あらすじ
停滞が続く日本。従来の「国土の均衡ある発展」は限界となり、経済成長の“エンジン”として大都市が注目を集めている。特に東京に比べ衰退著しい大阪は、橋下徹の登場、「大阪都構想」により、国政を巻き込んだ変革が行われ脚光を浴びた。大都市は、日本の新たな成長の起爆剤になり得るのか――。本書は、近代以降、国家に抑圧された大都市の軌跡を追いながら、橋下と大阪維新の会が、なぜ強い支持を得たのかを追う。彼らは歴史的“必然”であり、彼らもまた歴史の一齣でしかないと、制度面からその限界を指摘する。第35回サントリー学芸賞受賞作
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Posted by ブクログ
連綿と続く、国家と大都市(大阪)の抗争を、近代から現代に至る歴史の中にプロットし、大都市の抱える問題と打開への道程をレクチャーしてくれます。
いわゆる「大阪都構想」なるものが、歴史の中でいく度となく、浮かんでは消えてきたことを知りました。また、このような構想が出てくる必然性もよくわかりました。頭が整理できた感じです。
明晰な人が語ると、錯綜する物事も見通しが良くなり、理解しやすくなるというお手本ですね。論者の若さに驚きました。更に研鑽を積まれ、ご活躍されるよう期待します。(^-^)/
Posted by ブクログ
首都東京以外の大都市が直面する問題が、明確に整理されている。東京の後背地となるのか、それとも地方中核都市の自律的発展を後押しするのか、という選択肢を提示しているが、そこにあるのは現行システム上弱体化せざるを得ない都市の不満である。
ところで都市と農村との関係は、金とリーダーシップの流れだけで整理できるものではない。食糧その他の供給地として、人の供給地として、地方の大都市以外の場所との関係性をこれからどのように考えていくのかが一つの課題となるだろう。
Posted by ブクログ
「大阪都構想」が注目される「大阪」を題材に、近代以降の大都市行政の歴史を丁寧にたどりながら、日本における大都市の問題を論じている。
大都市をめぐっては、戦前から現代に通じる3つの対立軸―市長VS地方議会、東京VSその他の大都市、大都市VS全国(あるいは農村)―があるとし、それにそって分析を進めている。また、大都市行政に普遍的なものとして「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」というトレードオフの関係をもつ2つの論理の存在を指摘し、「大阪都構想」にもその2つの論理が内在していると指摘する。そして、それらをいかにバランスさせるかが重要であると主張している。
本書は、大阪の都市行政(市政・府政)の歴史、そして、それを通じての日本の都市行政の歴史が非常によくまとまっていると感じた。また、大阪都構想を橋下徹氏の個人的なパーソナリティと結びつけるのではなく、政策として客観的に分析しようとしているのにも好感が持てた。
個人的には、大都市は、日本経済、また地域経済を牽引する重要な役割をもった存在だと考えており、一元的なリーダーシップによって企業体としての都市全体の利益を見据えた経営を目指す「都市官僚制の論理」がより強化されるべきだと思う。その点で、大阪都構想というのは都市としての力を強化するための一つの解答になりうるのではないかと感じた。著者は、「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」のトレードオフ性を強調するが、私は、2つの論理は都と特別区等との役割分担により両立可能なのではないかと思う。
「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」をどのような手続きでバランスさせるか、という点についての、著者の提案である「都市における政党政治の創出」については、興味深くはあるが、地方自治に一律に国政のような政党政治を持ち込むことにはいささか懸念がある。ただし、大都市に限定して、地方議員選挙に比例代表制を導入したり、議院内閣制的な仕組みを導入することは検討に値すると思う。現行の地方自治法は、大都市であっても、小規模な町村であっても、一律に同様の二元代表制を規定しているが、本書を読んで、それぞれの自治体の性格に応じて、統治システムを選択可能にする多元的な自治制度が望ましいという思いを新たにした。
Posted by ブクログ
国内第二の都市であり、最大の地方都市である大阪が
その制度上持つ矛盾とそこから生じる問題、
そしてそれに対する解決案を
橋下市長の大阪都構想をもとに解説する一冊。
歴史を振り返りつつ体型的に説明されるため
内容を細かく理解できずとも方向性はわかりやすい。
大阪都構想をよりよく理解するのに適していると感じる。
Posted by ブクログ
良書。巻末の参考文献、注記を見るだけで、筆者が本書の執筆のために過去の大都市研究の膨大な蓄積を踏まえて、大都市の歴史を整理、今後の大都市のあり方を書いたことが伝わってくる。大都市について論じる人は必ず読むべき書。
Posted by ブクログ
大阪を事例として、大都市制度の変遷についてまとめられている。
筆者によると、大阪都構想などの大都市制度改革は、二つの論理を内包しているとする。一つは、都市経営の観点からすると、二重行政の撤廃などの効率化を目指し、国際競争力を高めるというものである。いまひとつは、住民に密着した行政サービスを遂行するというものである。このように、部分と全体に関する二つの論理が内包されているため、二つの論理が、衝突してしまうケースもありうる。そのために、いかにして二つの論理のバランスをとるかがポイントになる、と筆者は論じている。
大都市制度の在り方は、地味なテーマではある。しかしながら、近年、大都市制度は各都市で提案されており、政治の世界において、ホットなテーマであると言えよう。本書は大阪を事例にしているが、他の都市でも大都市制度の在り方をめぐる議論は多く存在しており、大阪のみならず、大都市制度に興味がある方は、本書を読むことを勧める。