【感想・ネタバレ】アンチェルの蝶のレビュー

あらすじ

大阪の港町で居酒屋を経営する藤太(とうた)の元へ、中学の同級生・秋雄(あきお)が少女ほづみを連れてきた。奇妙な共同生活の中で次第に心を通わせる二人だったが、藤太には、ほづみの母親・いづみに関する二十五年前の陰惨(いんさん)な記憶があった。少女の来訪をきっかけに、過去と現在の哀しい「真実」が明らかにされていく――。絶望と希望の間で懸命に生きる人間を描く、感動の群像劇。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

はっきり言ってこれは、読むのがかなりつらい話でした。
つらいというのは、内容が悲惨だということで、小説としての完成度は星5です。

一人で、居酒屋「まつ」を大阪で営む藤太のところへ、中学校の同級生だった40歳になった佐伯秋雄が25年ぶりに訪ねてきます、
秋雄は小学校4年生の女の子、森下ほづみを連れています。
「この子はいづみの子なんや」といいしばらく預かってくれと、置手紙と500万円を残していかれ、藤太はとまどいながらほづみの面倒を見始めます。

藤太、秋雄、いづみは中学の同級生で、三人の親たちは賭け麻雀をする仲間で、三人は親たちに虐げられていました。
でも三人は、三人でいるときだけは明るく、リコーダーの練習をしたり、「まつ」に集まってポーランド人のカレル・アンチェル指揮の「遠き山に日は落ちて」の元曲である「新世界」の楽曲を聴きながら、将来の話をして、心を通わせていました。

しかし、親たちの虐待が酷く、いづみの父は麻雀の負けたかたに、いづみを三人の男たちに差し出します。
それを知った藤太と秋雄は、いづみに知られれずにいづみの敵討ちをとんでもない方法でします。
その事件のあと、三人の交流は途絶えます。

25年後、秋雄の連れてきたほづみは秋雄の子供ではありませんでした。
弁護士になっていた秋雄は、担当していた少年犯罪に巻き込まれて行方不明になります。
いづみの行方も全くわかりません。
そして藤太のところにほづみの父親を名乗る人物が現れますが、何ともいけ好かない人物で、藤太は強い不信感を覚えます。

藤太、秋雄、いづみの置かれた中学のときの家庭環境は考えられない劣悪な状況だったと思います。
特にいづみの環境は悲惨すぎるものでした。
藤太と秋雄の起こした犯罪は同情を禁じ得ないと思います。
そして、最後の秋雄の告白も読んでいてつらかったです。でも秋雄を責めることもできないと思いました。
藤太も死ぬほどつらかったと思いますが、ほづみと一緒に生きていってほしい。それしか言えません。
いづみの残した最後の、藤太との密やかな笑顔を向けているツーショット写真。ほづみはそれを選んだのですから。

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2020年09月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大阪が舞台の小説。どん底に陥っている男が、昔好きだった少女との交流により前を向き始めるストーリー。死や罪といったものが、胃の腑にどじりとのしかかってくる重さを感じた。軽はずみな気持ちでは耐えられない読後感。

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2020年08月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私には「雪の鉄樹」に続く遠田潤子二作目。
どうして主人公はこうなってしまってるのかが気になってぐいぐい引き込まれるところは雪の鉄樹と同じだ。
本当に作者はこういう引き込み方がうまい。

藤太も秋雄もいずみもどこにでもいる中学生なのに、クズな親のせいで歯車が狂って行く。
特にいずみは何も悪くない。なのに理不尽な末路を遂げる。私も坪内のように、最後まで実は生きてるんじゃないかと信じていた。こんなことってある?

だが、全ての人の生きがいであったほずみが飛べる蝶で、ほんの少し救われた気がした。

読んでて膝が痛くなる小説だった。

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2024年07月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

重い。
前半は藤太がぐずぐず言っててなかなか進まなかったけど、過去のことが明らかになるにつれて目が離せなくなっていく。
悲しい話。でも最後はなんとか持ち直す方向で終わって良かった。
余談だけど、遠田さんの下ネタはエグくて苦手。蓮の数式は冒頭で挫折した。

[ストーリー]
藤太の営む居酒屋まつに、秋雄が、いづみの子どもだというほづみを預けて失踪する。3人は仲が良かったが、3人の父親たちが焼死した火事の後、中学卒業をしてから25年疎遠だった。

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2023年03月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

飲み屋を営む藤太の元に中学まで仲の良かった友人、秋雄が少女を連れて訪ねてくる。短い会話の後説明もなく少女を置いて去っていった秋雄。過去に何かあったはずだが最初はまだ明かされない。
ただ生きてるだけ、投げやりな生活を送る藤太。少女と過ごす共同生活を経て少しづつ心に変化がおき少女の為に生き方を改善しようと明確に決意したときは安堵の声が漏れるほど藤太に感情移入していた。
そして少しづつ明かされる過去の凄惨な出来事。
藤太と秋雄といずみ、毒親の元でも3人 心寄せあって生きようとしていたのに、、その父親たちのあまりの人でなしさに言葉を失った。読み終わった後もずっと考え続けてる。なにかもっと救われる方法が他にあったのでは、と。いずみに起こったことは筆舌に尽くし難いほどに惨たらしい。いずみの生涯を思うと読み終わってしばらく経つ今も心が抉られるようです。
何か少し違ってたらまた違う未来があったのかもしれない、とも。
秋雄の最後も辛い。親を手にかけた時から、いやその前から救いきれない傷みをひとり抱えてたのではと、思うといたたまれない。救われて欲しかった。
藤太の打たれ強さが救い。最後はどうとでも取れる幕切れだったけど2人のもとに光が差した、と思いたい。
ちょっと忘れられない読書体験となった。
かなり引きづり感想書くまで時間がかかったし遠田潤子さんの描き出す世界は重くキツいけど、また他の小説も読んでいきたいと思った。



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2022年03月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

個人的に、雪の鉄樹より好きだった。
はじめ、状況がほとんどわからない状態から始まって、藤太とほづみの危なっかしい関係にハラハラさせられる。
居酒屋「まつ」の客と、ほづみ、藤太の三者が、どんどんいい関係を築いていくのと裏腹に、過去の事実が明らかになっていくのが切なかった。
ラストは息を飲むし、涙も止まらなかった。遠田潤子さんの作品を読むのはまだ2作目だけれど、2冊とも、ちょっと自分には考えられないくらい悲惨な人生を歩んでいる人たちばかりが出てきて、感受性が追いつかないことだけが悔しいし、自分の甘さを思い知る。「それでも」生きていく人間の強さを感じる反面、「それでも」生きるしかない人間の辛さから逃げれない作品。

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2019年10月20日

ネタバレ 購入済み

重い物語。藤太、秋雄、いづみの過去と現在。
ほづみを育てていくことで、藤太は再生。いづみには、生きていてほしかった。

#切ない

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2023年02月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

評価は3.

内容(BOOKデーターベース)
大阪の港町で居酒屋を経営する藤太の元へ、中学の同級生・秋雄が少女ほづみを連れてきた。奇妙な共同生活の中で次第に心を通わせる二人だったが、藤太には、ほづみの母親・いづみに関する二十五年前の陰惨な記憶があった。少女の来訪をきっかけに、過去と現在の哀しい「真実」が明らかにされていく―。絶望と希望の間で懸命に生きる人間を描く、感動の群像劇。

親を選べない子供達が懸命に生きる姿が良く描かれている。しかし、結局誰も大人になりきれず再び子供が被害者じゃないかぁ~。懺悔も必要だし反省も必要だが今目の前にある現実を受け入れられない主人公にイライラしどうしだった。

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2018年08月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何とも言えず苦しくなる作品。
残酷な運命の中でも、懸命に生きれば新しい世界に繋がって欲しかったけれど……。
最後は希望に繋がったと信じたい。

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2017年06月19日

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