あらすじ
喧噪にみちた都市、はげしい日光に照らされた泥のなかの村、虫と鳥と猿の声にざわめく森……亜熱帯特有の豊熟した熱と腐臭に包まれた東南アジアの国に、砲声と軍用機の爆音が響く。繰り返されるクーデター、爆弾テロ、拷問、ナパーム攻撃、銃撃戦。そのなかを漂い、現地の娘との性愛の汗にまみれながら、必至に試みる《見る》という行為――。ベトナムをはじめとする数多の取材体験を踏まえ、架空分裂国の戦争を通して人間と自分への絶望、現代の虚無と混沌を鮮烈に描破する。作家・開高健が30歳代に到達した地平と新たな出発を示し、圧倒的な迫力と重さをそなえた傑作長編。
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Posted by ブクログ
それにしてもなぜアゴネシアという架空の国にプロットを設定しなければならなかったのかがどの解説を読んでも不明だ。「ベトナム戦記」については雑誌の連載であり その文字数や内容も制限せざるを得なかったことはわかる。 しかしそれ以上に エピソードにしても 内情 にしても 心情にしてもその体内でグツグツと煮詰まったものが溢れ出てくることを抑えることは困難だっただろう。その思いのままに綴ったのが本作なのではないだろうか。作者はその架空の設定 こそお蔵入りする理由としているが、 むしろ年代的にベトナム戦争が間近であったからこそ隠しておかなければならなかったことや実在の人物への配慮などがその理由だと想像するに足りる。 確かに「輝ける闇」は文学作品としては脅威のまとまり方をしているしドキュメンタリーとしても超一流だ。 しかし 本作の思うままに筆を殴りつけているような激情とも言える文章に圧倒させられざるを得ない。