あらすじ
生後1ヵ月のとき、彼女は殺人現場にいた。犯人は父、殺されたのは母! あまりにも過酷な宿命を背負った幼児はやがてノンフィクション作家となって、《時代が創り出す殺人》というテーマに取り組む。その彼女が収集した殺人記録は「日の丸」から「バブル」まで戦後日本の歩みを映し出す悲劇の記録だった。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
どの物語も当事者ならば「えっ、あの人が?」と思うような立ち位置にいる人が犯人だった。
それは母親だったり妻だったり、信頼すべき大家だったりおとなしそうな家政婦だったり。
「月光仮面を知ってるかい」は、母親の愛情の凄まじさを描いた物語。
人目を気にしつつ、文字を刻んでいる姿を想像すると切なさと狂気を感じてしまう。
「ラヴァーズ・レーンの恋人たち」の空気感がけっこう好きだった。
絶対に知られてはならない秘密。罪の意識に押し潰されそうな日々。
それでも笑顔で過ごしてきた時間。
年に一度だけの悔恨の花束。
これからこの二人はこれまでとおりの生活が続けられるのだろうか。
何も知らなかったときには戻れないのだから。
タイトルにある「侵入者ゲーム」が、人間の醜い欲望を動機としていて一番怖かったし気味が悪かった。
欲望には際限がない。
徐々にエスカレートし、より過激なものを、刺激的なものを求めるようになる。
やがて取り返しのつかない結末に行き着くまでそれは止まらない。
悪意のある傍観者として他人の人生を弄ぶのはもちろん許せない。
でも、何よりも悪意を持つようになった動機が理解できなかった。
身勝手すぎる、としか言いようがない。
命を弄びたいならば、どうか自分の命を弄んでくれと言いたくなってしまった。
それぞれの時代背景も込みで読んでいて飽きないし疲れない。
面白い物語だった。