あらすじ
2011年8月、在大阪・神戸アメリカ総領事館に着任したパトリック・リネハン総領事は
日本語、韓国語、フィンランド語などを自在に操る、とても知的な男性。
ただ、ほかの外交官たちとちょっと違っていたのは、彼には「夫」がいたことでした。
日本は同性婚を認めていないLGBT後進国。でもリネハン総領事の夫、エマーソン・カネグスケ氏は、
日本政府が外交官の同性婚のパートナーに対して、外交ビザを発給した初めてのケースとなりました。
2人は幼いころから周囲との「違い」を受け入れてもらうことが難しく、
もがき苦しみながらも、しかし勇気をもって自分らしい生活をつかみとってきました。
その2人が、これまでの人生と日本での体験について感動的な文章でつづります。
彼らの生き方は、彼らに接した人たちに勇気を与えます。
この本を読んだ人たちにも、その勇気はきっと届くに違いありません。
本書は、著者2人が英語とポルトガル語で書き下ろした原稿を、
LGBTの社会認知を応援する人々が参加して、日本語の読み物にまとめた完全なる日本オリジナルの書籍です。
LGBT問題に直面している方々はもちろん、LGBTに関心のない方、心理的な距離のある方にもぜひ読んで欲しいと思います。
誰もが持っている「違い」をみんなが素直に受け入れることができるようになれば、社会はもっと輝きに満ちたものになるでしょうから。
それが著者たちの心からの願いです。
【主な内容】
はじめに
第1部 パトリック・リネハン
序章 「私たち」
第1章 「私の歩んできた道」
第2章 「見える存在に」
第3章 「ゲイ・フレンドリーな日本へ」
第4章 「あなたにできること」
第5章 「どちらも夫」
第2部 エマーソン・カネグスケ
第1章 「2人の夫」
第2章 「パトリックとの出会い」
第3章 「カミングアウト」
第4章 「広い世界に」
第5章 「パトリックとの暮らし」
第3部 LGBTを理解するために
おわりに
巻末資料
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
アメリカには外交官のゲイもいると「LGBT初級講座」で読んだばかりでした。そうですか、あなた方がそうだったのですね、と、お噂はかねがね状態で読み始めました。
かつて同性愛者と知れれば失職する状態で、やむを得ず隠していた性的嗜好。
今ではそれを披歴し、歴史を動かす側に立った二人。二人で世界を変えると意気込んでいるわけではなく、多くの力の中の一部として、変える側に立つ気持ちがいい。
われわれ(日本人の大勢)が自分自身が歴史の担い手であるという事実を忘れがち(または忘れたふりをしがち)なので、怠りを戒められている気がします。
夫夫円満の秘訣はそのまま夫婦円満の秘訣でもあります。永遠の一日先まで愛しているとは日本人にはいいづらいセリフですが、愛情は口に出すと増幅するのでしょう。彼らの愛情表現を読むと「君は僕の空気だ」と思われているより、「君は僕の太陽だ」といわれる人生の方がいいに決まっていると思います。
Posted by ブクログ
このオッサンが、そのオッサンに一目ぼれした、という。
・・・・・どういうことなの?
男が男に恋する、というのは、少女マンガみたいな、少女が夢見るような、美少年どうしのキレイな愛の世界ではないんだよね。ああゆうのって、ホント、ウソっぽい、架空の世界だ。
現実的なのは、このオッサンたちのほうである。
Posted by ブクログ
大阪・神戸アメリカ総領事館総領事(2011-2014)のパトリックと、その夫エマーソンの夫夫の半生記。
生まれも育ちも年齢も違うふたりの愛と、ゲイライツが主題。
文化的背景や感覚が私とは違うから違和感があったり、ふたりともゲイだからゲイ以外には疎いような気がしたりするものの、穏やかな良書。
ふたりの仲良しっぷりがものすごい。情熱的。
すごいよ。「君は僕の太陽」「昨日より愛してる。明日はもっと愛してる」とか互いに言っちゃうんだぜ。毎日。
のろけやがって。なんなのこの人たち可愛すぎだ。
本書の前半はパトリック、後半はエマーソンが書いている。
パトリックは穏やかで忍耐強く、エマーソンは情熱的な性格だそうな。
文章からもそれがうかがえる。
エマーソンが率直なだけに、「自分に正直になりましょう」と繰り返し記すパトリックのほうが回りくどく感じる。
これは、急がば回れで目的を達しようとする外交官の習性なのか、20年早く生まれた分だけ多く受けた抑圧のせいなのか、たんに性格の違いなのか。
全部だろうななんて考えながら読んだ。
内容自体はセクマイ情報を見慣れている目には珍しくない。
普通の事実と普通の経験と普通の主張が書かれているだけだ。
だけどちゃんと届く。
「あなたが自由に生きれば、あなたを見た人も自由に生きる勇気を得る。それが自由な世界をつくる」「人生は一度しかない、傍観していてはいけない」
といった普遍ゆえによくあるセリフを薄っぺらくせずに届けるには、発言する人自身が言葉を裏切らない生き方をしなければならない。
この人たちは、それをしてる。
訳者は本職じゃないか、少なくともセクマイ系ではなさそう。
最初のLGBTの説明が正確じゃない。
Tを「トランスジェンダー=性同一性障害」と説明してあった。
日本語の性同一性障害はトランスセクシャル(体を生物学的な異性に変えたい人)の診断名。
トランスジェンダーは様々なレベルで性役割を越境する人達だからもっと概念が広い。
「夫婦や夫夫」と書くなら「婦婦」も入れようよとか、「男性同性愛者がセクマイの権利擁護運動を引っ張ってきたからLGBTの権利をまとめてゲイライツともいう」との説明とか、無邪気にゲイ中心すぎるのも気になる。
※LGBTに限らず、マイノリティの中のマイノリティ問題というのがある。少数者集団の中でもメインにいない人たちが不可視化される問題。黒人の中の女性、女性の中の障害者、障害者の中の性的少数者、性的少数者の中の少数民族、など。
ゲイが権利運動を牽引したとも言えるけれど、それ以外が無視されてきたとも言えるので、「ゲイのお陰」と言い切るような説明には違和感がある。
「夫夫(ふうふ)」に毎回毎回ルビがふってあるのも鬱陶しい。最初の一回とか、章の最初だけならわかるけど、わざわざ何度も書くと「普通ではない」というメッセージを発してしまう。
あと「おばあちゃんのケーキ」のレシピがわかりにくい。
ケーキひとつにバニラエッセンス小さじ2杯はいくらなんでもいれすぎではないか。
本当にこんなにいれるのかな。