あらすじ
記録文学の第一人者である著者が全国を巡り、類稀なる観察眼から生まれた数々の名作。その舞台となった土地の記録、人々との出逢い……。北は北海道から南は沖縄まで、未収録の旅の記録を収めたエッセイ!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
・感想
吉村先生の単行本未収録エッセイ集。
少年時代の思い出を描いたエッセイから、取材で訪れた土地の歴史や風景、風土について描かれたエッセイ。
吉村先生のエッセイや作品を読むたびに、なんと思いやりがある方なんだ…としみじみ思う。
私みたいに自分勝手で薄情な人間とは違うわ。
人情味あふれる人物ってこういう方の事なんだろうなー。
個人的に団塊世代(私の敵)の男性作家の作品は不快に感じる描写が多くてほとんど読まないんだけど、その年代の時に書いただろう吉村作品にはその不快感がない。
バランス感覚と社会への理解、解像度、視点の違いなのかなぁ。
Posted by ブクログ
吉村昭『歴史の街を歩く』河出文庫。
記録文学の第一人者として知られる吉村昭のエッセイ集。
取材旅行や家族旅行、プライベートな旅行で日本各地を訪れた際の話や他の作家との交流などが描いている。巻末には妻の津村節子との夫婦対談も収録されている。
吉村昭の作品との最初の出会いは高校時代だったと思う。大学受験を間近に控えた時期に北大路欣也主演の映画『漂流』の試写会に行き、その後、原作を読んだのが最初である。
その後、『三陸海岸大津波』や『羆嵐』、『破獄』など有名な記録文学は片っ端から読み、小説なども度々読んで来た。数年前に短編集の『遠い幻影』に収録されていた『梅の蕾』を読み、物凄く感動した。
さて本作。最初のエッセイからして面白かった。ある日、吉村昭が自宅近くの吉祥寺の料理屋で、板前と会話するうちに、その板前が吉村が少年時代に度々訪れた伊豆半島の船宿の次男であることを知る。そのことが切っ掛けで吉村は伊豆半島の思い出の地を旅するのだ。
また、夏になると吉村は家族と三陸海岸の田野畑村を旅行していたようだ。田野畑村が舞台となった『梅の蕾』という短編小説は日本人の忘れてしまった心の温かさを教えてくれる感動の傑作である。また、三陸海岸を舞台にした『三陸海岸大津波』という記録文学の傑作も忘れてはならない。
吉村はこの作品の中で北海道の苫前に伝わる『くま獅子』についても紹介している。かつて、苫前では世界でも類を見ない日本最大の羆害事件である『三毛別羆事件』が起きており、『くま獅子』はその事件を素材としているとのことだ。言わずもがな、この事件を題材にした『羆嵐』という記録文学の傑作も忘れてはならない。
定価1,100円
★★★★