あらすじ
華も艶もある色彩、柔らかなフォルム、具体的で親しみやすい画題。目にも心にも優しい印象派の作品だが、創作の根底にある「印象」とは何なのだろうか。ルネサンス以来の伝統に支配されてきた西洋の美意識は、マネやモネの登場によって、決定的な変化の時を迎える。本書では、印象派誕生に焦点をあて、その革新性に迫っていく。多彩な人物たちが交錯した一九世紀中葉パリの濃密な空気がここによみがえる。図像資料多数。
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Posted by ブクログ
『印象派の誕生―マネとモネ』(吉川節子、2010年、新潮新書)
本書は、「印象派」と呼ばれる画家たちの交流から作品を分析し、またマネの作品に隠された「謎」から私たちに指し占めしていることを解説している。
ぼくは印象派はもちろんのこと美術に関しては知識が浅いのだが、だからこその新しい発見があった。たとえば、対象から受けた印象をカンバスに描くからこそ表現できるものがある、ということ。これはマネの作品からよくわかった。(詳細は本書を参照のこと。)これは写実主義のリアリズムでは表現できない(とぼくは思った)。
(2010年5月26日 大学院生)
(2011年7月24日)
Posted by ブクログ
モネの話に比重が置かれている印象を受ける。どのような作品から影響を受けたのか、どのような作家に影響を与えたのかがわかり面白い。<草上の朝食>の手の秘密は驚いた。
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[ 内容 ]
華も艶もある色彩、柔らかなフォルム、具体的で親しみやすい画題。
目にも心にも優しい印象派の作品だが、創作の根底にある「印象」とは何なのだろうか。
ルネサンス以来の伝統に支配されてきた西洋の美意識は、マネやモネの登場によって、決定的な変化の時を迎える。
本書では、印象派誕生に焦点をあて、その革新性に迫っていく。
多彩な人物たちが交錯した一九世紀中葉パリの濃密な空気がここによみがえる。
図像資料多数。
[ 目次 ]
第1章 印象派の成り立ちを見てみよう(“バティニョル街のアトリエ”;残りの三人 ほか)
第2章 スキャンダルの真相(落選展の“草上の昼食”;なぜ、大スキャンダルになったのか ほか)
第3章 マネのリアリズム(魅力の源泉;“鉄道” ほか)
第4章 光の画家モネ(制作するモネ;クールベの“画家のアトリエ”と比べてみよう ほか)
第5章 マネの「印象」とモネの“印象”(「印象派」の名付け親;第一回展のキーワード ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
素直に「おもしろかった」というべき本だ。
印象派なんてと思いながら読み始めたら、文字通り目から鱗状態だった。途中までそんな深読みをしてもと思っていたが、絵を見ているようで、視れていなかった。マネのひねりとモネの時間の取り込みは興味深かった。
Posted by ブクログ
印象派の画家たちに多大な影響をおよぼしたマネと、その影響のもとに独自の作品世界を追求したモネの二人をとりあげ、両者にとって「印象」とはなんだったのかということを解説している本です。
最初の章では、印象派の画家たちがえがいた絵画において、「西洋の伝統」と「日本の影響」を統合した「新しい芸術」を示す静物トリロジーが見られることが指摘されています。
つづいて、マネの作品がとりあげられます。《草上の昼食》や《オランピア》が、神話に登場する女神の裸体ではなく、同時代の現実のなかの裸像をえがいたことでスキャンダルを呼び起こしました。著者は、こうした現実をあるがままにえがくことを追求したマネの作品のうちに、近代における人間疎外を見据える問題意識があったことを指摘します。それは、《鉄道》に見られる母と娘のよそよそしさに現われており、さらに彼の《バルコニー》の人物を棺桶に置き換えたマグリットの作品に、その問題意識が明示化されています。ここにはマネが、ボードレールに通じるような近代への疑義を、絵画によって表現していたことがうかがわれます。
他方、マネのリアリズムに影響を受けたモネは、光の印象を見えるとおりにえがくことを追求しました。著者は、モネが光に満ちあふれた水辺の景色をえがくために用いたのアトリエ船が、ドービニーから取り入れたアイディアだったことに触れて、彼の作品世界をつくり出すことになった系譜を解説しています。
日本人にとって親しみ深い印象派の作品が、歴史のなかでどのようにして誕生したのかということがわかりやすく解説されている入門書といえるように思います。
Posted by ブクログ
タイトルのとおり、印象派がどのように生まれたのかを探る一冊。いろいろと知識を得てから見ると、絵画の奥深さが感じられてもちろんよいとおもうけど、何の知識もなく見たとしても、やっぱり感動するときには感動するのだ。だから名画は名画なんだよね。本としては、多少は印象派の知識とか絵の鑑賞歴がある人じゃないと、わかりにくいかも。