あらすじ
文学研究者として知られるバフチンだが、実は美学、哲学から言語学、記号論等々をまたぐ、領域横断的な知のありかたが本領。その根幹を貫く「対話原理」に透けて見えるのは、全体主義へと向かう窮屈なイデオロギー状況に対峙し、境界線上を行き来しながら格闘した思想家の姿である。
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Posted by ブクログ
著者である桑野さんご自身もおっしゃられている通り「バフチンの全体像をできるかぎり簡潔した」本となっている。新書というジャンル(?)のイメージに違わずかなり読みやすく、その割に、けっこうディープな(公刊されていない)ノートやメモなどのテキストも引用されたりしていて面白い。新書で読んで「このテキストいい!原典たどってみよう!」と思ったときに、それがない、というのが多々起こるのではないかと思われる。
私が特に参考になったのは、本書の前半から中盤部分にかけて、何回か繰り返される、<対話><対話原理>と<間テクスト性(インターテクスチュアリティ)>との違いに関する説明の部分。私のように、フランス系の言語学・文学から思想系の本を読み始めた人にとっては、あたかも、この二つがほぼ同じものであるかのように考えられがちだけれども、その違いを丁寧に説明してくれている。