あらすじ
「風鈴って、まるで人みてえだ……不揃いで、どれも音が違う」
若き風鈴職人と、孤独を抱えた者たちが織りなす、優しくて力強い再生の物語。
師匠夫妻を亡くし、大道芸で糊口を凌ぐ若き風鈴職人・宇多次。
己の未熟さに悩み、型破りな硝子(びいどろ)師・国平のもとで働き始めた彼は、献身的な商家の奥女中・お櫂、奉公先で傷ついた少年・小丸と出会う。
訳あって宇多次は小丸を引き取るが、そこに六年前に出奔した師匠の娘・お勢が突如帰還。
裏長屋での奇妙な三人暮らしが始まった。国平に導かれ、宇多次が新しい風鈴の創作へ挑む一方、お勢の言動には拭いきれない違和感が漂い始めて……。
江戸の市井を描く名手・西條奈加の真骨頂!
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Posted by ブクログ
やっぱり西條さんの人情小説はいい。新刊である本作を手に取ってますますその印象を強くしました。今回は、若き風鈴職人の“宇多次”が主人公なのですが、未熟であるゆえ自分に自信がない上に、師匠の親方夫婦が立て続けに亡くなり、ますますやる気を失っているところから始まるので、何とか彼を応援したいような気持ちで読み始めました。
西條さんの紡ぎ出す登場人物は、宇多次に大きな影響を与える硝子(びいどろ)師の“国平”といい、宇多次が面倒を見ることになる少年“小丸”といい、そして、抱える秘密に驚かされた商家の奥女中“お櫂”といい、みな一様に温かな心根の持ち主で、彼らと関わっていくうちに、宇多次は徐々に前向きな気持ちになって、いよいよ新たな一歩を踏み出すきっかけをつかむところまでくるのでした。
そのきっかけとなったのが現在の『江戸風鈴』をモデルにした“小丸風鈴”。本作を読まれる方は、新刊表紙の金魚や朝顔、花火が描かれたガラス製の風鈴の装画をじっくりと眺めてほしいですし、西條さんが巻末で謝辞を贈られている「篠原風鈴本舗」さんのYouTube動画でその制作風景を鑑賞するのも、本作を楽しむのに大いに役立つと思います。