あらすじ
数万羽から成るムクドリの群れ。まるで1個の巨大な生き物のように大空を黒い塊となって猛スピードで飛び回り、急転回し、場合によっては突然散開し、再び一個の群れに戻る。動物の群れがなぜこのように統率のとれた行動をとれるのか? 動物たちの群れをめぐる様々な謎は、それが哺乳類であれ、鳥であれ、魚であれ、昆虫であれ、多くの科学者や人工知能研究者たちを魅了してきた。神経細胞の集団と、動物の群れの違いをどう見るのか?群れがもつ集団の知性、知能の正体とは何か?群れのなかの個体が隣接する個体と衝突しないためには?群れを構成する個体が従うシンプルな原理・規則とは何か?これまでの知見をくわしく解説しながら、沖縄の西表島を舞台に繰り広げられるカニの集団渡河行動をめぐる著者たちの研究成果を紹介する。著者たちは次第に、群れのなかの個体にとっての「自由」と、集団の統率・秩序の関係に心を惹かれていく。
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Posted by ブクログ
複雑な著者の頭の中を複雑なまま取り出したような本で、説明不足で読みづらい。一文字ずつ丁寧に追っていく必要がある。
独特の論理体系をベースにしているようで、説明不足なまま先走っていく印象。読者が自分で補完してくれということだろうか。
3章のカニの話が出てくるまでは地に足がついていない感じがある。1章2章は3章以降のための布石で、3章からが本番でこの本の肝だと思う。かなり独特で自由奔放な本なので好きな人は好きになると思うが、なんだこの本と思う人の方が多いと思う。
Posted by ブクログ
モノ(個体)とコト(群れ)と解釈することによって、どのように生物が集団での動きを統制しているのか、というのが素人なりにもそれなりに理解できた一冊。あと生き物にとっての「我慢」とはなにか? というあたりもおもしろい。
あとこの我慢についての解説で、受動・能動の関係を統合したものを「受動的能動性」として、ダチョウ倶楽部の熱湯風呂コントの「どうぞどうぞ」で説明しているのだけど、ここがちょっとわかりにくかった。
受動・能動を区別しないという考えはわかるのだけど、そもそも生物における受動がこれまでどのように定義されてきたのかというのが、自分はよくわかっていないからかもしれない。
「受動的能動性」をバークリー『受動的服従』なんかと絡めて受動・能動について考えるとおもしろそうには感じたけど。
群れとは、ただ個体が集合した「もの」ではなく、群れは群れでしかないのだなという感じ。
その「群れ」はなんだかよくわからないが社会性みたいなものが存在していてかなり複雑なんだな、やっぱりよくわからないな、というのはよくわかった。
Posted by ブクログ
相変わらず意味があるのかないのかわからないことを、
意味があるのか無いのかわからないストーリーで展開する本。
科学書でなく、SFとして面白い。
今回の本は、群司さんの本にしては珍しくわかりやすく、面白い。
例によってよくわからない考えを述べた後、
だからこうなるはずだ、とかいって実際に実験orシミュレーションしたら、
ほら確かにこうなったでしょ、という郡司さんの手法は
いっそ謎のカタルシスがあって、この本は特にそれが濃い。
余談:
帯に書かれた池谷先生の推薦文は、推薦文のように見えるけど、
「そういうことがわかる読者は幸せだね」と言っているだけで、
うまいこと推薦文ではない推薦文を書いている。
池谷先生の苦労が伺える。
Posted by ブクログ
毎日新聞の養老孟司書評によると「わかりにくい本を書く著者だったが、今回の著作はみごとにわかりやすくなっている。」とのコトだが、これまでの著作はホントに難しかったのだろうな。
群れがまるでひとつの生き物みたいに動くメカニズムを、実際の動物の群れを観察したり、コンピューター上でシミュレーションしたりして研究するわけだが、そんな研究をする問題意識の根底では「個体-群れ」の関係を「脳細胞-意識」になぞらえている。
群れをシミュレートしてみたモデルとして、バード・アンドロイドをもじった「ボイド」というやつがある。各個体は、周囲の個体の動きを観察して?衝突回避?速度(方向含む)平均化?群れ誘引といった原則で群れとして動く。これが著者にとってはつまらなく感じられ、「ダチョウ倶楽部」モデルを考え出す。これは、みんなが行こうとしているところに行きたがる、というちょっと複雑なモデル。個体に群れへの同調性みたいなロジックを仕込まないところがミソだとか。
さらにはカニの群れを使って時計や計算機を作ろうとしたりするのだが、段々と何をやっているのか訳が分からなくなってくる所も。すごく大事で難しいことをやっている気もするが、大したことないことを殊更むずかしく研究している気すらする。いやまあ難しい。
しかし西表島でカニの群れを観察する仕事って、なんだか憧れてしまうな。
Posted by ブクログ
集団行動についての本かと思ったら、哲学、生物学、数学、ロボット情報学からダチョウ倶楽部までを縦横無人に駆け巡って、「ヤドカリは痛みを我慢する」など一部の内容以外は、ほとんど理解できないほど難解。少なくとも普通の新書レベルではない。
結論であるはずの、「意識は判定されるモノではなく、経験されるモノ・コトスペクトラムである。群れが意識を持つか、という問いは、群れが『経験される現象』であることを通して、逆に『経験されるしかない意識」というものを再認識させる問いであるといえるだろう』という本文最後の一文すら意味が分からない。
要は、群れと個体は、区別できない、という主旨でよいのか?
Posted by ブクログ
相当読むのが難しいですが大変示唆に富む新書です。しかも著者の名前がいい。武道において、自分と相手が一緒になってしまうみたいな話がありますが、それを、この本では「予期」と称して、この「予期」の相互作用によって、群れが形成されるとの仮説を展開していきます。正直なところ、非同期であるという点が「モノ」と「コト」のハイブリッド性に近づくあたりの記述は理解しきれていませんが、自己言及、差異、シニフィアンとシニフィエ、禅みたいなところを論ずる時に、群れという仕組みから出発するというのはアプローチとして有効であろうと感じるところです。しかし下北沢のB&B、うっかりこんな本が平積みされててやはり油断なりません。