あらすじ
人との関わり方が分からない。いじめられても誰にも相談できない。勉強についていけない。家庭にも安心できる居場所がない……何が子どもたちを性加害に向かわせたのか。少年院での勤務経験をもとに、子どもの「性問題行動」の本質、「将来、加害者にしない」ための在り方を説く。
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Posted by ブクログ
著者は、児童精神科医として、長年にわたり少年院で多くの性加害を行った少年たちと向き合ってきた。近年、性加害などの問題行動は矯正施設に限らず、学校現場でも頻繁にみられ、生徒の性問題への対応に悩む教員や支援者が増えている。成人の性犯罪者の場合には、固定化された認知の歪みや逸脱した性的嗜好がみられる。一方で、性加害を行う少年たちは、対人関係スキルの未熟さ、家庭環境の問題、いじめ被害、学習面でのつまずきなど、さまざまな生きづらさやストレスを抱えているケースが多いと著者は指摘する。第1章では、本書の目的である子どもたちを将来の性犯罪者にしないこととし、現在の社会でどのような性犯罪が起きているのかを知る必要があることを指摘する。性犯罪の事例では、特に人を教育する立場、あるいは社会に大きな影響力をもつ立場にありながら性犯罪に及んだ事例を中心に紹介する。第2章では、性の問題行動を止められない要因を生物学的、環境的、心理学的な観点から考察する。第3章では、子どもの性教育の現状と日本の性教育の遅れを多面的に考察する。全国的にも特異な福岡県の「福岡県性暴力対策アドバイザー派遣事業」を紹介し、性教育や性被害の問題を教育する講師の質の担保が課題であることを指摘する。第4章では、子どもの性の問題行動をなくすための課題として、社会性・共感の発達の観点から、対人関係のスキルアップや感情を適切に表現・調整する力、他者の感情への共感などの重要性を強調する。また、対人関係における境界と同意の理解、環境リスクの低減と家庭支援の取り組みとして、子どもとの会話の増加、デジタル環境の整備、孤立を防ぐ学校での見守り、安心できる居場所の確保などの重要性を強調する。子どもたちの育成は、家庭や学校だけの問題とせず、子ども食堂やスポーツクラブなどあらゆる地域のかかわりの中で支えることが、性加害の低減につながる道筋であることを指摘する。