【感想・ネタバレ】傷―慶次郎縁側日記―のレビュー

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何回読んでも…涙。

2023年11月読了。
もう刊行されてから何十回と繰り返して読んでいるシリーズなのに、一番初めの「その夜の雪」を読むと、必ず涙が溢れてしまう。

こういう手合の連作短編小説で、一発目にこんな物語を書けるのは、著者が女性だからかな…と思ってしまう。男の作家では、こんな悲惨なエピソードから書き始める度胸は無いんじゃないかと…w。
二篇目以降は(その悲劇を通奏低音にはしているものの)オーソドックスな「江戸時代の市井を描いた小説」に成っていくので、この最初の一篇の峻烈な悲しさは読者にとっても「いつまでも引っ掛かる《傷》」と成り、他の作家では作られない見事な「味」に昇華している。

著者が早逝され、もう続きが読めないのかと哀しんでいたが、つい最近、本書の一篇目と二篇目の間に位置する「長編」が書かれていて、文庫で刊行されたばかりと聞き及び、今から楽しみにしている。

「人の心こそが一番のミステリー」と言ったのは池波正太郎だったと思うが、そうした男性作家が描く「勧善懲悪」なものと違い、著者は「人の世は必ずしも勧善懲悪では済まないし、又、世の人(男女)の心には、単純に善悪や正邪では割り切れないものが潜んでいる」事を良く教えてくれる。それこそが正に「人の心はミステリー」なのだ。

#泣ける #切ない #共感する

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2023年11月20日

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