【感想・ネタバレ】予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」のレビュー

あらすじ

行動経済学ブームに火をつけたベストセラー!
「現金は盗まないが鉛筆なら平気で失敬する」「頼まれごとならがんばるが安い報酬ではやる気が失せる」「同じプラセボ薬でも高額なほうが効く」――。人間は、どこまでも滑稽で「不合理」。でも、そんな人間の行動を「予想」することができれば、長続きしなかったダイエットに成功するかもしれないし、次なる大ヒット商品を生み出せるかもしれない!/掲出の書影は底本のものです

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Posted by ブクログ

ネタバレ

大学やり直すならこういう分野も面白そう
以下、印象に残った話

◯市場規範と社会規範は相容れない
男女の交際という社会規範の中に男が奢る→見返りという市場規範を持ち込むとうまく行かない
(一番高いセックスは無料のセックス)

学校の先生の待遇上げた方が良い派だったけど給料上げる市場規範で釣ろうとするより社会規範で持ち上げるのもありな気がする。(先生という仕事のやりがい、社会貢献度、地位)

市場規範に持ち込んだ瞬間、何が正しくて何が正しく無いのかを考えなくなるので、脆い

◯ 知識が後か先かで経験が変わる
「肯定的な予測は、ものごとをもっと楽しませてくれるし、まわりの世界の印象をよくしてくれる。何も期待しないことの害は、それ以上何も得られずに終わってしまうかもしれない」
→車ならBMW、時計ならロレックス、住むなら港区という情報がある人の方が=それが良いものという予測のある人の方が、期待できる人の方が幸せかもしれない。一種のプラシーボ効果と考えたらなんか人間そんなもんだしそこまで抵抗無い。

◯現金が絡んだ方が罪悪感は大きい
共用のトイレットペーパーくすねるのと同じ金額のの現金盗む罪悪感の違い

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2025年02月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書の中身は面白く、文章もわかりやすくて軽快で、本来なら文句なく☆5を付けたいところなのだが、読んでいる最中に著者の行った研究不正がどうにもちらついてしまう。
カーネマンが「研究の半数以上に再現性が無い」と指摘されたことは(カーネマンのそれに対する姿勢はクソだが)、他の分野でも十分にあり得ることで、統計学を意識しながら補強していけば良い部分であるが、アリエリーの取り下げた論文のねつ造に関しては明らかに故意であり、悪意を持っていると思えるので論外。当然、「1つねつ造が見つかったということは・・」となりすべての研究が怪しくなってしまう(;1つのねつ造が認定されれば研究者としては終わりなのでそれ以上の研究不正を探すようなオーバーキルを普通はしない。ゴシップを探すことが好きな研究者はいないし労力も無駄になる)。米雑誌の記事によれば他にも不正が疑われている研究成果が複数あるようだし、共同研究者とされた人物が「一緒に研究したことはない」と証言していたりするようで、それを加味すると本書の内容も綺麗な結果を見る度に「コレ、やってないよな?」となり信頼しきれない気持ちになる。
本書12章の『不信の輪』が非常に皮肉な内容で、まさしく私が著者に対して抱いている感情について描かれている。
翻訳も良く、内容も文章の調子も面白いのだが読みながら妙な気持ちになりたくないのでもうこの著者の本を読むことはないだろうなと思った。


本書序盤のアリエリーの研究を志したモチベーションを記す部分では、非常に気の毒な経験をしていることが分かる一方で、この部分だけは著者のコンプレックスというか恨みのような暗い、冷たいものを感じる文章だった。
自らのケガの治療について研究し、当時の看護師に研究結果を伝えた段では看護師の立場からの言葉を全く意に介していないように見受けられる。私ならばこの看護師の言葉でハッとして、包帯交換にかかる時間が大幅に増えることや医療従事者の積算される苦痛とそれにより離職者が増える可能性(;経験を積んだ優秀な人材を失うこと)の費用対効果のような、反対側の見方からの議論が欠けていたことを反省し、患者・医療者両面からの最適解を探さねばとなるのだが、著者は若いときから「自分だけが正しい」のみの人ではないかと思えた(= なんか不正もやりそうだなぁ)。
この姿勢だが、カーネマンにもその感じがしたのでユダヤ人の持つ特色(;アメリカ人研究者の特色ではないのはわかる)なのか、行動経済学をやる人間の傲慢さなのか、たまたまだろうか。

この部分を過ぎれば以降は不穏な感じは無い。本編に入ってしまうとわかりやすく読みやすく、スラスラと流れる文章で気持ちよく読める。
扱っている話題も興味をそそるものが並び、それを明らかにするための実験と得られた結果も行動学らしく明瞭でよく考えられている。随所に使われている例も身近で(アメリカでも大皿に食べ物が1つだけ残されることや女性のステレオタイプについては日本固有の考えではない点でも驚いた)、専門用語や模式図を使わずとも易しく、大雑把に行動経済学の成果を短い文章で上手く示せる(;事前にカーネマンの著書を読んでいるために感じるのかもしれないが)のは著者の力量だろう。この分野の広告塔として有名になったのもうなずける内容だった。


細かく見ていると、データに偽りがないとしても「数字の理解がどんぶり勘定過ぎないか?」と感じる部分がところどころにある。

5章の中で同じ種類の実験をしているのに数字が違いすぎることには疑問を感じる。
164ページの実験でのキャラメルは無料なのか1セントなのかで、一人が持っていく数は3倍程度の差に収まるのに対して、次の169ページ以降のチョコレートでは無料と1セントの間で(無料時の個数はほぼ同じであるのに)20倍の差と、一桁違っている。
このバラツキにはきちんとした考察や再現性を示さないと、チョコレート実験の『労働した場合』の解釈が真逆になり得る(;1セントでの持ち帰り数がマシュマロ実験の比率のように4.5個程度なら、「労働すること(8.6個)は少額の支払い(4.5個)よりも市場規範寄り」という結果になってしまい本書結果とは完全に異なることになる)。

11章のプラセボ(ソービーの実験)の部分でもクイズの正解数にはどれくらいの誤差(標準偏差はどのくらいか)があるのだろうかと気になった。
試験の内容的にサンプル数を増やしてもバラつきは収束しようがなさそうなので、エラーは最小でも1〜2問分くらいあるのではないかと思うのだが、もしそうならば結果がひっくり返ることもあり得てしまう。
また、0.6個の差は相当のサンプル数がないと有意とは言えないし、正答数の有効数字が一定ではなかったり(6.5問や3.3問だけが2桁)、ちゃんと分かって数字を出しているのだろうかと訝しんだ部分があった。

13章の不正直さの実験でも対照群と不正群(?)との比率が実験ごとに結構変わる(1〜8割)のが気になる。これも平均値だけでなく標準偏差のような分布がわかるものが必要ではないのか。

64ページの表の相関係数のように、扱っている相関係数が自然科学に馴染んでいる人からすると異常に低い(自然科学なら偶然の一致〜ほぼ相関していないと解釈する)と感じる点は、「社会科学のデータは因子が多くて系をシンプルにできず相関係数が低くなりがち。大まかな方向性を示せれば良い」ということで理解できる。
しかし、相関係数の低さとエラーの大きさは本質的には無関係なはず(エラー大きく相関も大、エラー大きく相関小、エラー小さく相関も小、エラー小さく相関大、どれももあり得る)で、測定値のエラーについては大まかに考えてはいけないはず。そこら辺がごちゃ混ぜになっているように感じたのは気持ちが悪かった。

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2024年03月04日

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