【感想・ネタバレ】メガチャイナ 翻弄される世界、内なる矛盾のレビュー

あらすじ

日本を抜き、GDP世界第二位となった中国。「世界の市場」として熱い視線を集め、外交・安全保障の分野でも存在感は増すばかりだ。しかし、国内では経済格差や環境汚染が深刻化し、少数民族の弾圧、ネット検閲、周辺海域への進出などには世界の反発も根強い。中国は「責任ある大国」になれるのか――。ジャーナリストたちが、中国の深部、そして中国に翻弄される世界へと分け入り、膨張し続ける隣国の現在を描き出す。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

読売新聞の連載を纏めたもので中国の発展と膨張を環境、通貨、外交、消費者、国民感情などの視点から多面的に網羅している。

①海洋の利権と中国
尖閣諸島沖衝突事件での中国の強硬姿勢は中国の海洋上における対外膨張の一端にすぎないようだ。南シナ海・東シナ海ではベトナムやマレーシアと衝突を繰り返し、インドともインド洋で緊張関係にある。中国は漁船保護を名目に武装した監視船を各地に送っている。マレーシアの排他的経済水域では中国がガス田の資源探査を強硬し、マレーシアも海軍基地を建設するなど対抗している。しかしマレーシアの軍事力のみで自衛するのは難しいため、マレーシアはTTP交渉に参加することで経済面での米国との接近を図った。中国としては米国のアジアにおける影響が強まるのは避けたいがために、米国に対抗すべくより一層に強硬な膨張姿勢をとるといった悪循環が生じてしまっている。

②中国マネーと都市生活者の消費行動の変化
中国では食の安全問題に関する報道は規制されているが、富裕層の都市生活者の中国人は徐々に食の安全に関する意識を高めている。その結果として中国都心では日本をはじめとする海外からの輸入食品の需要が拡大している。たとえば日本からは長崎の日本茶葉が県庁のバックアップとともに売り上げを促進し、青森の林檎も安心・安全、高品質を売りに出荷量を伸ばしている。この流れを生かすことは日本の農業の衰退を食い止める手段となりうるかもしれない。またこのことは日本に限ったことではなく、すでにフランスでは成果を上げている。フランスではこの50年でワインの国内消費量が半減し、ボルドーの酒造業者は多く倒産した。しかし中国のワイン消費量はここ十年で二十倍に成長し、日本への輸出額との差を縮めている。近年では中国企業に買収され完全に中国への出荷にシフトした業者も現れ、ボルドーの酒造業者にとって活路となった。
 ただ震災後の現在では中国における日本産農作物の風評被害たるや甚大なものであるし、安全・安心を売りに出せるような状況ではないので東北の農業復興の手段としては厳しいだろうと感じた。

③民主化と中国
以前読んだ『ネット大国』のおける日本に対する中国人の国民感情の分析と多くの点が共通していた。若年層は政治などのメインカルチャーの分野で反日感情を植え付けるような教育がなされているものの、サブカルチャーの分野で日本に親しんでいるため大きな抗日感情には結びつかない。あるいは豊かな生活を追い求めることに忙しい中国人は「関心は政治よりも自分の利益。」なのである。こうしたある種の無関心と打算的風潮からも中国の政治体制は変革が遠のいているのである。また中国の総合的国力は天安門事件の1990年代から飛躍的に増大し、対中経済関係の重要性は高まった。なので(劉氏のノーベル賞受賞をめぐるイザコザはあったものの)基本的には欧米からの中国の人権批判の声はかつてに比べて相対的に弱まったのである。この点からも体制に変化がみられるみこみは少ない。

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2011年10月17日

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