出産後の女性に、育児への配慮をしつつ、出産前と同じようなやりがいのある仕事をいかに任せるかが重要だと思う。
そして、女性であることを意識せず、男並みの「マッチョ志向」を持っていた女性ほど、「女ゆえ」に退職する傾向があるというパラドックスの指摘が興味深かった。男に合わせる「男女平等」(「逆転したジェンダーの社会化」)の問題がよくわかった。女性に子育てなどのケア責任が集中している現状を変えないことには、気持ちだけ男女平等でもついていけないということだと思う。男性の無定量・無制限な働き方も含めて変えていかないといけないと感じた。そのために、著者の指摘する、男性は「育休」よりも定時退社すべきということには共感した。
本書は、これまでの女性論があまり注目してこなかった高学歴・バリキャリの女性に焦点を当てたところに特色があり、そういう女性ですら、就業継続が困難となってしまう社会の構造をよく解明していると思う。ただ、質的調査とはいっても、15名のサンプルでどこまで一般化できるのかについては、少し疑問をもった。

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2015年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ジェンダーについて自分がどのように捉えているのか、本文中に登場する15人と比較する中で、第三者的に捉えることができたように思う。
仕事と育児とのバランスに関する自分なりの納得感の得方、落としどころを見つける上で参考になると感じた。
今回扱われているのは0-2歳子育て中の女性たちだが、その後子どもの年齢が上がって行くにつれて別の葛藤が生じるように思われ、そちらについても興味深い。

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2021年10月21日

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女性活躍を一概にいっても子育て世代と独身で
全然違うという当たり前だけど男性が考える女性活躍
の甘さが分かった。

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2019年11月11日

Posted by ブクログ

会社の本棚にあった本。
女子的に色々考えるお年頃になってきたので(もう遅いけど)、先人方はどんなジレンマを抱えているのかと興味本位で読んでみた。

15人の女性へのインタビューからジレンマの要因を掘り起こし、それを社会への問題提起としてまとめている。
わかりやすいし、当事者の言葉はとても現実的。

なんだけど、結局は社会制度・配偶者の理解・地域社会の連携がやはり大きな要因。自明なことを自明だと表現するのは重要だと思う。

思うけれども、、、、せっかくインタビューという定性的手法を使っているのだから、そこで苦しんだことをどう解決してきたという所に焦点を当てて欲しかったなぁ。。。というのが個人としての感想。

まぁこの本は私が手に取ったところで意味がなくて、そういう”女性が輝くー”とか言っているお偉いさんとか、”ダイバーシティがー”とか言っているお偉いさんとか、職場の管理職とかが読んで初めて意味があると思うので、そういう人にぜひ読んでほしい。

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2019年04月07日

Posted by ブクログ

制度が整った以降の総合職で、出産した15人の環境やライフヒストリーと選択結果を分析。男並み平等教育のままの意識で就職し、適応戦略を取り損ね、結果退職に至る状況がある。企業に残りやすいのはジェンダー秩序に従う・利用する方。

頑張る、能力の高い女性ほど退職しがち、という構造があるのがわかりました。社会における能力の浪費、その余裕がなくなってきているのが、改善へのプレッシャーでしょうか。

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2018年04月09日

Posted by ブクログ

バリキャリには程遠いけれど、子育てと仕事の両立を目指すうえで
共感できる部分は多くあるのではと感じた。
完璧主義を捨てることが大事なのかもしれない。
15人のモデルケースしかなかったので、もう少し統計的にみてみたい。

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2016年03月19日

Posted by ブクログ

サンプリングが高学歴に偏っているが、それはそれで傾向が見えて良かったのかも。
著者に近い属性に関心があったからかもしれないが…
ぜひ他の属性の育休世代の女性もサンプリングしてまとめてほしい。

普遍的ではないにしろ、一つの傾向が書かれていると捉えました。

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2016年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私は、今まで男女を問うことなく、人に社会にみんな努力して、働いて幸せな人生を!という教育を受けてきて、自分自身もそれなりに応えながら生きてきた。自分自身も家事や育児は仕事と同じように夫婦も一つのcompanyとして分担していくものとばかり思っていた。

が!社内の女性向けヒアリングで初めて「女性の働き方」について壁を感じた(子供ができて働きにくくなり、やめていく人がいる現実などを知らされた)。
そんなときに仲の良い人に薦められた一冊。

なぜ、「育休」があるのに女性活用は進まないのか。
この本では、特にキャリアウーマンについての考察がされていた。
キャリアウーマンは自身の周りも年収の高いバリキャリの男性が多く、そういう人と結婚するため、夫が家庭の時間をさけず、自分が仕事を続ける事が困難になる現実がよく実感できる。自分自身もそういう環境にいたから。
自分の望んでいる働き方ができないというストレス、問題に強く興味を持ち、読み進めた。

「男なみ発想」の女性が「女ゆえ」に退職するパラドクス:ジェンダーの社会化過程で意欲の冷却を経験しなかった女性は、男女平等に見える教育課程で男性中心主義的な競争への意欲を掻き立てられることで、継続するたけの環境や資源を積極的に選択できず」、退職を迫られる

納得。特に心に残ったところを抜粋。

・逆転したジェンダーの社会化:男並みの発想を持つ女性がいいというイメージを私たちは持たされている。女性らしさを切り捨てることで、男性が圧倒的に多い社会での競争や「女性らしい女性」が損をする社会を生き延びようとしてきた。
例えば、正直一般職はいったい何が面白いのだろうと思うとか。気がついたらそういった意識の刷り込みがされている。
・時代の産物:何より「やりがい」を重視して仕事を選んで働いている。子育てのために、急に自分にとって「やりがい」のない仕事を割り当てられるものなら、一体何のために働いているのかわからなくなる。
・男女平等の幻想:冒頭にも書いたが今まで男女平等としか感じたとこがなかった。働きだして急に女性だけが育休をとることになるようになっている社会をおかしいと感じている。
・男に合わせる男女平等:結局社会は「男なみ」に働ける女性しか求めてない。そういった男女平等の形になっている。
・教育に埋め込まれた「男なみ」:女性が今までおってきた家庭労働は無償であったり低賃金であったりして、男性が圧倒的多数の企業社会で正社員として働くことの方が収入も高く、あらゆる保障も受けられる。そのため、教育課程では、第一に学業達成や社会的地位の達成、就労を継続することに価値をおき、そのから「降りる」ことを問題視している。結局「男」「男なみ」を求められているのだ。

企業に残る「非男なみ女性」と構造強化の構造:本書とはずれるが、女性自身の意識も変わらなければ女性同士で対立している。今、不都合をこうむっているのは「正社員として働きたい女性」。ならば会社としては、生産人口が減りつつある現代社会で、腰掛けとしての要員よりも正社員が、そして例え女性であってもほしいはずだ。そういった女性たちが衝突なくキャリアを継続しやすくするための選択肢を増やさなければならない。

夫婦関係を浸食する夫の「男なみ」:仕事のできる女性はさらに仕事ができる男性に惹かれる。そのため結婚して、出産となると、理解力があるため、自分自身よりも夫を応援してしまう。


自分の持論としては、やはり日本人は働き過ぎなのだと思う。それは、日本が資産がない国で、労働力でカバーしてきたから。
今こそアイディアを使い、男女問わず労働時間を減らして高付加価値労働で収入を得る社会に転換しなければならないのかな。
生産人口が減り、女性の労働力が必要となるならば。
でも結局無理矢理の転換は難しく、女性の人数が就労人口の中で圧倒的多数になってきたときに実現をするのだと思う。

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2015年04月29日

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