あらすじ
結婚式会場から姿を消した花嫁が。見知らぬマンションで夫が。名簿に名を連ねる同窓生たちが。嵐の夜に学校で妻が……。〈腕貫探偵〉シリーズでお馴染みの“櫃洗市”で、住人たちが次々に変死する。腕貫さんなくして謎は解けるのか? 大富豪探偵・月夜見ひろゑが驚くべき方法で事件解明に挑む! 殺人街と化した櫃洗市での奇妙・珍妙な事件を描く連作ミステリ6編。
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Posted by ブクログ
腕貫探偵シリーズの流れで、
三作目として読んでみました。
「エスケープ・ブライダル」は、
そういうオチになるの!?と、
ちょっと想像とは違った展開でしたが、
まぁ、アリな範囲ですかね…。
「偸盗の家」は、逆にオチが良かったです。
「必然という名の偶然」は、表題作なんですが、
探偵役の子が気に入ったので、
もっと登場させてほしいです。
「突然、嵐の如く」も、最初はどうかと思ってたのが
最終的な謎解きの部分では癖になってました。
「鍵」は、悪くないけど、ちょっと微妙ですかね。
何か足りない???
「エスケープ・リユニオン」で、
再び大富豪探偵登場…もっと活躍するかと思ってたけど。
二作品だけで物足りないので、
次のモラトリアムシアターに期待して、
今から読み進めます。
Posted by ブクログ
西澤保彦による腕貫探偵でお馴染みの櫃洗市が舞台の短編集。
モラトリアム・シアターの後で読んだので、腕貫探偵シリーズのスピンオフ作品かと思ったが、刊行はこちらが先のようで、モラトリアム・シアターはむしろ本作と腕貫探偵シリーズのコラボレーションというべき位置づけのようだ。
いつもの刑事氷見・水谷川コンビや大富豪探偵・月夜見ひろゑとオヤカタ&ケージなどが活躍する。残念ながら腕貫さんは登場しない。
舞台を櫃洗にする必要性がいまひとつわからないが、腕貫探偵シリーズと関わりのある登場人物もおり、シリーズ好きにもアピールする。ただ、作品は多くが後味の悪い終わり方をし、人間の裏の部分を垣間見せられながら、しかも推理はすれども真相は明かされずというなんだかモヤモヤとしたものを抱えてしまう。本作を読むと、いつも顔を合わせている身近な人の本当に考えていることの恐ろしさを感じて嫌な気持ちになってしまうかもしれない。
Posted by ブクログ
短編集だった。腕貫シリーズを全く知らずに読んでたので、全くバイアスなしで。
1つ1つの短編は濃度の違いはあれ、おもしろかった。時間をいじった叙述トリックとか。
必然という名の偶然…。あくまで短編を束ねてるに過ぎず、全体を貫くテーマという訳では無いと思うんだけど、本のタイトルにした以上、なんらかの必然性がほしい。すべてが偶然の上に成り立つ事件だったことは間違いない。だけど、それが「必然という名」という言葉で括れるんだろうか?と考えると、ちょっと違う気もする。むしろ「偶然という名の偶然」というか。もちろん事件の背景にはなんの理由もきっかけもないということはありえないから、何かしらの必然はあったんだろうけど、それを偶然で包み込むためには相当な必然性を要するみたいなパラドックスが起きそう。書いていて、偶然ってなんだ?ってなんだかわけがわからなくなる(笑)。
解説を読む前にこの感想を書いたのだけれど、解説には「論理のアクロバット」とあった。ふむ。ネガティブに捉えれば、読む人にとっては、論理的ではない(というか現実的ではない?)という評価になるかもしれないということだろうか。このあたりに必然と偶然の線引や定義があるんだろうと思うし、論理とコンテクスチュアルな要素をわけて考える必要があるということなのかもしれないなと感じた。
Posted by ブクログ
腕貫さんの勤める櫃洗市で起こる、腕貫さんの出てこないミステリ短編集。櫃洗市を構成するホテル〈シンヒツ・ロット〉やら私立囲櫃学園やら国立櫃洗大学やら、お馴染みの舞台が登場する。
腕貫さん好きなので、出てこないとやっぱり淋しいけど、このシリーズのノリは好きだし各編ストーリー展開に意外性があって楽しく読めた。
6編のうち、最初と最後が同じコミュニティの話で、あとは登場人物はバラバラ。
「エスケープ・ブライダル」
同級生倉橋の4回目の結婚披露宴に出席すべくシティホテル「シンヒツ・ロット」に来たケーカクこと恵本角樹。倉橋の3番目の花嫁は、披露宴当日に蒸発し、死体で発見されていた。実は、4度目の結婚披露宴は犯人をおびき出すための狂言だった。
結局語り手のケーカクが犯人で驚いた(動機弱すぎ!)。解決してめでたしな感じだったけど、倉橋が2度結婚に失敗したのは事実だったことに気づいて後味悪かった(笑)。
月夜見ひろゑのキャラがマンガチック。裏腕貫さん的にシリーズ化できそう。
「偸盗の家」
最初の誤配エピソードが面白かった。同姓同名で前夫と現夫というなかなかこんがらがりそうな設定。そして継父と連れ子の愛憎…あなおそろしや。
「必然という名の偶然」
これも同姓同名トリックの変型と言えるかな。同窓会名簿の各卒業年度の7番目の人がここ数ヶ月で20日ごとに不慮の死を遂げてるらしい、という法則の信憑性を問題にした話。
いや確かにこれだけでその法則性を当てはめるのは乱暴かもしれないけど、逆にこれほど条件の合う同姓同名が沢山いるだろうか、との思いの方が遥かに勝る。法則性は正しいに一票(笑)。
「突然、嵐の如く」
豪雨で道が寸断されて櫃洗市と石間木市の行き来が出来なくなったことで起こった事件。石間木に居るはずの妻が、櫃洗市で車に放火しようとして体に火が移った挙げ句慌てて飛び出したところ車にはねられ死亡した、と警察から電話が入る。
携帯が今ほど普及してないとはいえ、他人の携帯から電話したら着歴で発信元バレるだろ、とツッコミ入れたくなる話だった。
男性教師をたぶらかそうとする女生徒、怖い。
「鍵」
この話は結構好き。かつて住んでいたワンルームの鍵を見付けたことで、出来心からそこに忍び込んでみる主人公(馬鹿)。ふいに戻ってきた今の借り主と思しき人物に慌て、思わず首を締めてしまう。警察が来て自白するが、殺したのは自分の妻だった。妻も自分をその部屋におびき寄せて殺そうと計画してた、って話。
まぁ、鍵は替えようぜ貸し主。
「エスケープ・リユニオン」
再び第一話に出てきた月夜見ひろゑやらオヤカタやらの同級生界隈の話。
西澤さんってたまに中年のコミュニティを扱うけど、これが結構私にハマる。この同級生達のやり取りも面白く読めた。
前半は第1話でいい雰囲気になった倉橋と鍵谷由衣を取り持とうと同級生達が即席の同窓会を企てるふりしてお膳立てし、彼らは退場、後半は残った同級生のうち芸能人の長渕が殺される。
中心のぼやけた話で、エピソード単位ではなく、時間単位で切り取った物語になってるところが珍しく感じた。