あらすじ
生まれたときから光のない世界にいながら、音楽への非凡なセンスを示し、ピアノの才能をのびのびと開花させてきた辻井伸行さん。特別な天才のように見える彼も、お母さんが“炎のレッスン”と呼ぶように、毎日何時間もピアノに触れることで、わたしたちに美しい音色を届けています。伸行さんを小学校5年生のときから知る著者が、輝く才能が生まれた秘密を、ときあかします。
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言わずと知れた辻井さんの半生だが、前半子供時代についてはお母さんのいつ子さんとのエピソードが色々書かれてあり、感動が深まる。目が見えないということは母親の顔も知らずに暮らすのかという絶望、赤ちゃんとのコミュニケーションが取れない寂しさ、音に敏感すぎる赤ちゃんに気を遣いながらこなす家事…
そんな中、五感の一つが欠けているのだから他の感覚のどれかがきっと優れているはずと信じて疑わなかったお母さんの信念がすごい。ショパンに合わせて脚をバタバタさせることに気づいたのもそんないつ子さんならではだろうし、それに気づいた時の彼女の喜びを想像すると涙ぐんでしまう。ピアノに出会うことで辻井さんの才能が開花したのはもちろん、家族や友達、世界的な音楽家との関係が開けていったという。その扉を見つけたお母さんすごいなあ。翻って自分は子供の才能や感性に気付こうとする努力をしているだろうかと反省もしながら読み終えた。
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こうやまのりおさんというノンフィクション作家の方が日本人なら誰もが知る、盲目の(。。。という言葉も既に要らない)ピアニスト辻井伸行さんについて書かれた作品。
「僕の演奏を聴いてほしい。お客さんに喜んでもらいたい。」
この本の中で一番印象的だったのは、この言葉でした。
私も十数年ピアノを習い、コンクールで賞を頂いたこともあります。でも、あの頃は母に叱られながらの練習の日々だったので、「なにくそ!」と負けん気だけで弾いていたなぁ^_^;
でも、技術が身についてくると、自分なりに曲を解釈し、もっとこんな風に弾きたいと思えるようになって、それからはピアノがずっと楽しくなりました。
私はピアノを「弾く」楽しみを見い出すまでに何年もかかったので、伸行さんが赤ん坊の頃から音に親しみ、「聴いてもらう」喜びを感じていたのには衝撃でした。でも、だからこそあんなに純粋で喜びに満ちた音が奏でられるんだろうな、とも納得。人の心に沁み入る演奏の秘密が分かりました。
また、この本には、母 いつ子さん、父 隆さん、川上先生などの恩師や、三枝さんや佐渡さんなどの世界の巨匠、学生時代のお友達など周りの方へのインタビューもたくさん盛り込まれていて、この方々の並々ならぬ思いに支えられて「レジリエンスの塊」のような今の辻井さんが創られていったんだなと感じました。
(また、この丁寧な取材ぶりから、作家のこうやまさんが、いかに伸行さんをリスペクトしているか、そして、この本を相当な熱意を持って書かれたか、が伝わってきます)
最後に、子育てオンタイムの母親として、母いつ子さんが身をもって伸行さんに伝えた、
・自分の音楽を豊かにするために、もっと美しいものに触れ、心の眼を養う。
・ちょっとハードルが高くてもやってみる。どんなチャンスも逃さない。
・皆が諦めてからが本番。自分の力を信じ切る。
この3つのマインドは本当に素晴らしいと思う。
特に、いつ子さんはいつも伸行さんの演奏を誉め、「コンクール優勝おめでとう!」と楽しいロールプレイングで、自然と伸行さんが演奏することを「楽しい、嬉しい」と思う気持ちを育まれていたそうです。
この「いつも」っていうのが、本当にすごい!
育児って親子とも気分の波があるので、日常の中でコンスタントにやりきるって、実はかなり難易度高いタスクだと思う。。。
でも、この本を読んで、出来るだけ、うちの子達の演奏にも最大限の祝辞を送ってみよう、と思いました。それが「誰かを喜ばせる喜び」という、とてつもないパワーを生み出す"初めの一歩"になるのであれば。
少し前の作品でしたが、親としてのあり方を考えさせられた、学びの多い一冊でした。
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辻井さんの持つ雰囲気は、川原泉さんの漫画に出てくる登場人物をイメージさせる。ユーモアがあってほんわかした中に、どこまでも純粋な心と困難な状況に向き合う強さがある。人との競争心はなく、人を楽しませること、喜ばせることを大事に考えている。
辻井さんの曲、演奏が癒しを与えるのは、彼のそういう人柄と気持ちが伝わってくるからだと思う。
「奇跡」と言ってしまうと、少し簡単な気がしなくもない。辻井さん本人の才能はもちろんだけれどそれを活かす努力と、ご家族や周囲のサポート、音楽界からのサポート…それらが全てかみ合って生まれたもの。それらに聴衆が出会えたことの方が「奇跡」なんだと思う。
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一読して分かることは、「良く取材されている」ということ。例えば、生後1か月の頃の母親の日記が紹介されている。p.40「私や主人の顔を一生見ないで終わるのかと思うと、泣いても泣ききれない。」母親らしい素直な告白が、その後の彼の活躍を知っているとは言え、読む人の心を打つ。
また、ショパンコンクールで、恩師が親しいジャーナリストに送ったメールも紹介されていた。二次予選の直前で、思ったような指導ができない葛藤が綴られている。改めてそのときの演奏を聴いてみたいものだが、ほんの数日で奇跡を起こし、「すばらしいステージ」に変えてしまった精神力に驚かされる。
しかし、コンクールの結果は非情で、12名のファイナリストに残ることができない。p.165「インターネットでは伸行君の人気が一番じゃないか」とあるが、専門家の審査と大衆の嗜好がイコールではないのは、ある意味やむを得ないことなのかも知れない。
次なる挑戦が始まる。先日のオリンピックでも、なでしこジャパンの「狙い通りの2位通過」が話題になったが、次なるコンクールに向けて、例えば、上海会場があるにもかかわらず、わざわざ遠くテキサスまで出かけて予備予選を受けるなど、よりピアニストとしての長所がアピールできる作戦が練られる。そして優勝。
読み終わって感じるのは、いわゆる努力、成功の物語ではないということ。もちろん、努力や成功も書かれているのだが、もっとさわやかな、若者の挑戦を読者が一緒に体験できるような、そんな一冊である。対象となる読者層として「小学上級から」とあるが、大人にも、いや大人にこそぜひ読んで欲しい。
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今年度読書感想文の課題図書に選ばれています。
冒頭からもうあやしくてやっぱり何度も泣いてしまった。
辻井君の魅力がすごい。
辻井くんは(くんづけで呼んでしまう・・・)
2009年ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝しました。
それまで彼の存在さえも知らなかったのですが、
テレビで彼のドキュメンタリー番組を観てとてもひきつけられました。
児童向きに書かれた本が辻井くんのことをどんな風に伝えているのか気になり読んでみることにしました。
著者の幸山さんは何年か前からずっと辻井くんについていて、そのせいか幸山さん自身が辻井くんの魅力にひきつけられて
彼のすばらしさを伝えんとこの本を書いていると感じました。
辻井くんの演奏が、キャラクターが聴衆を夢中にさせる理由がわかる一冊だと思います。
演奏している写真もすごくきれいでキラキラしたものが降ってくるように思いました。
いつか演奏会に行ってみたいです。
ただ課題図書に選ばれてしまったので、子どもたちが純粋に興味をもって読んでくれないような気がして残念です。
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平成24年読書感想文課題図書(高学年)。
全盲のピアニスト辻井伸行くんのおはなし。ハワイのショッピングセンターに置いていたピアノを弾く場面を読みました。それまで自分と家族にしかピアノを聴かせることがなかった伸行くんが、はじめて家族以外の人にピアノを聴いてもらって賞賛の声をもらう場面。ピアノで人とつながることができるってことを知った経験です。
語りきかせをしながらも感動して目が潤みます。
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もはや誰もが知るピアニストの辻井さんがヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝するまでの伝記。ご家族から丹念に取材をおこなったことがうかがわれ、ご家族撮影の写真なども掲載されている。
才能があってもまわりがそれに気付き、育てないと生かされることはないし、辻井さんが本当にピアノに対して純粋な気持ちを持っているからこそ、周囲の人も動かされているというのがよく分かる。
天才であってもあたりまえに父親との関係に悩み、ショパンコンクールでは壁に当たっているのだが、苦しみの部分よりも明るい部分に焦点を当てており、読んでいて前向きになれる本である。「高尾山の風」という曲の重要性がよく分かる。
辻井さんの時代に生きられたことが嬉しいと思える本。
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ピアニスト辻井伸行さんの、ピアノとの出会い、そして現在の活躍までの物語を、ノンフィクション作家のこうやまのりおさんがまとめた一冊。
辻井さん、本当に素敵な音色を奏でますよね!
私も、辻井さんの演奏動画、普段から自分の練習の参考としても沢山拝見しています。
辻井さんは、生まれつき両目が見えない。だけど、赤ちゃんの頃からおもちゃピアノで遊んでおり、幼い頃から音楽の才能の片鱗が見えて、ご両親を驚かせた。
以前の金スマの特集でも見たのだが、辻井さんと「聴衆」との出会いがすごくドラマティックで、私の頭にも焼き付いている。
5才の誕生日。サイパンでの初の海外旅行のときだ。ショッピングセンターの自動演奏ピアノの音色を聴いたとき、伸行少年は、
「僕が演奏したい」と言い、お母さんはスタッフにお願いした。
そこで弾いたのは渚のアデリーヌ。
そこでは大きな拍手と歓声が鳴り止まなかった。それが、初めての聴衆との出会い。
辻井さんは、小学3年の頃から数年間点字楽譜を使用していたが、上達が速く楽譜の作成が間に合わなくなり使わなくなった。
その後は演奏を録音したテープを聴いて練習するようになった。
辻井さんは、数回聴くと、その音楽をピアノで再現し、弾くことが出来るという・・・
すごい・・・!
そして、17歳。最年少でショパンコンクールに出場する。
一次予選までは通過し、二次予選も観衆を惹きつけたのだが落選。
そのとき、「何故彼が落選したんだ?」という声が世界中にとどろいたという。
しかし、二次予選の数日前までは、先生もこのままでは進めない、と思っていたようだ。
クラシック音楽は、演奏技術だけではなく、曲をどう理解したら良いかが求められる。
奥深い人間の感情を音楽で表現することが大事で、若い辻井さんにはまだそれが足りていないと感じていたという。
(例えば、「雨だれ」は、ショパンが結核となり、スペインのマヨルカ島の修道院の小さな部屋で、悲しみと孤独を表現するために作ったという)
しかし、辻井さんの切り替えは早かった。もう、次の目標を目指して進む。
そして、アメリカのヴァンクライバーン国際ピアノコンクールで優勝を果たすのだ。
(世界的なピアノコンクールとしては、ポーランドのショパンコンクール、ロシアのチャイコフスキーコンクールが有名だが、多彩な作曲家の曲をこんなに沢山課されるコンクールは他にない。という)
辻井さんのピアノとの繋がりやピアニストとしての軌跡の他、辻井さんの家族や友人との関わり、今までの学校生活なども描かれている。
辻井さんの友人の言葉に、彼は人のことを悪く言うことがない、とあったけど、辻井さんは、本当に心が優しくて、謙虚で、その人間性が演奏にも表れているんだと思った。
いつか生で演奏を聴いてみたいピアニストの一人です。
よし、私も練習がんばろ!
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読み終わってすぐに辻井さんの演奏をYouTubeで聴きました。もちろん辻井さんのことは存じておりましたが、読み終わって、すごすぎる、、、と圧倒されました。世界で活躍され、とってもかっこいいです。
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従妹の読書感想文の課題本を拝借。音楽を愛する心、観客を喜ばせたいという気持ち、そして観客の拍手によって元気をもらえるという「喜びの輪」。それらが大切なのは勿論だけど、それだけでは太刀打ちできないのが厳しいプロの世界。そんな世界をのびのびと泳ぐ辻井さんの演奏を是非聞いてみたいと思った。
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一度この人のピアノを聴いてみたいと思った。母親と伸行さんが、障害を理由にした生き方をするのでなく、何事も前向きにとらえて挑戦し、努力する姿が子どもたちによいメッセージになると思った。
このお母さんは、最初はずいぶん子どもにべったりのような気もしたが、今となってはそれが必要なサポートの仕方だったのだとわかる。お母さんに視点を当てた本も出してほしい。
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全盲の若きピアニストの成長物語。数々のコンクールやコンサートにチャレンジする。目標は、自分の技術や凄さの披露ではなく、如何に観客に喜んでもらうかに一貫していることに健常者ピアニストとは異なる感覚を持っていることが強みになっている。とても応援したくなるアーティストである.
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全盲のピアニスト、辻井信行さんの軌跡。
生まれた時から視力はなかったけれど、聴力は並外れて優れていた辻井さん。0歳児の時に有名ピアニスト、ブーニンの演奏するショパンを聞き分け、1歳2ヶ月の時には調律師の音に反応して ピアノの音と同じ音程の声を出すなどをしていた。1歳半にはピアノの先生に来てもらって先生の膝の上で本物のピアノの演奏にふれはじめ、2歳3ヶ月にはジングルベルの伴奏をするようになった・・・
これらはもちろん、母親のいつ子さんが、全盲の信行さんに聴覚の鋭さに気がつき、ピアノの才能を伸ばしてやることに献身的に尽くしたからこそでもある。
・・・
純粋な音楽に対する情熱、かと思えば、逆境に強い負けん気、
ピアノを通じて出会う人々との感動と奇跡がここにあります。
2012 読書感想文課題図書