あらすじ
『百年の孤独』の世界と交差する傑作。ガルシア=マルケス、最高の短篇集!
大きな翼を持つひどく年取った男、この世でいちばん美しい水死人、無垢な少女エレンディラの数奇な物語……"大人のための残酷な童話"ともいえる6つの短篇と中篇「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」を収録。『百年の孤独』ともつながる、コロンビアのノーベル賞作家ガルシア=マルケスの代表的短篇集。改訳し、詳細な解説を付した新版。(解説 木村榮一・松本健二)
『百年の孤独』と『族長の秋』というふたつの大作にはさまれて生まれたのが、ここに紹介した『エレンディラ』である。とめどなくエピソードがくり出される壮大なスケールの二編の小説の余滴とも言えるのがこの短編集だが、一方ではこの二作品をつなぎ合わせる性格をも備えている。――木村榮一
ガルシア=マルケス初心者にうってつけの入門書ともいえるのが、本書『エレンディラ』であろう。――松本健二
【目次】
大きな翼のある、ひどく年取った男
失われた時の海
この世でいちばん美しい水死人
愛の彼方の変わることなき死
幽霊船の最後の航海
奇跡の行商人、善人のブラカマン
無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語
訳者あとがき 木村榮一
余談ながら――新版あとがき 木村榮一
解説 松本健二
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Posted by ブクログ
『百年の孤独』でガルシア=マルケスのファンになったが、『予告された殺人の記録』で宙ぶらりんになった。『予告された〜』は時系列がややこしいので、面白くなるのは二度目からではないかと勝手に思っている。
本書は期待していた以上にガルシア=マルケスの持ち味が凝縮されていて幸せな読書体験だった。
本作で短編は初めてだが、人を食ったようなクセの強い世界観に、さっきから何を言ってるんだと笑ってしまう。ずっと聴いていたい世界一のホラ話。
ガルシア=マルケスの文章は、迷信が迷信と呼ばれる以前、嘘と本当が科学によって分けられる前の時代に物語が持っていた「魔力」を現代に伝えてくれる。あらゆるものが細かく分類されていく現代において、枠を壊すのでも、はみ出すのでもない、本来のシームレスな関係を取り戻すこの試みは、ますます魔術的な魅力を持ってその輝きを増しているように思う。
本書と同時並行してウェイリー版の『源氏物語』を読んでいるのだが、こちらは実際に魔術が生きている時代の物語であり、祈祷や占星術が生活の一部として機能しながら、高度な学問として扱われている。読んでいて思うのは、昔の人々は呪い(まじない)によって理由のないことに理由を持たせることで、心に溜まる不満を発散していたのだ。星の位置を見て帰る方角を占うことで、安心を得ていたのだと思う。
日常的に占うことのない現代では、理由のないことは心の中で溜まり続けて不安を増長させる。例えば人間関係に答えは無いので現代ではただ我慢するしか無いが、占いがあれば我慢するにせよ悩む必要がなくなる。文明が発展してある程度の生活の安全が保証されれば、余計な不安は精神に悪影響を及ぼすので、生活に占いを用いることは理にかなっているのだ。
なんだか『源氏物語』の感想になってしまったが、本書の語り口は理屈抜きで精神に直接訴えかける力を持っていると思う。あと、マルケスは話が抜群に面白い。魔術抜きで普通に書いても悪魔的に面白い小説を書く人だと思う。めちゃくちゃ笑いました。
本作はちょうど『百年〜』と『族長の秋』の間に制作されたらしいので、次はいよいよ『族長の秋』を読もうと思います。