あらすじ
都知事は首相より強い権力者と言われる。首相が頻繁に交代するなか、もう一つの政府とも言える都知事は原則四年間変わらない。一三〇〇万の都民を背景に、GDP世界第一〇位以内の実力を持つ東京都は、日本で突出した力を持ち国政に影響を与え、また公害をはじめとする新たな問題と格闘してきた。本書は、都知事のもと、国家の一歩先を走ろうと試行錯誤した歴史を辿りながら、大都市東京の実態と可能性を明らかにする。
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Posted by ブクログ
都知事にとどまらず、地方自治に関する内容までを含んだ本。内容はかなり濃い。
最近、こういう新書が減っている気がしている。
革新であれ保守であれ、東龍太郎~美濃部亮吉~鈴木俊一~青島幸男~石原慎太郎と、個性の強い政治家が都知事となっている。議会に重きを置かない国政の内閣総理大臣より、公選の都知事の任期は総じて長い4年間、韓国やフィンランドの予算に匹敵する12兆円の予算を左右し、世界の国々と比べても世界第十位のGDPを誇る東京都に君臨する都知事という存在。
読んでいて思ったのは、美濃部亮吉知事が今の東京の基礎を築いたのではないかと思ったことだ。が政府の許可を必要としていた東京都の地方債を、これは違法であるとして訴訟を起こそうとした。結果は失敗に終わったが、これは自治省が、革新自治体が地方債を発行して福祉政策を行うことを妨害する意図があったとも云われる。結局議会の反対を受けて頓挫するが、地方自治を行おうとしたことは、特筆に値するのではないか。また現在行われている法人二税(法人事業税と法人都民税)の導入を決定したのも、美濃部知事の時代である。
また鈴木俊一知事になり、行革の結果財政赤字を脱却したと言うが、オイルショック後の景気回復で収入が増加したこと、法人二税のおかげとも云われる。
また地方分権の一環として、道州制の是非が問われるが、戦時中の遺産として残っているのが東京特別区である。これは戦時中の二重行政を解消するために導入された。これは特別地方公共団体であり、一般的な市町村とは異なる。
また道州制を導入するに当たっても、今の政令指定都市は諸外国の都市州として別枠にすべきであろうと述べている。これは諸外国にも事例があるし、単純に分割したのでは権力が偏るであろうという配慮である。
以上のように、都知事の解説にとどまらず、地方自治とはなんぞやという話もできる。
Posted by ブクログ
財政に余裕があると思っていた東京都。しかし、地方交付税の不交付団体でもあるものの、財政状況は厳しく、歴代の知事も行政改革を断行してきたことが分かる。財政に余裕がない理由として、投資に「選択と集中」がなされてこなかった理由もあるが、東京一極集中と言われるように、他の都市にはない公害問題や渋滞問題、人口過密問題が山積していることが挙げられる。行政サービスの需要の急増により、一人勝ちとされる東京都ですら、財政は厳しい局面を迎えている。この局面を打開するためには、現行の都道府県制度そのものを見直す必要があると筆者は警鐘を鳴らしている。既に大阪都構想や中京都構想が打ち出されているが、筆者は道州制の導入を提言している。
筆者の描く理想の地方分権型社会についてはあまり紙面が割かれておらず、十分なイメージを持つことはできなかった。しかし、本書では都知事のほか、都議会、都財政、都職員、都の歴史についても詳しく書かれており、地方自治を幅広く知る上での良い参考書となる。また、都の予算規模が韓国に匹敵することや大江戸線の名称を知事が独断で決定したことなど、ちょっとした豆知識も得ることができ、都民以外の人が読んでも為にはなるだろう。
Posted by ブクログ
都知事選に合わせて読んだ本。
今年は各候補の政策・主張の違いが特に見受けられずに、候補の選択に非常に苦労した。震災の影響で軒並み防災面の主張が強くなったイメージだが、それ以前も主要候補間でマニフェストの違いはほぼ見受けられなかったように思う。
その中で、都政はどのような歴史を経てきたのか、という点を知りたくなり読んでみた。この本は題目が「都知事」だが、都政全般について深く解説しており、歴代知事の評価の他、都庁の官僚システムや財政についても学ぶことができた。
個人的には、歴代都政がインフラ整備のハード路線か、生活福祉のソフト路線というように、振り子の如く一代ずつ変化しているという仮説が面白く感じた。
内容は総括的で、かつ深彫りしてあることから、都政を理解するには一番いい本だと思う。