あらすじ
政治の閉鎖を打破する力を探る!
古臭い大衆迎合政治と否定されながら、世界的に大きなトレンドとなっているポピュリズム。そこには民主主義の本質があった。
伝統的なポピュリズム政治からサッチャー・中曽根のネオ・リベラル型ポピュリズム、そして小泉・サルコジの現代ポピュリズムまで、そのメカニズムを多面的に明らかにする。
社会の停滞を打ち破る政治のダイナミズムは、民主主義の根本的な問い直しから見えてくる!
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Posted by ブクログ
ポピュリズムをネガティブにポジティブに捉えるのでもなく、冷静的に現代の民主主義政治において不可避的に発生するポピュリズムの条件と特性を考察した本。非常に分かりやすく納得させられた。著者も言うようにいかに参加民主主義へと転化出来るかが日本の政治における肝だと思う。
Posted by ブクログ
小泉政権等や各国のポピュリズムについて考えた本。
ポピュリズムの特徴を捉え、かつ、それがどのような方法論か、それによる功罪を書いている。ポピュリズムに関しては、比較的新しく、全体をしっかりまとめている。
Posted by ブクログ
一般的にマイナスイメージで言われることの多いポピュリズムを肯定的に捉え直そうという本。しかし、やはり大衆迎合的な政治のマイナスイメージが拭えなかった。
Posted by ブクログ
サッチャー,小泉純一郎,サルコジ,ベルルスコーニ,都市化の進展とともに細分化された「個人」が増え,規制秩序を変革するカリスマ政治家が支持を伸ばす。結構普遍的な現象なのだね。
「大衆迎合主義」として嫌われるポピュリズムが,なぜ現代先進国の民主政治に現れるのか。それが不可避の現象であることを論証し,それを踏まえて我々はどう行動すればよいのかを探る。
日本では,小泉元首相がポピュリスト政治家として記憶に新しい。もっと最近でも,東国原元宮崎県知事,橋下大阪府知事など。少しさかのぼると,中曽根元首相など。55年体制では伝統的「恩顧主義」で政治と社会の関係性が安定的に構築されていたが,これが崩れてきたのが始まり。
70年代から本格化した都市化によって,個人主義が普及し,従来の票田が先細りになってきたことによって,ポピュリズムが生まれやすくなってきた。伝統的な利益誘導型の政治でなく,分かりやすい目標を提示し,有権者を動員する政治。政治主導で民営化・政治改革が進められる。
現代ポピュリズムは,政治に道徳的基準を持ち込む。有権者の希望に応えていないとして,従来の政治に異議申し立てを行ない,倒すべき「敵」を可視化して「勧善懲悪」ムードを作り上げる。政策の内容よりレトリックが重視されることも多い。
ポピュリズムには従来の政治を動かしてきた左右のイデオロギーを超越している面がある。カリスマ的リーダーが求められる点では権威主義的・右派的であるが,「人々」の間の平等を追求するという面では左派的。変幻自在ではあるが,常に何かを否定することでしか成り立たない政治。
第二章で,ポピュリズムの歴史を種として2つの例に基づいて概観。アメリカのポピュリスト党とアルゼンチンのペロニズム。原因や時代背景は違っても,伝統的社会から工業社会へと移行していく過程でポピュリズムが現れることを見る。移行期の政治的不安定をポピュリズムが埋める。
現代のポピュリズムには,冷戦の終了も大きな原因になっている。共産主義が終焉し,世界が民主主義で埋め尽くされる。冷戦期は社会主義陣営との対立上,自由主義側も理論に磨きをかけなくてはならなかったが,その緊張感が薄れ,政治が迷走。有権者は民主主義が十分機能しないことに苛立つ。
著者はポピュリズムには多くの副作用があることは確かだとしつつ,しかしそれをうまく扱うことで打開の道があると論じる。参加民主主義,熟議の政治などによってポピュリズムとデモクラシーが和解することも可能。