あらすじ
「私は、彼を殺します」嵯峨野の尼寺でそう記し、姿を消した女=ゆみ。京都で休暇中の、十津川警部が見かけた彼女の横顔は美しく、寂しかった。女の哀しい殺意と十津川のとぎ澄まされた勘が交わるとき、事件は静かに幕を開ける――。竹林で死んでいた、ゆみの姿。次第に明らかになってゆく、新興宗教団体の狂気と闇。貴船、清水、祇園祭。古都をあざやかに描く、旅情豊かな長編推理小説。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
西村京太郎は、京都ものをあまり書いていない。
盟友の山村美紗が京都物を得意とするから、縄張りを侵さないためだったのかもしれない。
京都 恋と裏切りの嵯峨野という標題を見て、山村美紗の書きかけの作品を完成させたのかなと思った。
山村美紗とは取り決めがあり、先に亡くなった方の作品を、残った方が完成させるとのこと。
西村京太郎が2作品を完成させて出しているらしい。
標題を見たときに、本書がその作品かと思った。
実際に中を読むと、十津川警部がでてくるので、西村京太郎の独自の作品であることがわかった。
十津川警部が、京都府警に対する対応から、西村京太郎の山村美紗に対する対応がわかって面白かった。
そうとう手を焼いたことが窺い知れる。
最後の十津川警部の
「ひと雨、欲しいな」という言葉は、
解説の香山二三郎も書いているが、西村京太郎のつぶやき
だということがわかる。
事件は宗教問題で、西村京太郎の宗教事件への厳しい姿勢も窺い知れる。
個人的な感想としては、婦人警官をおとりにするのはやめてほしいと思った。