あらすじ
妊婦さんにも、ミステリがいっぱい!もうすぐ新しい家族が加わるっていうのに、「主人と別れて、新しい恋人のもとへ行きたい」「居候が多すぎる」「強面の借金取りがやって来る」「妊婦さんが上の子に厳しすぎる」と、どうしてどこのお宅も問題ばかりなのっ!再びコンビを組んだ聡子先輩と見習い助産師の陽奈に降りかかる、厄介な家庭の事情の数々。自宅出産専門の助産師コンビの持ち込む家庭のトラブルに、伝説のカリスマ助産婦・明楽先生の鮮やかな推理がますます冴え渡る。様々な“家族の愛”をテーマに、心温かなユーモアを描いた、助産師探偵シリーズ第三弾。
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Posted by ブクログ
助産婦探偵第三弾は再び短編。
四つの物語が楽しめる。
夫と別れたい、居候が多すぎ、借金取り、上の子に厳しすぎる妊婦。
さて助産師たちは無事に赤ちゃんを産ませることができるのか?
そして「家族」という聖域に踏み込んで無事でいられるのか?
家族にまつわる絡まった糸をほどいてこれらの問題を解決できるのか?!
『帰ってください』
弟の友達が家に居座っている。
姉である妊婦は、家事能力の全くない、人に頼りきっている男たちの世話を甲斐甲斐しくやく。
机を拭いて、はいはい。
おにぎり作って、あ、この間とは違う中身で、はいはい。
洗濯よろしく、はいはい。
こいつらの言うことをなぜ姉は聞いているんだ?
弟は何も言わないのか?
いやそもそも、居座る理由が意味わかんねーーーーー!
自己中心的すぎて開いた口がふさがらない。
どうやってこの男どもを叩き出そうか?
大きい赤ちゃんの世話なんてしていられないのだ、自分でできることはやれーーーーーー!
そう、言いたいことは言わなきゃ伝わらないのだ。
何が一番大切か、の優先順位をつけることも。
『守ってください』
お姉ちゃんなんだから。
そうやって上の子に辛く当たるのはなぜ?
ガミガミ言ってしまうのはなぜ?
隣人を羨んでしまうのはなぜ?
最近は「毒親」なんていう言葉が出来て、親の支配に関する本がたくさん出版されているけれど、当事者は(親子ともに)なかなかそのことに気付けなかったり認められなかったりするようだ。
私も「毒親」になってしまうかもしれない。
子供のため、と思ってやっていることが、単なる支配になってしまっているかもしれない。
こうやって対外的には内省的でいい母親のように書いているけれど、実際は悪い母親、かもしれない。
やっていることが間違っているかもしれない。
それがとても怖い。
間違っていると気づけたとしてもどこまで戻ればいい?
いや、戻れるの?
それを考えると、不安になる。
そう思えているうちは大丈夫なはず、と自分に言い聞かせて明日も、頑張るしかない。
Posted by ブクログ
助産婦ミステリ第3弾。第1弾と同様,短篇集になっている。日常の謎系のユーモアミステリーという分類になるが,結構,ブラックな描写があり,その点が心に残る。「帰ってください」で,妊婦が言うセリフ「あたしの気持ちを尊重するふりして大事なことから逃げないでよ!」というセリフとか,「守ってください」の聡子の,自分の母親が嫌いでたまらなかったという告白など,セオリーどおりにいかないというか,一筋縄でいかない話作りのセンスは,とても好み。推理小説としてではなく,一つのエンターテイメントとして楽しみたい。★4で。
○ 別れてください
モテる妻と冴えない夫の夫婦が,妻が妊娠し,妻から夫に対し,子どもはあなたの子どもでないと言ってしまったところ,夫が出て行ってしまった。プライドの高い妻を助けるために,昔からの友達が,夫の振りをして,助産婦である聡子達と対応していたところ,その昔からの友達の婚約者が来たり,妹が来たりしたので,見習い助産婦の陽奈が勘違いをしてしまったという事件。最後は,本当の父親が帰ってきて,ハッピーエンド
○ 帰ってください
出産予定の妊婦がいる家に,弟の友人たちが居候しているという話。妊婦に迷惑を掛けているのを見かねて,陽奈が,居候を追い出そうとする。その中に一人,桜庭という男がいて,覗きなどをしている犯罪者のように思えたが,実は,万華鏡を作っているいい人だったという話。最後は,妊婦さんがはっきりと居候たちを追い出してハッピーエンド
○ 払ってください
妊婦の旦那の借金取りが来ているという話。江崎という男が話していた矛盾から,江崎が本当は,妊婦の旦那だと分かる。妊婦の義母が,後妻で,子どもを生んだことがなかったというのが,この話の隠された真相。
○ 守ってください
貸家で隠れて猫を飼っていたのは誰かという点が謎。真相は,妊婦が,幸せそうな家族を引越しさせるために,子どものせいにしたというもの。妊婦に,強引に世話をやこうとしてくる母親に,きっぱり援助を断るように聡子がアドバイスをする。聡子も,自分の母が嫌いで,自分の幸せのために,母の援助をきっぱり断っていたという。