あらすじ
ライラックの茂みの中で始まった、ヴィーとビリーの幼い恋。しかし幸福は不意に終りを告げ、1次大戦の暗い渦が時代を覆う。失意の日々、見上げる空には希望のありかをさししめすかのように、いつも飛行機が高く飛んでいた……。傑作長編の表題作ほか、世紀末ロンドンを舞台に錯綜する恋愛劇が進行する「ばらの花びん」、少年と青い瞳の少女の時を超える悲恋物語「マリーン」を収録。
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Posted by ブクログ
アイズナー賞漫画家の殿堂入りということで、久しぶりに萩尾望都氏の作品を読んでみた。『ゴールデンライラック』の他に『ばらの花びん』『マリーン』収録。
『ゴールデンライラック』子供時代の出会いから時代背景とともに成長する男女2人の物語。少女が大人になるにつれてきれいになっていくさまを「朝焼けの空みたい」とたとえたのはちょっと感動してしまった。今時の漫画にはない表現だよなー。しかしこの話でジェニファー・ロペスとベン・アフレックを思い出してしまった私は俗だな。
『ばらの花びん』え?そっち?思ってたのと違う結末でした。『マリーン』人魚姫っぽいと思っていましたが、期待を裏切りませんでした。
この世代の漫画家の作品は文学作品、それも純文学だなーと常々思っているが、やはりそう。文字で表現するか絵で表現するかの違いですね。
Posted by ブクログ
備忘録に書名が残っていなかったので未読? いや読んだ憶えがあるのにな、と訝しみながら読んだら、結果再読だった。
というか読んでいる最中に、視覚だからプルースト効果とは言わないんだろうが、前回ぐっときた要素が次々と波のように押し寄せてきた。
たぶん「ゴールデンライラック」の内容とその読み方が合致して、幸せな再読になった。
■ゴールデンライラック 150p
少年ビリーと少女ヴィーが青年から大人になるまで。
第一次世界大戦前後のイギリスを舞台にしているだけあって、つるべ撃ちのように話は展開し、時は流れ、いつの間にか取り返しがつかないと悲嘆にくれ、しかし生活は続き……皆川博子級の重厚と絶望と希望。
単純に飛行機だからとロベール・アンリコ監督「冒険者たち」、ヴィットリオ・デ・シーカ「ひまわり」(を思い出したというか)のような画質でイメージした。
というか古き良きカラーフィルム映画のように記憶していたのを、読みながら追っていった印象。
他の作品を出すことでしか感想を残せない自分が歯がゆいほど、好きだし大傑作。
ロバート・ネイサン「ジェニーの肖像」からの影響あり。
ちなみに新書版と文庫版のカバーイラストが対になっていて、どちらもいいんだなー。
■ばらの花びん 68p
この本3作のうちでは絵柄が違い、やはり一作だけ1985年。
少し呑気な展開、数組のカップルがあちゃこちゃするあたり、シェイクスピアの喜劇に似ている。
■マリーン 53p
ミステリアスな少女というキーポイントも、その真実もまた、「ジェニーの肖像」からの影響あり。
というかおそらく、原作者今里孝子=城章子が「ジェニーの肖像」から影響されてこの話(1977)を作り、この漫画に自ら触発される形で「ゴールデンライラック」(1978)を萩尾望都が展開した、という感じか。
少年の生活に現れる少女、少女の生活に現れる少年、と対にして憶えておきたい二作。
参考にしているサイトによれば、「光と花の中」「ヴィオリータ」「みずうみ」に続く輪廻と永遠の少女の系譜の集大成とか。
◇エッセイ―拝啓 萩尾望都さま:桑原知子(心理学者)