あらすじ
家庭崩壊のきっかけは、娘の婚約だった
家族って、なんだろう……?
多くの共感を集めた家族小説の傑作が、待望の文庫化!
高梨家の一人娘・真奈が恋人の優吾を実家に連れてきた。
爽やかな好青年なのだが、
どこか会話が嚙み合わない。
一方母・智子は、不機嫌でため息ばかりつく夫の健一に
辟易している。
見て見ぬふりをしてきた小さな綻びが、
少しずつ大きくなり――。
誰もが経験する人生の曲がり角を通して、
ある家族の変遷を描き、
多くの共感を集めた感動作。
シビアな現実と、全体に流れるユーモア。
家族の悲喜こもごもに「わかる!」「そうそう」と
相槌をうつこと必至、胸に刺さります。
第46回吉川英治文学新人賞候補作。
文庫解説・瀧井朝世
単行本 2024年5月 文藝春秋刊
文庫版 2026年9月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
けっこう、後半はウルウルと目に涙をためながら読みました…。題名の通り、20代の一人娘の結婚が決まってから、両親のもとを去るまでの日々を描いた物語です。
父親(夫)の健一、母親(妻)の智子、その娘でもうすぐ結婚する真奈の目線で時系列で話が進んでいく。真奈の婚約者の優吾の両親は、いわゆるインフルエンサーで、祖父母も資産家で実家が「太い」。真奈の家はごく普通のサラリーマンで、娘が肩身の狭い想いをしないように、立派に挙式ができるようにしよう、と思うと、かなり頑張らないといけない。
夫の健一はそろそろ役職定年で、今後の身の振り方を考えなければならず、家ではため息ばかりついている。妻の智子は着物の着付けの仕事をしていて、専業主婦のようにほぼ家事を一人で担って、夫を支えてきた。
2人とも娘を心から愛しているが、娘の結婚準備をきっかけに、金銭感覚や、お互いへの態度に不満が募り始める。
智子は一生懸命に歩み寄り、「明るい家庭」を維持しようとするが、健一はそんな妻がうっとおしく感じてしまう。
私は最近、女はもっと自由でいいんだ!というメッセージが隠されているような物語や、女がいかに虐げられてきたかを描くことで女側に共感してしまう物語ばかり読んできたが、本書は趣向が違った。
女(主婦・妻・母)である智子をかわいそうに思い、共感すると同時に、家では不機嫌になってしまう夫の健一の気持ちもなぜかよく分かる。両親の仲を取り持とうとする真奈は心優しい素敵な女性で、読者としては「幸せになってほしいな」と心から思う。実家の金銭感覚の違いから、恋人の優吾とうまくいかなくなってしまうのだが、優吾の気持ちもよくわかってしまう上手い描き方だ。
4人全員にとっても共感してしまい、どの立場にも寄り添いたくなる。
結婚生活が長い女性も、男性も、これから結婚しようとする男性も女性も、子どもがいる人もいない人も、読んで心が動かされると思います。
ちなみに
健一は妻をちゃんと愛してきて、大切にしているとは思う。決して悪い人ではないし、よき父親だ。老年になって、家庭のこととは別に趣味を見つけ、そこで異性の友達ができて、ちょっと胸がときめいたりしても別に悪くはないと思う。それにヤキモチを焼く智子は、夫を愛しているんだな、と思う。
私だったら…夫婦といえども、子育てが終わったくらいの年齢になれば、それぞれ別の独立した人格だし、一緒に生計を立て、協力して生活しながら、それを壊さない程度に外で楽しみを見つけるのは全く問題ないと思う。50、60になって肉体関係は気持ち悪いし、人に見られて変な噂をたてられるのも嫌だけど、趣味の活動で異性と仲良くしたり、飲み友達ができたりするのはいいことなんじゃない?と思うな。
もう、お互いに干渉せずに、別々に楽しくやればいい。
卒婚ってやつだな。家庭内別居?
いつまでもラブラブで、二人で共通の趣味を楽しみ、朝昼晩いつも一緒に食事をするような夫婦になれれば、もちろんそれがいいのかもしれないけど、私はたぶん無理だな。
(だってご飯をつくるのがいつも私だから笑)。
切ない結末と、ハッピーな結末が同時にくるので、読後感も複雑。心に残りました。
Posted by ブクログ
この『娘が巣立つ朝』は、娘の結婚をきっかけに、父親、母親や娘…家族それぞれが抱えていた不満や将来への不安が表面化していく家族小説。
特に一人娘・真奈が婚約者を実家へ連れてくるシーンがあるが、婚約者は明るく爽やかな好青年だが、両親は彼の言動や結婚に対する考え方に小さな違和感を覚える。
さらに両家の顔合わせでは、婚約者の父母はそれぞれがSNSで有名な人物であり、自分たちの結婚式に干渉してくる。生活水準やお金、結婚式、親の援助などをめぐる価値観の違いが明らかになり、結婚話は両家全体を巻き込む騒動へ発展していく。
この小説のテーマは結婚は本人同士だけの問題ではなく、両家の経済状況、親の援助、結婚式の費用など、きれいごとでは済まされない現実が描かれ、親世代の「結婚観」と若い世代の考え方がぶつかる。しかし誰か一人が完全に間違っていたり、誰かだけが正しいわけではないところが非常にリアルでした。
僕は娘はいないので、この小説の父親の発言や行動に全て同意はできないが、娘が家庭を離れていく一方で、定年を控えていたり、施設に入っている母親の介護に直面するシーンがあり、その中で苦悩する父親の姿が自分と重なり、感情を揺さぶられる思いがした。
僕の息子2人が、いざ結婚相手ができた時にもう一度読み返してみたい。あらたに何か教訓めいたことを感じるかもしれない。