あらすじ
老い衰えてゆくなかで老人は、そして介護者はその事実とどう向き合うのか。複雑な感情に彩られた高齢者ケアの実像を家庭や介護施設の具体事例で描き、老いを柔らかく支える社会制度を介護の場から展望する。
※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
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Posted by ブクログ
老いとケアをめぐって、ほぼどの頁にも鋭い切り込みが見られる。そこはきわめて政治的な場だったのだ。ミクロとマクロをつなぐ記述が見事。しかし、見事などと手放しで言ってられないほど、自分事であるのが老いとケアである。
また、本書の真価を理解するためには、社会学が切り開いてきた地平を知っておくことが必要であろう。それはジェンダーであり、家族であり、国家であり、組織であり、施設化である。
この本には答えはないかもしれないが、答えを出さねばならない切実な問いと、答えを出すための材料はふんだんにある。ヒントは自尊心を手なづけることに、あるのではないか。
・「できる私」の物差しこそが<老い衰えゆくこと>を過酷にする
・「『忘れたこと』を忘れた状態」であることは強く感受する
・忘却と記憶という情報処理装置で自己を保っている
・周りに先取りして、自分をバカにし、命がけで自らの存在を守る
・他者へのまなざしの敏感さ、他者からのまなざしの敏感さ
・そこで語る/語られる言葉が、介護者の現実の参照点となっていた
・罪の意識、嘘の意識、自己の燃え尽きという特徴的な態度
・相手の気持ちを考えてしまうが故の閉塞状況