【感想・ネタバレ】花冠の志士 小説久坂玄瑞のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

久坂玄瑞って、怖いと思っていた。
なんであそこまで狂信的に攘夷を叫ぶのか。
その、イっちゃった感が、すごく怖い。

15歳の時、母を亡くした。
そして、20歳年上の兄も、その年に亡くした。
黒船来航に浮足立ったその時代、藩は久坂玄瑞の兄、玄機に海防策の立案を命じた。
病床にいた玄機は、病を押して海防検索の執筆に取りかかり、徹夜すること数日、筆を握ったまま絶命したのだった。
気落ちした父は、そのたった一週間後にあっけなく亡くなった。

玄瑞が家族を黒船に殺されたと、生涯思い続けたかどうかはわからないが、徹底した攘夷思想は、そこから生まれたものなのかもしれない。

そして、読書のシンクロ、こちらにもありました。
九州を遊歴の旅に出た折、博多湾で元寇の古戦場を訪ねる玄瑞。
“米使ハリスなどは、北条時宗の故事にならって斬ってしまえ”

家族を喪った15歳から、たった10年しか生きなかった玄瑞。
異国に対する憎悪をぎゅっと抱え込んで生きてきたのだろう。

さて、久坂玄瑞が主人公のこの作品だが、吉田松陰が出てくると主人公といえども霞んでしまう。
それほど圧倒的な存在感なのである。

けれど、吉田松陰の残念なところは、清濁を併せ呑むことがなかったこと。
それができていれば、もう少し長く生きることができただろうし、攘夷に逸る松下村塾の塾生たちを落ち着かせることもできて、もっと穏やかに時代が変わったのではないかと思うのだけど。
松陰が謹慎したり牢に入ったりして、自由に世の中を見ることができなかった焦りが、彼らに火をつけたともいえるし。

松陰亡き後の長州藩士たちは、雪崩を打つように急進的尊王攘夷へと進んでいく。
玄瑞は、肝心の孝明天皇の攘夷発言はただの異国嫌いなだけで、実際は幕府を頼りにしているし、攘夷なんて思ってないってことに気づくが、もう流れを止めることはできない。

目的のためなら手段を選ばない長州のやり口は嫌いなんだけど、15歳から25歳までの玄瑞の生きざまを読んで、なんだか切なくなった。
曇りのない目で世の中を見ることができたなら、彼はどんな人生を送ったのだろう。
やっぱり攘夷を叫んだだろうか。

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2018年03月08日

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