【感想・ネタバレ】コンプリケーションのレビュー

あらすじ

弟の死にまつわる新事実を知った男は、古都プラハに赴いて調査を始めるが、正体不明の女性に加え、昔の連続殺人犯の影もちらつきはじめて……ツイストと謎があふれる一気読み必至のサスペンス!/掲出の書影は底本のものです

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Posted by ブクログ

 とても難解でシュールな感じである。しかりオリジナリティは凄いので、新人作家のそういう切れ切れな感性のようなものを味わいたい向きにはフィットする作品であるのかもしれない。

 舞台はプラハ。アメリカの作家がなぜこのようにマイナーな都市を舞台にこのように奇妙なストーリーを作ろうと考えたのかはよくわからないが、コンプリケーションと呼ばれる作品タイトルにもなっている錬金術師が作った皇帝の時計と同様に、意外な道具立ての一つなのかもしれない。

 主人公は父の遺品の中に、幼い頃死んだ弟のポールが実は洪水で溺れ死んだのではないとの手紙と四時間後に飛び立つ父名義のプラハ行の航空券を見つけ、手紙の差出人である女性に会いに慌ててプラハに向かうという発端から展開してゆく。もちろんプラハでは、思いもかけぬミステリアスな冒険と迷宮と宿命とが彼を待ち受けていたのである。

 『プラハ自由自在』という謎のガイドブックを片手に、謎の少女や元刑事、連続殺人犯などの横行する幻想的世界に入り込む文脈は奇妙でありながら意欲に満ちている。あまりの混沌と錯綜に難解さを感じるほどの小説であり、唐突に切り取られ提示される調査報告書や供述調書とのつながりを含めて、仕掛け時計のような構成の小説である。

 悪夢のような通路を走り抜けてゆくと思いもかけぬラストで印象深く終わってゆくという、最後には人間の心の迷宮にまで踏み入ってしまうというニヒルなテクニックに満ちた本書はエドガー賞のペイパーバック部門の候補作にあがる作品であるそうな。

 ポケミスとしては冒険心に満ちた出版だったと思うが、たまにはこうした跳躍のような出版も悪くないか。

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2014年10月27日

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