【感想・ネタバレ】サマーサイダーのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

倉田ミズ、三浦誉、恵悠の幼馴染3人組の、眩しくて痛くて切ない夏の記憶。通り過ぎてゆく思春期、蝉の生涯、夏、どれもが一瞬で弾けてしまうその様をサイダーに例えているのかもしれない、と思った。それでも最後まで恋心はなくならなくて、ぶどうの匂いの話、ミズはちゃんと覚えていて。三浦誉君が大好きになってしまいました。ナイフみたいに尖っていて、周りにぶつかるたび自分も傷ついていく。闇の中で彼がミズと触れ合うシーンは本当に官能的で美しくて、忘れられないシーンの1つ。蝉がまた鳴き始める頃になったら、きっと読み返すんだと思う。懸命に青春を生きた彼らの夏を、忘れないでいたい。

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2022年10月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まず一言、夏の空気の中で読めて良かった!小説に恋愛要素をあまり求めたことが無かったけど、気づいたら三浦とミズのもどかしい関係の先が知りたくてしょうがなくなっていた。夏の暑さとか気怠い感じとか、表現がすごく好きな感じだったなぁ。でも、アオハルは結局何者だったのだろうか…はっきり分からない辺りがますます怖い。母親は誰でも千比呂になり得るということに気づかされた時、母親とは何か考えさせられた。何より、単純そうに見える恵と、その恵の善意を辛いと感じている複雑な三浦の関係に、切なくなった。壁井さんの他の作品も読んでみたい!

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2014年08月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表紙と挿絵を市川春子が描いている、というだけで興味を持って読んだ本です。

表紙やタイトルからは全く読み取れませんが、虫がキーになる話ですので、虫が苦手な方は慎重に読んだ方がいいと思います。
主人公が悪夢にうなされるところや3人で車に乗って山に向かったところなどはけっこう気持ち悪く感じました。

作物を別の創作物に例えるのは良くないと思いつつも言ってしまうと、読み進めるにつれ乙一の「夏と花火とわたしの死体」のようだと感じました。
こちらはそこに仄かな恋愛要素とSF(?)の要素が混じっているのですが。
日常(田舎の子どもの暮らし)のリアルな描写と一連の蝉に関する非現実的な描写が調和しているとは思えませんでした。
主人公である倉田の様々なことに対する感度が非常に鈍感で、読んでてイライラしました。
佐野に対しても"普通は"おかしな言動をする人間には近づかないように思いますが、倉田は何度も二人きりで接触し、そのたびに危険な目に合っています。
もちろん、特に未成年に対し、成人が性的な目的で近づくのはあってはならないことだし、加害者が悪いのですが、そうなることが倉田には予見できたのでは?と思ってしまいます。
予想できることに対し、何の対策もせず自ら火に飛び込みに行く倉田の気持ちがさっぱりわかりません。
心身に危険が及ぶ可能性のあるものに、それらを犠牲にしてまで近づく行為を子ども特有の好奇心です、で理解するのは難しく、また、そうであったとしてもなぜ倉田が佐野に強く興味を持ったのか、の理由がほしいと思いました。

倉田は佐野の言動に動揺する態度を見せるものの、それを強く否定することはせず、あまりにも普通に接するため、異常である佐野の存在が正常であるように思えてしまいます。
倉田の態度によって現実と非現実の対比がうまくいっていなくて、蝉に関する一連のことがとってつけたような異物感を生んでいるように思いました。

登場人物3名の中で、わたしがいちばん苦手なのが倉田のようなタイプです。時点で恵。
恵は三浦もたびたび触れている通り、無神経で自己中心的な思考であるからなのですが、その分ストレートで裏表がないとも思います。
倉田の気に入らないところは、たとえば三浦に対して心配する素振りを見せ、恵や教師に隠していることを教えてほしいと言いますが、実際のところ心配しているわけではなく、単に好奇心や幼馴染の中で自分だけが仲間外れにされている疎外感を解消したいだけなんだろうな、というところです。
それを三浦が心配だから、と言い訳する、かつそれに自分さえ気づいていないところがいやらしいな~と思います。
人が言いたくないこと、隠しておきたいことを強引に知ろうとする気持ちもわかりません。
知られたくないと思っていることを知ろうとするなんて、他人の領域に土足で上がり込んで物を強奪していくようなものなのに、そこに気付けないのも鈍感で、恵とはまた別の意味で自己中心的だと思います。

三浦は好きな相手に病状を知られ、嫌われたり同情されたりしたくなかったのだと思いますが、倉田はそういうタイプではなく、むしろ相手が自分を頼ってくることを喜ぶタイプのように思います。
蝉の抜け殻を一緒に集めてくれた一件から何となく気にするようになっていて、そのころからなんとなく好きだったのだと思いますが、(三浦の病気のことを知りたがっていたのも、好きな人のことは何でも知りたいという気持ちもあったのかも)三浦が病気だとわかり、より一層わたしが支えてあげなくちゃ!と気持ちが盛り上がったんじゃないかと思います。
本人はそれを好意だと思っていますが、実際は支配欲とか庇護欲のようなたちの悪い気持ちのように感じて、倉田に対し嫌悪感を抱きました。
三浦はそのような目を向けられることが嫌なんだと思いますが、好きな相手からの一見好意に見えるものであれば嬉しく受け入れてしまい、気付いた時には色々な意味で倉田がいないと生きていけない状況になっているような気がします。
でもまだ高校生だし、大学生になったり社会人になったりする頃には佐野のことも千比呂のことも記憶から薄れ、まったく関係のない人と付き合っていたり、結婚したりしているかもしれないけど。
子どもの(未成年の)頃の体験や経験は尊いものだし、その人の人格や一生のベースになるようなこともあるでしょうが、大人になってから直面することはスケールも質も比べ物にならないので、お金も駆け引きも絡まなかった昔の思い出は途端に陳腐に思えてしまうでしょうから。

表題はサマーサイダーなのに、炭酸と思わしきものが出てきたのは冒頭の体育館のシーンだけであとは出てこず。
蝉の短い一生、人生の中であっという間に過ぎる学生時代、だんだんと失われていく三浦の視力、それぞれの一瞬を次々に泡が生まれてははじけて消えるサイダーに例えているのでしょうか。

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2020年08月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

夏の暑さがみせた、白く弾けて何も見えない夢。

とんだホラーだよ! 三浦のキャラクターが好み、とか思っていたら、超グロテスクでした。夏に読まなくてよかった。

なんてことない日常に潜むサスペンスかと思いきや、ファンタジー要素が入ってきて、そしてホラーです。でも着地点は日常の世界。本当は、世界のどこかにいるかもしれない、「人と違う」存在。三浦も恵も、挫折を抱えているところが魅力的で、どっちが本命なんだろうと、どきどきしながら読むこともできます。佐野先生の正体(まあ、確定はしていないけど)もどきどきします。読み出したら一気に読むしかない。この著者の作品は初めてだけど、すごくひっぱられました。

母の本能とか、生存本能とか、そういう理性を上回る利己的なところが本当は一番怖いのかも。

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2014年12月13日

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