あらすじ
これまでの聖書の常識を覆す旧約「創世記」の根本的な読み直し。天地創造からバベルの塔にいたるおなじみの物語の真の姿に迫ることで、一個の大胆極まりない精神の軌跡を明らかにする。和辻哲郎文化賞受賞作
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Posted by ブクログ
『ブリューゲルのバベルの塔』展を観に行ってミュージアムショップでみつけた本です。
著者あとがきから
著者は、ユダヤ教、キリスト教信者でもなく、聖書学の専門的訓練も受けたこともない門外漢で、この本は「学術書」でも「研究書」でもない
或る一つの謎を追ってゆくことの楽しさを共に味わっていただければ、それが何よりのこと、と考えている。どうぞ気楽にお楽しみ下さい!
→ 若かりし頃『小説「聖書」』を読んで、人間に戦争を起こさせたりする神様ってなんなんだと、理解に苦しみましたが
長谷川三千子さんの謎解きを読んで、そうだったのか!ということをたくさん知れて面白かったです。
読み易かったし、本当に気楽に楽しめました♪
以下、覚書
巻末「附録1」ヤハウィストの原初史(全文)と「附録2」P資料による原初史
の読み比べが面白かったです
「バベルの塔」の物語は「原初史」の中にあり、その「原書史」は「律法(トーラー)」の中でも、重要かつ特別な位置をしめている
ヘブライの諸部族のあいだに、口づたえの伝書として伝わっていた種々の歴史的事件や物語が、或る時代に、文字によって書きとめられ、文書として出来上がり、まとめられ、編纂され、最終的に、「律法」「預言者」「諸書」というかたちにととのえられたのであろうという。
旧約学
1780年ドイツの学者ヨハン・ゴトフリーノ・アイヒホルン
神を「エローヒーム」と呼んでいる文書を「E」
神を「ヤハウェ」と呼んでいる文書を「J」と名づける
現在では、「律法」の五書は、次の四つの文書資料からなっているとされる
「J」資料(ヤハウィスト資料) 紀元前九〇〇年、あるいはそれ以前に、南王国ユダで成立したと考えられている
「E」資料は、「E」資料(エロヒスト資料)と「P」資料とに区別されていて
「E」資料は「J」資料のほぼ一世紀のち北イスラエル王国で成立したものと思われる
「P」資料は「祭司文書(Priestly Code)」とも呼ばれ、バビロニア捕囚の直前に、おそらくは祭司の職にある者によって書かれたものとされている。
「申命記」のギリシア語訳「デウテロノミオン」の頭文字をとって「D」資料と呼ばれる 紀元前六二二年頃、南王国ユダの神殿から「発見」されたといわれているのであるが、実際にはその時に執筆されたものらしいという。
Posted by ブクログ
某I先生推薦。
なかなか読み応えがありました。
絵から聖書の世界に入った私としては、びっくりする内容。
このように作者に焦点を当てて、聖書を読み取ろうとする試みは、無意味に近い事なのかもしれないが、それでもこのような謎解きは永遠に無くならない。それは、いつでも私たちが知りたがっているから。
今までに無い語り口に夢中にさせてもらった。
Posted by ブクログ
旧約聖書を、「バベルの塔」の話を主軸において、新たな視点から読み解いたもの。
ユダヤ教に信仰のある人には不遜な解釈と映る部分があるかもしれないが、旧約聖書を一つの物語りとして読もうとした時、これはなかなか刺激的な参考書になる。
一つ意見を述べるにしても、その裏付け作業を綿密に行っている。
文章は読者に語りかける口調で書かれていて、難しいことを書いてある割に理解しやすく親しみやすい。言葉使いが多少冗長な感じを与えるが、じっくり読んでいくタイプの本なので、それほど気にならない。