あらすじ
ヒトの大きな脳が作り上げた「社会」は、私達の生きる基盤でもあり、悩みのタネでもある。この社会という厄介な問題を脳はどう処理しているのか。その謎を解く鍵は「社会脳」にある。なぜ他人の視線が気になるのか。赤ちゃんは生きる術をいかにして身につけるのか。ネットで誤解が生じやすい理由とは――ロンドン在住の若き科学者が、自らの軌跡と共に「社会脳」研究の最前線を平易に説く。知的興奮に満ちた一冊。
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Posted by ブクログ
ダーウィンを序章に「進化」は「優れている」と同じものではないと強調し、自身の社会脳研究への道程を振り返り、自閉症児や赤ちゃんの研究を通して社会脳の仕組みを少しずつ解き明かす。研究の背景なども合わせて描かれているところも含め、とても興味深く読めた。
やや自閉症に近い人が少なくないソフトウェアエンジニアはメールでのコミュニケーションを好む、これは文章の場合、声の抑揚や素振りを読まなくても済むことに安心感を覚えているのだろうか、興味深い考察を本書の終章から次に引用します。
『多くの人は、何も言われなくても、相手の素振りからその人の気持ちを自然と推理したり、察したりしているわけです。自閉症成人の場合、この「自然と起こる」社会脳の働きが起きにくいことから、実際の社会的な場面で困難を抱える可能性を示している。』
Posted by ブクログ
自閉症を対象とした研究で有名な著者が社会脳に関して解説した本です。実験心理学的手法と脳科学を駆使して、脳の発達や自閉症を通して、社会脳に関して解説しています。本人の研究者としての履歴のように、今までの研究を進めてきたいきさつが書かれており、今後研究者として身を立てて行こうと思っている学生などにも参考になると思います。意思表示ができない赤ちゃんを対象とした研究手法は、認知症のような疾患においても役立ちそうに思いました。
『自閉症は定型発達の鏡である、自閉症者でない人々は定型発達症候群という障害を持っている、定型発達症候群とは、「他人の気持ちにこだわり、読心術ができているかのような妄想を持つ」「正直で言葉の意味通りのコミュニケーションを行うことができず、言葉の意味とその会話で伝えようとする意図が矛盾してしまう」「社会的場立場や友人関係、他人からの評価など、限られた範囲の内容にしか興味を持つことができない」といった症状を持つ発達障害です。』というのは、興味深かったです。