あらすじ
素性のわからない謎の美少女モデル・雛世。その正体は、実は17歳の内気な男の子。引きこもりのちひろは、デザイナーの兄の頼みで「雛世」を続けている。外に出るのは「雛世」のときくらい…。そんなある日、人気モデルの飛渡颯にうっかり秘密を知られてしまう。初めは「口止め料」としてキスを仕掛けてきた颯に戸惑ったちひろだけれど、彼の優しさに触れるうち、いつしか惹かれていき――!?
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Posted by ブクログ
【※BL注意】
美少女が表紙なので、一瞬、私はBLを買ったはずなのに、買った本を間違えたのか!? って思うレベルですが、実は彼女はきちんと男の子です。
男であることを隠し、素性のわからない謎の美少女モデルである雛世が表紙である人物の設定。
けれど、実は雛世は17歳の内気な男の子であるちひろがモデルとして演じているに過ぎない。
ちひろの兄は、デザイナーで、当初、モデルの宛てもなくこじんまりと仕事をしていた時に、ちひろが頼まれてモデルを始めたままずっと、17歳になるまで「雛世」としてそのブランドの看板となり続けていたのだ。
高校も行かず、ひきこもりとなってしまったちひろにとっては、外に出るのは雛世の時だけ、後は自宅で兄のブランドであるWebページの管理をするだけだった。
そんなある日、兄がデザインした洋服が映画に使われることとなり、雛世自身も映画に出ることとなってしまう。
成長していく自分と、雛世になることに限界を感じ始めていたちひろは猛反対するが、既に決定してしまったことだと、兄に無理やり説き伏せられ、渋々ちひろは雛世として撮影されることに同意する。
そんな中、相手役の飛渡颯にうっかり雛世が実は男であるちひろであることがバレてしまう。
颯は「口止め料」としてちひろの唇を奪ったものの、雛世としてではなく、ちひろの話をきちんと聞いてくれ、危ない時には一番に駆けつけて守ってくれる。
そんな優しさにちひろは次第に颯に惹かれていくが――。
という話でした。
まあ要するに、女装をさせられてきた美少年が、自分にはそれしか価値がないのか、と思っていたところに、本当の自分を愛してくれる人を見つけて恋に落ちました! というまあBLにはよくある王道パターンですね。
でも、雛世の女装がどちらかというとゴシック系の女装で、元ゴスロリ娘の私としては、挿絵も十分にステキなんですが、挿絵になってない部分も妄想だけで十二分にご馳走様です! という感じです。
いやあ、雛世いいよね。
それと、素のちひろの拗ねた感じとかがかわいくて、受けの女装がご馳走様です! で、ゴスロリ大好き! という人は是非、読んだらそれだけで幸せになれると思います。どうして、雛世の服には全部挿絵がついてないのか……と床を叩きたくなるぐらいには。
それから、颯の王子様っぷりも、大事なポイントですかね。なかなかここまでの王子様も、近年のBLではなかなかいないです。
あのきらびやかな王子様然とした王子様ではなく、さりげなく手を伸ばしてくれる感じ……って、王子様じゃなくて騎士ですね。騎士!!
もう、かゆいところに手が届く感満載で素晴らしいです。
受けのゴスロリ女装がお好きな方は、好きな世界観だと思います。オススメです!
設定に違和感
この作者さんがもしも本当にゴシック&ロリィタがお好きなのであれば(まあ、好きじゃなくても設定として使用しようと思えば調べるはずだから、その時点で気付きそうなものだが)、その流行の走りがV系にある事、その中でも女形の方が着ている事は知っていそうなもの。
実際にレジェンド的な方(男性)がブランド立ち上げて、ご自分でモデルもなさっています。
つまり、ゴスロリファッション(ロリィタブランドは除きますが)の世界では、男性が女性服のモデルをする事に抵抗感はないんですよ、本来。
なので、この作品の本幹である《女性だと偽っている》という部分が既に「何故?初めから女装モデルだと説明しておいた方が、この業界では人気が出るのに」と、元エレガントゴシック愛好家であった私は首を傾げました。
元々、ゴスロリファッションを愛好する方は、耽美や退廃的、倒錯的なものに憧れを抱く方が多いからです。
あと、私はこのお兄さん好きになれませんね。
結局エゴの塊で、ダブスタ、矛盾だらけ。
「言ってる事、支離滅裂だぞ?大丈夫か?」と頭が痛くなりました。雛世が大事なら、絶対に専属モデル業以外させてはいけなかったし、こんな事になったのは全部この兄貴のせいじゃん。それを責任転嫁。ただのクズ男にしか見えないのよ。
主人公であるちひろ(雛世)は可愛いんですけどね。一人称が自分の名前系男子(笑)。女の子ではたまにいますけど、男でそれをやるとは作者さんあざとい……。それ一つで、ちひろの無垢さがよく表現されています。
ちひろは対人恐怖症とかではなく、単に人がたくさんいる場所が苦手だという事らしいので(でも友達は欲しかったっぽい?)、颯に絆されるのはまあ納得できました。颯は初めから雛世が好きだったようなので、展開が早いのも個人的に読んでいて楽なので良かった。
欲を言えば、兄弟の異父弟だか妹だか(性別は書かれていなかったので)との絡みとかも見てみたかったなぁ、と。外国にいるので難しいかもしれないけど。