あらすじ
アベノミクスは今や国民に大きくアピールし、マーケットもそれに反応して円安・株高が続いている。しかし、ちょっと待ってほしい。注目を浴びている「大胆な」金融緩和という政策は、べつに奇手でも妙手でもない。過去、政府が苦しい時に何度もすがってきた手法である。政府は財政が苦しくなると、マネー創出という「打ち出の小槌」に手をかける。そのたびに経済は大混乱し、国民は痛い目にあう。古くは江戸時代の小判改鋳によるインフレ、西南戦争後の大インフレ、大正バブル、1974年の大インフレ、そして1980年代後半のバブル。海外では第1次大戦後のドイツのハイパーインフレなどなど。歴史をたどると、マネーというものがいかに誘惑に満ち、また恐ろしいものであるかがわかる。本書はこうした歴史を振り返ることで、アベノミクスの持つ構造的な危うさを指摘するとともに、期待先行で膨れつつある日本経済に警鐘を鳴らすものである。
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Posted by ブクログ
世の中は「アベノミクス」で好調に見える。2020年のオリンピックも東京招致が決まり、世の中は景気回復への期待に満ち満ちているようだ。
しかし、「経済」という視点から冷静に見るとまったく違った風景が見えてくると本書を読んで思った。
そう考えるには1980年代末から1990年のバブルの狂乱とその後のバブル崩壊を思い出すからである。
あの当時の世の中に氾濫していた「いけいけの空気」「止めどもない楽観の風潮」が、現在と重なるように思えるのは私だけだろうか。
では、その後の「崩落のような経済風景」もかつてのように繰り返されるのだろうか。
本書は「デフレは貨幣的現象かどうかは難しい問題である」と「黒田日銀」の「異次元の金融緩和」を否定的に見ている。
そして「またしてもバブル期と同様のことがおきようとしている」と喝破するが、本書の予測は果たして的中するのだろうか。
たしかに「問題は日本の潜在成長率が低いことだ」という本書の指摘は説得力がある。
「潜在成長率が低いままに、金融緩和で一時的な活況を見たとしても、それはいずれは崩落するバブルである」とする本書の指摘は、過去の経験に照らしても説得力はあるが、2020年に東京オリンピックを迎えようとする日本の現状は活況に満ちている。
本書は、「日本経済」を冷静に見ることができる良書であるとは思うが、同時にできれば本書の予測が的中しないことを願った。
本書は「経済書」でありながら、あたかも「パニック小説」を読んだ後のような読後感を持つ本である。