あらすじ
文献重視の歴史観では捉えられなかったギリシア人の姿に、考古学的見地から迫る。古代ギリシアに生きた有名・無名の7人が問わず語りに紡ぎ出す、新しいギリシア古代史の世界。
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Posted by ブクログ
ソクラテスの時代の前300年•後100年の社会状況を、物語というより小説仕立てで、生き生きと描き出す。個人的には、ソクラテスの裁判を巡る政治的モヤモヤをやっとイメージできたので、第五章がお気に入りだが、どの章も筋立てといい時代考証的な内容といい、とても面白い。
Posted by ブクログ
一言でいって著者は天才ですね。
私のようにギリシア史にそう思い入れもない者をも夢中にさせてしまうくらい面白かったです。
7つの物語のうち・・
第2章の「民主政治をつくるために抜かれた剣」
ペプロスの少女の物語
第6章の「姦通事件」の二つの顔
エウフィレトスとその妻の物語
が特に面白かったです。
どちらも女性が語り手になっているからでしょうか。
何千年かの時とギリシアという遠い地・・
での出来事であっても人々の日々の暮らしと家族を思う気持ちは現代と同じように存在していたことが解りました。
まさに時空を超えたという感じでした。
とりわけ第6章は衝撃的でした。以前読んだ「古代ギリシアの女たち」桜井万里子 著 の中で・・姦通より強姦のほうが罪が軽いという全く女性の人格や感情を無視した法律に驚きとともに怒りさえ覚えましたが・・
そのことを裏付けるような話でした。
いかに女性の立場が低かったか思い知らされました。
でもそんな中にも淡い恋心があったり若者に好意を抱くという人間らしさが上手に描かれているのもよかったです。
また、著者の風景描写の素晴らしさ・・例えば・・
『後ろの山の端から太陽が昇ってくると、目の前の海がぐんぐん輝きをまし、深い紺色から晴れやかな碧に、そして光がこぼれるような青緑色へ。』
『爽やかな早朝のエーゲ海をわたる風も、なんともいえず香しい。』など
私は行ったこともない所ですがまるでそこに立っているように思えました。
それはそこで何年か暮らしたことがある人にしかできない表現だと思いました。
また前にも感じましたが歴史を語る人はすごいですね。
解説では想像部分と史実をちゃんと区分して、それでいて物語として面白く融合させて書いているところなど読者からの誤解がないようにしっかりと説明されていました。
トゥキュディスの言葉をわかりやすく・・
「人間が人間である限り、過去に起こった事件と同じような事件はまた起こるはずだ。それを考えれば、過去の事柄の叙述そのものは、おもしろくあっても私たちの役には立たない。しかし、私たちがそれに理由を添えるときに、歴史は有益なものとなる。私たちは過去の同じような状況を現在に移して考えることで、未来に起ころうとすることを予知するのであり、あるときには、それで危険を回避し、また別のときには、過去の出来事を想起することで勇気をもって苦難に立ち向かうことができるのだ。」
と述べていました。
ここまで読んだら人間が歴史を学ぶのは必須のような気がしてきました。
Posted by ブクログ
あたかも古代ギリシア人のナマの声を聞いているような錯覚を覚えてしまう7本の歴史小説の短編と、その分かりやすい解説がそれぞれに付いていて、とても読みやすく内容も充実している。「ユートピア史観を問い直す」という副題が何か難しそうな感じで、いきなり「記号としてのギリシア」で始まるのでここで敬遠してしまう人がいるかもしれないが、読んでみれば著者の主張は実に明快で分かりやすい。最初に簡単な古代ギリシアの歴史について、年表や地図などとともに簡単なイントロダクションもあって、初心者に親切な本。それよりもこの本の中核を成す7本の短編は、どれも小説家ではない著者が執筆したもので、本格的な短編小説とは呼べないかもしれないが、それなりに起承転結がまとまっており、その直後の「解説」で、どの部分が著者の創作部分でどの部分が文献に基づいているのか、なぜ著者はそのようなストーリー展開にしたのか、歴史学ではどのように議論されているか、といった専門家ならではの解説がある点が興味深いし、読者に考える余地を残してくれるし、ストーリーとともに簡単な歴史を覚えることができた。上記の『世界歴史の旅 ギリシア』とは対照的な本である。
個人的には「ナイルを遡ったギリシア人」、「『ぺプロスの少女』の物語」、「『姦通事件』の二つの顔」が特に面白かった。
Posted by ブクログ
(資料用)
ギリシャ神話以外のものが読みたくて購入。おもに一般市民の語り口調で書かれる文章は読みやすくて、生活の様子とかを想像(妄想)するのが楽しい。ちらっと出てくるパンアテナイア祭とかもっと知りたかった…!