【感想・ネタバレ】冤罪と裁判のレビュー

あらすじ

日本の刑事裁判は、じつは世の中の水準からみると、いろいろと遅れたところがある。起訴された事件の有罪率は99.9パーセントと驚くほど高いが、有罪とされた元被告人のなかに無実の人々がかなり含まれているのではないか、というのが私の心の奥底からの関心事である――〈「はじめに」より〉(講談社現代新書)

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Posted by ブクログ

現在の日本の刑事裁判の実態がよく理解できた。自分の知らないところで無実の人が罪に問われている。そういった冤罪を生み出す日本の法律を、早急に見直す必要があるのではないかと多くの冤罪事件事例を通して感じた。

裁判員制度は比較的新しい裁判方式であり、自分が近い将来関わるかもしれない。裁判員は、本書で挙げられた裁判員制度の問題点や改善点を事前に知識として身につけておかないと、被告人を冤罪へと導いてしまう恐れがあると実感した。裁判員制度以外の日本の法律の問題点についてもさらに深堀して学習してみたいと感じた。

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2021年01月31日

Posted by ブクログ

間違いなくこの一冊が俺の理転に大きく一役買っている。当たり前のようにあるもの、警察や裁判。それを疑うことは普通はない。しかしながら、絶対的なものほど疑わなくてはいけない。自分たちの生活に絶対的にある警察や裁判を疑う一つの機会になってくれる本。

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2014年01月23日

Posted by ブクログ

今村核弁護士(1962~2022年)は、日本の刑事弁護界で「冤罪弁護士」と呼ばれた伝説的弁護士。東大法学部卒業後、1992年に弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。刑事弁護を専門とし、証拠の矛盾を突き崩す徹底した姿勢により、有罪率99.9%とされる日本の刑事裁判において、14件の無罪判決を勝ち取るという実績を残した。2016年と2018年に放映されたNHKドキュメンタリー「ブレイブ 勇敢なる者」でも広く注目された。
本書は、前半で、過去20年ほどの冤罪事件の典型事例を、主な虚偽の証拠ごとに分析し、後半で、冤罪を生む制度的背景の考察と、今後冤罪を減らすための具体的な提案(裁判員裁判制度に関する提案を含む)をまとめたもので、2012年に出版された。
私はノンフィクション作品が好きで、日本の刑事事件を扱ったものについても、清水潔『殺人犯はそこにいる』、福田ますみ『でっちあげ』等、これまでにいくつか読んできた。また、上記のNHKドキュメンタリーの取材内容を書籍化した『雪ぐ人』(2018年出版、2021年文庫化)も暫く前に読み、今村弁護士が書いた本をぜひ読みたいと思っていた。
読後の印象としては、まずとにかく、(『雪ぐ人』のときに感じたのと同様)底知れぬ恐ろしさである。
取り上げられた多数の事例を見ると、虚偽自白、目撃者の証言、偽証、物証と科学鑑定、情況証拠等、あらゆるところに冤罪のリスクが潜んでいることがわかるのだが、最も質が悪いのは、繰り返し書かれている、「代用監獄制度」と呼ばれる逮捕・長期拘留(23日間)による虚偽自白・自白調書作成のプロセスである。
そして、こうした冤罪リスクの多くの背景が、警察の「捜査のあり方」と、裁判所の「審理のあり方」と、それらと実質一体化している検察という、日本の刑事司法制度の運用そのものにあることも、詳しく書かれている。(また、裁判所についての問題は、瀬木比呂志『ニッポンの裁判』に詳しかった)
一方で、裁判員裁判制度が導入され、国民の刑事裁判に対する関心が高まった2009年頃から、死刑・無期懲役などの大事件のいくつかが再審無罪となったり、再審開始決定が出たりして(足利事件は無罪確定。福井女子中学生殺人事件は2012年時点で再審開始決定が出ており、その後無罪確定。袴田事件は2012年時点で再審開始決定に至る可能性が高く、その後無罪確定。)、専門家の間で「事実認定適正化の第二の波」などと呼ばれていることも書かれているが、それらはおそらく冤罪が明らかになったほんの一部のはずだ。
私は、若い頃、仮に自分が弁護士か検察官になるなら、間違いなく検察官になると考えていたが、年齢を重ねるに連れて、犯人を罰することは言うまでもなく大事なことだが、無実の人を罰しないことはもっと大事なことだと考えるようになっている。袴田巌さんのような人を知ると、「疑わしきは被告人の利益に」、「たとえ10人の犯人を逃がすとも、1人の無辜を処罰するなかれ」は、絶対に守られなければならない刑事裁判の鉄則だと、強く思うのだ。
では、冤罪をなくす第一歩として、どうしたらいいのか。。。これについては、著者が詳しく書いているが、一言でいえば、「捜査のあり方」を見直すこと、即ち、捜査の全過程の「記録化」と「証拠開示」を行うことである。こんな簡単で、当たり前のことがなぜできないのか? 警察や検察が反対するのであれば、その理由が何なのか? 明確に説明してもらいたいものである。そして、私がさらに提案したいことは、冤罪事件を送検した警察、起訴した検察は、組織としては当然のことながら、個人レベルでも、一定の責任を負うルールを作ることである。袴田事件では、袴田さんの衣類とされるものを味噌樽に隠した人間が必ずどこかにいるのに、その人間も属する組織も何の責任を取らないのは、どうしても許せないのだ。
加えて思ったことだが、万が一自分が何かの事件に巻き込まれて、被疑者(あるいは目撃者でも)とされるようなことがあった場合は、この本を読み直して、冷静に対応したいものである。相手(警察・検察・裁判所)の手の内を知らずして、対等に戦うことはできないのだから。そういう意味で、一般市民必読の一冊とさえ言えるのかもしれない。
(2025年11月了)

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2025年11月26日

Posted by ブクログ

非常に現代の司法の問題について詳しく、そしてわかりやすく書かれていて、とても学びになったとともに考えさせられた。私の夢はこの世の中から冤罪を無くし、全ての人が公平に、そして幸せに暮らすことができる社会をつくることです。今の司法制度に多くの問題があることを本書を通して知りました。私はその司法制度を変えるとともにその日りな状況をも凌駕する世界最高の弁護士になりたいと思います。

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2025年02月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

冤罪の起こる原因、構図がわかる。裁判員制度は冤罪防止の一助となっているようだが、問題点が残ることを指摘。
普段あまり関心を持っていないことだが、テレビで「冤罪弁護士」を見て興味を持って購入。紙幅が多いわけではないが内容の濃い一冊だ。

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2017年03月11日

Posted by ブクログ

裁判員裁判が始まって3年だが,個人的には裁判員裁判ができて良かったと思っている(変えるべき部分はあるけれど)。本書は,これまでの刑事裁判でどのように冤罪が作られてきたか,様々な事例を挙げながら説明している。
捜査機関の不正も問題であるが,それを見抜けない裁判官,有罪推定でしか事実認定できない裁判官の存在の方が大きい問題のように思える。

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2012年12月18日

Posted by ブクログ

冤罪、ある日突然、警察、検察官僚国家権力によりなにげない日常生活をメチャクチャにされてしまう。

こんな理不尽なことがなぜ起きてしまうのか。

弁護士登録をしてから20年間、冤罪事件を担当してきた筆者の力作である。

日本の刑事裁判の構造的なあり方、そして、結局、検察、検察と同業者としての裁判官の人事制度、同じ穴の狢が起こしてしまう「冤罪」。

裁判員制度は、裁判官に負担をかけられないというようなことでは、ますます、冤罪を拡大再生産させてしまうこととなってしまう。

以上のような歪みを是正すべく、最後に提言が述べられている。

より多くに市民に読んでもらいたい力作だ。

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2012年08月17日

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ネタバレ

「疑わしきは被告人の利益に」なっているのか、本当に。

冤罪が大変な問題であることはわかっているのと同時に、しかし、被告人=有罪という間違った印象はなかなか頭から拭い去れない。裁判官が正義を守るためにいると思っていても、それが職業である以上、昇進や職場の人間関係、権力闘争からは逃れられないものなのだと諦める気持ちもある。裁判に参加するならば間違いのないように議論を尽くしたいとは思うが、拘束される時間を鬱陶しいとも感じるし、罰を与える自分に酔ってしまわないかという恐れも感じる。

それでも、やはり正義は守られてほしい。確かな証拠を元に、検挙するための追求ではなく、事実を明らかにするために、警察も検察も裁判官も全力を尽くしてほしい。悪を見逃すことは、正義を求める人にとって、もっとも嫌なことだろうし、許せないことだと思う。でも、罪のない人を有罪にしてしまうことを、それ以上に恐れ、自分に禁じてほしい。

印象はあてにならない。他のところでも聞いたことがあるが、証言はあてにならない。人の記憶は曖昧なもの。いつどんな場所で証言を求められようとも、謙虚でいたい。罰を与えられる立場にいるかぎり、忘れないようにしたい。

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2021年01月10日

Posted by ブクログ

読んでいて楽しい本ではない。我が国の司法制度の元で、冤罪事件の当事者にならないためにできることは、ただ祈るだけかもしれない。弁護士である筆者が経験し、また、見聞きし調べた事件の実例を挙げて、どのように冤罪事件が作り上げられ、無辜の市民が犯人に仕立てあげられ、罪を自白し証人が偽証するのかを分析している
正にいま行われているPC成りすまし事件においても、容疑者が求める取り調べの可視化は妨げられ、冤罪の被害者に自白を強要した警察官、検察官たちは罪に問われること無く自由に罪を重ねている。更に、裁判員裁判においても、公判前整理手続きというなのもとに、恣意的な証拠隠滅や誘導が行われている危険性があると指摘する。
自分が冤罪事件の当事者にならないためにできることは、ただ祈るだけかもしれない。

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2013年03月25日

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