あらすじ
誰がでっち上げたのか。
なぜ捏造したのか。
平家一門の栄華とその没落・滅亡という古代末期の変革の時代を見事に活写した『平家物語』。それが、いつ国民的叙事詩へと祭り上げられ、さらには「国民文学」となったのか。「奉公の誠」を語る日本精神の粋、もののふの文学、歴史の進歩と発展を語る、新興階級武士の文学……。『平家物語』に幾重にもまとわりつく古びた〈読み〉。そうした読みの形成過程を剥ぎ取り、『平家物語』が時代とともにどう歩んできたのかを明らかにする。近代日本の隠されたもう一つの道筋を辿る労作。
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Posted by ブクログ
「平家物語」が前近代から現代にかけて、それぞれどのように読まれてきたか、を辿る。著者の関心は本書後半の戦時下・戦後にあり、それはそれでおもしろく納得もいくのだが、自分としては本書前半の前近代・明治期の方がより興味深かった。前半は時代によって儒学・国学・洋学それぞれの発想で軍記物が読まれていく様を描くが、後半は戦中だけでなく戦後も含めて軍記物が「民族」「国家」の枠から出られなくなっていく様を描いており、何とも息苦しい。著者はそうした息苦しさから平家物語を再び解き放ちたいと願っている。