【感想・ネタバレ】世界が生まれた朝にのレビュー

あらすじ

マンクンク、おまえは破壊者だ!

訳者・高野秀行が学生時代に出会い、誰に頼まれたわけでもなく訳してしまった、魅惑の書

これぞまさに世界文学が待望していた小説――野崎歓(解説より)

「《力》と、《力》に敬意を捧げる夕ムタムをひっくり返す者」と運命づけられ、大河に、氏族の王に、植民地支配の異人に、そして、自分の社会そのものに挑んでいった永遠の革命児マングラ・マンクンク。
コンゴのとあるバナナ畑で孤独な生を受け、《知》と《力》を追及し、長じては偉大な「ンガンガ」(呪術師)となった男が、半世紀に及ぶ試練の旅を乗り越えて、最後に見たものとは……。
神話的世界から、急激な近代化による矛盾まで、一人の人間の一生を通してアフリカ共通の歴史を描き出す、アフリカ版「百年の孤独」

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Posted by ブクログ

1人のコンゴ人の人生を綴った物語。呪術や非現実的な現象、氏族の伝統への縛りから、アフリカ各国が経験した植民地主義と抵抗の歴史まで、とにかくそういったことに翻弄される主人公の、力と知への探究心が凄かった。そして、無敵だった主人公に「老い」がやってきた時、少し胸が痛くなった。

私の推しである高野秀行氏が、大学時代に作者の弟と知り合いだった関係で、ひょんなことから原稿を読む機会があり、めちゃくちゃ感動してそのまま日本語に訳したのがはじまりだそう。

作者はこの物語を15年かけて書いたという。
こんなスピードで読み進めていいのか、作者に失礼ではないか、と思うが、とにかくページをめくる手が止まらなかった。素晴らしい作品。

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2026年09月10日

Posted by ブクログ

高野秀行氏は翻訳の才も優れていた!!
日本で1996年に刊行され、先月めでたく文庫化された『世界が生まれた朝に』。著者ご本人から「(日本に留学していた)弟に」と渡された本書の原本を帰りのフライトで夢中になって読み、帰国後は熱に浮かされたように翻訳されたという。

他者宛の本を勝手に読むところなんかは高野氏らしいが、翻訳スキルは本当に大したものだった。
ワードチョイスは美しく(星空の描写では眼前に大パノラマが広がったり…)、文章表現にはなんの違和感もない!
本当にあの高野氏が訳したの?(普通に失礼) 彼のネームバリューに釣られ取り寄せたのに、読書中は私の知っている高野氏の面影を一切感じ取れなかった。

舞台は、アフリカはコンゴ共和国。
主人公のマンクンクはなんの前兆もなく、そして碧眼で生まれてきたことから、村人たちから奇異の目で見られながら育つ。それでもコンゴの大自然や村の生活に馴染んでいくマンクンクであったが、やがて身の回りの物事に囚われない偉大なる《知》や《力》を追い求めていく。

「おまえ自身の中にうまくいってないことがあれば、ほんとうの意味で世の中とうまくいっているとは言えまい」(P. 34)

自分なりにあらすじをまとめようとしたけど、めちゃ時間がかかりましたわ…
マンクンクの頭の回転力や行動力が常人を逸していたし、そもそも生き方自体捉えどころがないように感じられた。一緒に行動していると、いつの間にか数メートル先を歩いてそうな神がかりっぷりで、彼を思い返す時にはいつもその輪郭が陽炎のようにゆらめいている。
彼が生涯をかけて追い求めた《知》や《力》も人智を超えたものでいまいちイメージがつかなかったから、再読必至な予感もしている…

「マシニ(マンクンクのこと)の国に現れたとき以来ずっとそうであったように、異人の政府はいかなる状況に対しても最終回答を一つしか持っていなかった。力だ」(P. 243)

訳者あとがきでも言及されていたけど、植民地化されていくコンゴのありようが現代日本の「失われた三十年」と大いに重なった。
ほんのわずかな食料や宝飾品でやすやすと自国を明け渡してしまう首長。(契約書が読めないだけでなく、目先の利益に目が眩んだのだろう) 「土地とそこに存在するもの一切を自分たちのものであると宣言しただけ」で領土を手にし、現地民に過酷な労働や処罰を強いる異人たち。
「こうやって侵されていくのだ」と突き付けられたようで、物語と現実両方に怒りが湧いてきた。

今後読む本の中に「力」をテーマにしたものがある。
《知》や《力》の本質は理解しきれなかったけど、それらは人間の幸福のために使われるべきなのは確かだ。あのマンクンクをしても変えられなかった国の危機を、現実世界では一体誰がどのような「力」で対処するのか。
その本の読後には、少しは本質を理解できているといいな。

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2026年09月06日

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