あらすじ
日本はもとより、アメリカでさえ、中国のサイバー攻撃部隊の実態について知る人はほとんどおらず、公的なレポートや関連書籍もほとんどない状況だ。本書では20年近く、中国のハッカーたちと交流を深めてきた著者による、日本初の「中国ハッカー」の全容と歴史を解説する。現在のIT業界で活躍する元ハッカーたちのそれぞれの人物像に迫る。そして、かつて中国最大規模と言われた愛国反日サイト「中国鷹派連盟」の元リーダーへのロングインタビューも掲載。また公然情報から、政府系・軍のサイバー部隊や現役反日サイト管理人を追跡してきた著者による「合法ハッキング」事例を具体的に紹介。ほとんど知られていない、政府系サイバー部隊の実態や活動内容にもスポットをあてて、解説していく。
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Posted by ブクログ
1995年ぐらい~現在までの中国ハッカーの様子にフォーカスし、祖母が中国人と言う筆者・中国ハッカーウォッチャー視点で、その系譜をハッカー具体名を交えて語っています。日本ではあまりハッカーが注目された時代がない印象ですが、中国ではコンピュータ好きのハッキングが、ナショナリズムとくっついることが日本でも報道されています。そのせいもあって、一般に、中国ハッカーは政府に雇われた「赤の軍団」的印象が強いですが、筆者によれば、中国ハッカーも国が先にあったのではなく、自律的に現れたハッカーが、ナショナリズムに後押しされて力を増していく、という様子だったことを明らかにします。中国語でハッカーは発音が近い「黒客」と書くらしいのですが、ナショナリズム的ハッカーだから赤色を添えて「紅客」と言うのだそうです。
本書全般、筆者の中国ハッカー愛を感じます。前半分ぐらいまでの、ご自身の経験・観察からのストーリーやハッカーインタビューからの洞察は、とても示唆に富んでいると思いました。言うなれば、本書は中国ハッカー文化のケーススタディ(事例研究)として見ることができます。後半になると、中国共産党とセキュリティ界隈の人材が如何に繋がっているかについて、状況証拠から明らかにしようとしていて、いよいよ事例研究、トライアンギュレーション(社会学で言う多視点からの研究)って感じなのですが、そちらはちょっと説得力に欠けていて残念。ただ、ストーリーだけではなく、様々な証拠から真実を紡ぎだそうという姿勢は個人的にとても共感できました。よりトータルな視点からのハッカー像に迫っていただきたい。次回作に期待。