【感想・ネタバレ】薔薇だって書けるよ─売野機子作品集─のレビュー

あらすじ

「楽園」誌上で鮮烈なデビューを飾った新人作家の初作品集。日本最大の創作同人誌即売会「コミティア」に初登場で読書会投票1位を獲得した「晴田の犯行」&描きおろし等含め計7本を収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

カバー下の透かしの美しい装丁と、最近多めのな少し野暮っための絵柄と、タイトルに引かれて購入。

薔薇だって書けるよ
オリジン・オブ・マイラブ
日曜日に自殺
遠い日のBOY
晴田の犯行

が収録されています。
ある人の素敵さってなんだろうか、誰にも言わないけど確かにあるもの、ある時大切だったことがいつか染み渡るように自分の中にとけ込んでしまう事が繰り返されている事への気付き、埋没しているように見える幸せが確かにそこに在る事、お姫様をやめる瞬間。
言葉にできない気持ちを持った花たちが、そこに確かに咲いている。
売野さんの作品はそういう秘密の花園への窓だなあと思う。
でもまだ窓の外から見つめてる感じ。

一昔前の少女漫画よろしく、モノローグが多用された作品で、少女漫画を読みなれない人には読みにくいかなと思いますが、その中の一行が急に斬りつけてくるような鋭さを持っている。
いつか誰かの特別になりたいという気持ちと、立ち尽くすだけの花じゃないのだ、という行動と。
結構”待ち”な人生を送っている各登場人物が最後動き出して終わるところも好きです。

一番好きなのは「遠い日のBOY」
不意にじくりと細い針のような苦しみが溜まっていって、のどの奥に溜まって行く様な気持ちを、どこかの誰かに知って欲しい。
自分の生き方がつまらない物なんかじゃないと約束して欲しい。
どうしようもない不安さを、夜何処からとも無く現れ消える幽霊的な、でも明らかに美しい人物に認めてもらう「いつか王子様がやってくる」的に描かれていて、一見ああ少女漫画やなあという展開、絵もまだ一辺倒ではあるけれども、台詞や飴湯のエピソードなど、光る物があるなと思う。
「がんじょうな幸せ」という台詞には本当にがつんとげんこつ喰らいました。
”頑丈”が平仮名なところがまた、子ども心に描いた不動の尊いもの、と言う感じで気管がしぼられるような胸苦しい切なさがある。
雰囲気で描写して終わらせずに、絶対的に台詞にしようとしているところがいいなあと思う。

現時点では本来星三つ、しかしこの人は続けて行くといい具合にエグく化けそうな感じがして可能性を感じさせるので、あえて星四つつけてます。

0
2011年05月21日

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