【感想・ネタバレ】戦場の軍法会議 日本兵はなぜ処刑されたのかのレビュー

あらすじ

“堪忍してくれってことでやったんです”――
戦場の法務官、43年後の独白

罪を犯した兵士を裁くために設けられた旧日本軍の「軍法会議」。太平洋戦争末期、ここで大量の兵士が「不当」に処刑された。戦地で、何が起こっていたのか。これまで秘密のヴェールに包まれていたその実態が、元「法務官」が生前に残した証言テープ、新資料等から明らかになった。未公開資料と遺族・軍関係者への徹底取材から、軍法会議の詳細と法務官・遺族たちの戦後を描き出した力作。

■目次
第1章 資料発見の衝撃
第2章 二人の法務官
第3章 法務官・馬塲東作が見た戦場
第4章 終わらない遺族の苦しみ
第5章 法務官たちの戦後
解説 軍法会議にみる戦争と法

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

NHK取材班・北博昭『戦場の軍法会議 日本兵はなぜ処刑されたのか』NHK出版。海軍法務官から資料や日記を託された北博昭氏の協力で本書は、これまで殆ど明らかにされなかった戦場の軍法会議の実像を明らかにする。戦争末期、士気の低下と食糧不足は相次ぐ逃亡を招くが、いずれも極刑をもって見せしめとされた。

えば…。飢餓での戦線離脱は最大7年以下の懲役で死刑には当たらない。しかし手続きを変え、死刑が適用される(「奔敵未遂」)。また特攻の強要もたび重ねられたという。前線で兵隊の数が減ることは本来不利な筈なのに、軍法会議関係者はそれを「口減らし」ととらえた。

本書は法の正義が形骸化していた事実を明らかにする。無謀な作戦の責任を取らない軍と高級将校。その責任を末端の兵士に転化する法務官…。軍と司法の歪んだ癒着関係は、戦後日本の体質にも継承されている。戦後裁判官に転じた人間は多いという。

初めて公開された各種文書、そして関係者への丹念な聞き取り調査から、戦時下日本における陸海軍の軍法会議の欺瞞のメカニズムを明らかにする労作。戦争の根源的な矛盾を説得力を持って示す一冊といえよう。
※番組を見ていないのが残念。

0
2013年09月11日

「社会・政治」ランキング