【感想・ネタバレ】養鶏場の殺人/火口箱のレビュー

あらすじ

1920年冬、エルシーは教会で4歳年下の純朴な青年ノーマンに声をかけた。恋人となったその男性が、4年後に彼女を切り刻むなどと、だれに予想できただろうか──。かのサー・アーサー・コナン・ドイルが判決に異議を表明したという、英国で実際に起きた事件をもとに執筆された「養鶏場の殺人」と、老女二人の強盗殺害事件を通して、小さなコミュニティーにおける偏見がいかにして悲惨な出来事を引き起こしたかを描く「火口箱」を収録。現代英国ミステリの女王が実力を遺憾なく発揮し、犯罪を通して人々の心理を巧みに描き上げた傑作中編集。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

人々を読書に誘うために書かれた二編。
目的が何とも粋。

その目的よろしく、さくさく、ぐいぐい物語は進んでいく。
本格ミステリ的な謎を究明するような物語ではなく、人間の心理がもたらす事件性をサスペンスフルに描いたウォルターズらしい作品。

個人的には『火口箱』の方が好き。偏見、思い込みをうまく仕立てた作品と思う。そういう終着点にするとは思わなかった。

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2017年09月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中編のミステリー2編を収録。
「養鶏場の殺人」はミステリーというよりはホラーっぽい感じだろうか。
若い男女、人生にも恋愛にもあまりにも未熟なのに互いに「恋愛」を意識しあうも、理想や意思がかみ合わず、若すぎるゆえに相手に思いが伝わらない、相手を思いやることもできず、最後にはあまりにも悲しい結末が待ち受ける。。。
実際に起こった事件を小説化されたようです。二人の悩みや気持ちを真摯に聞いてくれる家族や友達が周りにいればこんな事件は起きなかったかもしれない。
それに、女の子の結婚への焦りや家族からのプレッシャーは万国共通なんだなぁ。。。そういう面ではエルシーに少し同情を感じてしまった。彼女のあまりにも強烈すぎるが純情な心がとてもやるせない。
「火口箱」は、ある小さな田舎の村での殺人事件。差別や偏見でがんじがらめになっている住民たちの思い込みや誤解が生んでしまった悲劇。
証言者と警官の会話の場面、火事の場面、ご近所同士の言い争いの場面など、過去や現在が飛び時系列がごっちゃに描かれているため、前半は頭が混乱してしまったが、後半部分は意外な展開に一気読みだった。
両方の作品とも直訳っぽく、淡々と抑揚なく文章が綴られている感じ。しかしその文体が、この両作品で起きた事件の悲しさと孤独と怒りを表現してくれていると思った。

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2015年04月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

行き遅れた女の結婚に対する執念怖~~~!(他人事じゃない)(笑)(えない/(^o^)\)な、【養鶏場の殺人】と、イングリッシュ・アイリッシュ間の偏見が交錯する【火口箱】の2編を収録した中編集です。

私にとっての記念すべき初・ウォルターズ作品。既刊も何度か店頭で見ていたんですが、装丁とか説明文がいまいちそそらなかったのですよね(゜-゜)でも、今回の内容説明は面白そうだわ~!というわけで、一目惚れ買いでございます。

まずは、適齢期を過ぎて焦り始めた女の執念が恐ろしい、【養鶏場の殺人】。
実際に英国で起こった事件に題を取っているそうで、何とあのサー・ドイルもこの事件について言及しているんですね~(゜-゜)
「完全にありえないことを取り除けば、残ったものは、いかにありそうにないことでも事実である」と彼の名探偵に語らせたサー・ドイルの目に、この事件の顛末はどのように映ったのでしょうか。そして、一つの可能性として提示された今作をもし彼が読んだら、どんな風な意見を持ったのでしょう。と、しみじみ思いを馳せてしまったのでした。

が、今作の被害者であるエルシー。同性である私から見ても非常に身勝手で癇癪持ちな女性として描かれていて、読んでいてかなりゲンナリしました。
「私は何も悪くない!私が不幸なのはあんた達のせい、悪いのはあんた達よ!」
とヒステリックに周囲にまき散らしながら、盲目的に愛する男には媚び諂い、「ねえ、結婚いつしてくれるの?」と催促する女って…(震)。
そんな年上女性に愛されてしまった青年にも同情の余地はありますが、本作を読む限りでは「どうにか逃げ切れたやろ~」が正直な感想。

最後まで無実を訴えた彼が、絞首刑に処せられた瞬間、真実を知る者は誰もいなくなってしまったわけですが、仮に彼の言うとおり全てが彼女の自作自演だとしたら恐ろしいなあ(震)。私としては、「私を裏切った彼をちょいとビビらせてやるわー!」な動機であんなことをしでかして、結果事故死に至ってしまったってのがまだしも救いがあるのかなとも思いますが、どうでしょう。それはそれで報われないか…汗。でも、当てつけで自殺するよりは…う~ん…。

続いては火口箱!
強盗殺人事件に端を発した、人種差別的偏見が生んだ悲劇と、その後の関係者達の交流と闘争が描かれる中編です。
イングリッシュとアイリッシュという分かりやすい対立軸が大前提にあり、容疑者とその周囲を取り巻く人々の分かりやすい対立図式があり、それによって読者に「ある偏見=思い込み」が刷り込まれることで意外なラストが演出される、フーダニット物です。うむ、見事に騙されました(笑)。よく考えたら、一番怪しい筈だけどな~(笑)。

殺人事件発生直後、放火事件前後、そして語り手と担当警部のやり取り、これらが交互に描かれるカットバック構成も、物語に緩急を付けてリズム良く読めます。

「ある人物」が、犯人の仕掛けたこの「偏見によって容疑者圏外に自分を置いた」ことを逆手に取って、自分に対する「偏見」を用いて逆襲に転じたことが明かされるラストは、中々の読みごたえがあるどんでん返しです。


背表紙の説明文がいい感じだったので、そのまま引用~(^O^)
1920年冬、エルシーは教会で純朴な青年に声をかけた。恋人となった彼が4年後に彼女を切り刻むなどと、だれに予想できただろう―。英国で実際に起きた殺人事件をもとにした「養鶏場の殺人」と、強盗殺害事件を通して、小さなコミュニティーにおける偏見がいかにして悲惨な出来事を招いたかを描く「火口箱」を収録。現代英国ミステリの女王が実力を遺憾なく発揮した傑作中編集。

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2014年04月29日

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