【感想・ネタバレ】鬼切丸伝 (8)のレビュー

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Posted by ブクログ

九月に入りはしたが、暑さはまだ、何気に厳しく、夜になっても汗ばむ
そんな夜に読みたくなる漫画は、ホラーもの・・・私だけかもしれないが
まぁ、それはさておき、初秋の夜に涼しくなりたいのなら、『死人の声をきくがよい』に劣らぬほど、この『鬼切丸伝』もお勧めだ
怖さも大事だが、絵の上手さも重視したい漫画読みは、『死人の声をきくがよい』よりも、コッチの方が合っているかも。いや、うぐいす、じゃなくて、ひよどり先生の画力が低い、と言っている訳じゃない
味がある、そう表現すべきなのが、ひよどり祥子先生の絵で、楠先生の方は「美麗」だ・・・あかん、フォローになってない
ま、まぁ、それは脇に置くとして、この(8)もゾクッとさせられ、同時に、人らしさとは何か、鬼とはどんな存在か、と考えさせられるストーリーだった
鬼は人がいなければ生じない存在だ
様々な感情、経験から鬼と変じる人と関わり合いを持ち、確かにある「心」と「魂」を揺らされる事で、鬼切丸が人らしく、いや、鬼切丸としての個性を確立していく展開には、こちらの心も動かされると同時に、楠先生の才覚に脱帽させられる
怖さとグロさの質は落とさず、「人間」って軸をブラさずに漫画を描けるってのは、結構、凄い事なんじゃないだろうか
何か、この『鬼切丸伝』の良さが、他の漫画読みに伝わるか、微妙な不安が芽生える感想になっているな・・・・・・
まだまだ、私も修行が足りないようだ
どの回もグッと来るが、凄味を感じたのは、第三十五・三十六話「鬼理支丹」だ
キリシタンの弾圧は、日本史の血生臭い部分なので、鬼が生まれても、何ら不思議ではない
鬼がいるのならば、鬼切丸もそこにいる
その鬼切丸と、隠れキリシタンのシスターが出会い、彼女の信念が、鬼切丸に驚きを齎し、人間に対する意識を、また変化させていた
ラストの、一瞬にも満たない再会が、これまた、楠先生らしい
この台詞を引用に選んだのは、鬼切丸は、本当に変わり始めてるんだな、と感じられるものなので
斬る事しか出来なかった彼が、人との出逢いと別れで育んでいる、一握の優しさで、悲しい死に方を迎えてしまった少女が、我慢していた涙を溢れさせ、穏やかな成仏を促した
グッと来ないはずがない
「鬼ならば、鬼切丸で斬ってくれよう」
(いいや、違う・・・!! そうではない)
「なれば、お前が泣けばよい」
「わ、私は父と母に誉めてもらえる立派な最期を・・・」
「矜持など捨て、思いのままに泣いてもよいのだぞ・・・」
「ほ・・・本当は、死にたくなかった・・・側室にもなりたくなかった。まだ、父様と母様の娘でいたかった!! 辛かった! 恐かった! もっと、生きていたかった!!」(by鬼切丸、駒姫)

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2019年09月14日

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