【感想・ネタバレ】海峡の女神のレビュー

あらすじ

太平洋戦争時、病院船として海軍に徴用された日本を代表する豪華客船・氷川丸。若き軍医・河野順平は、船内に満ちる戦傷兵の無念と、助けられない無力さに向き合う先輩医師たちの姿を目に焼き付けつつ任務に励む。悪化する戦況。攻撃を禁止されている病院船と知りつつも氷川丸をつけ狙う敵の出現。陸軍との対立。氷川丸の運命は? 歴史小説の第一人者が若き軍医の目を通して描く、慟哭の「戦争の内側」

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Posted by ブクログ

氷川丸は、1930年に日本郵船がシアトル航路用に建造した豪華客船。

1941年に病院船として改装され、終戦までの3年半、南方戦線へ24回の航海を行い、3万人にのぼる戦傷兵を収容し、内地へ搬送、終戦後は復員輸送にも使われた。

国際法によって保護されていたとはいえ、軍事輸送に使われていたり、暗号電報が打たれた場合や何らかの加害行為に加担していたと解釈された場合には、保護を失うということで、グレーゾーンが存在し、攻撃を受ける危険性は皆無ではなかった。

この小説は、そんな氷川丸に海軍の軍医として乗船した河野順平(架空の人物)の目を通し、初航海から終戦までの波乱に満ちた収容活動をドラマチックに描いた長編作品だ。

小説とはいえ、登場人物のほとんどが実在した歴史上の人物であり、南洋諸島で繰り広げられた戦闘の様子も史実に基づき克明に描写され、ノンフィクション作品と言っても過言ではない。

ただ、登場人物の言動や順平が体感する軍部の理不尽な行動を通じて、勝ち目のない戦争を始めた国への痛烈な批判姿勢を随所に示す意図で筋道が立てられているのは確か。

印象に残ったのは、戦況が悪化する中、次々に搬送されてくる戦傷兵に対し、医薬品が不足、トリアージで命の選別が行われるほど過酷な病院船内部の描写。

暑苦しく、膿臭や排泄物の悪臭が入り混じる病室、手や足の切断が茶飯事のように行われる日々、南方特有の疫病に苦しむ兵士に対し、応急処置しかできない医師の葛藤など、悲惨な場面がこれでもかというほど描かれている。

それにも増して、順平ら医療関係者が切歯扼腕する思いを痛烈に感じたのは、病院船の規程を尊重せず、傍若無人に振る舞う軍部の圧力。

ジュネーブ条約に基づく捕虜の扱いを無視して医療処置をさせなかったり、治療と投薬は士官優先としたり、軍部のため医薬品を没収したり、挙げ句の果てには、契約違反の引き揚げ船利用を命じた。
 
本土防衛のため、南洋諸島での基地拡大作戦が裏目に出て、圧倒的な戦闘能力を持つアメリカの前に次々と戦艦や空母が沈められ、基地が崩壊する悲惨で重苦しい描写が続く中で、順平が船員と交わす友情、船員の妹とのロマンスといったヒューマンな場面では、気分が和らいだ。


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2026年10月22日

Posted by ブクログ

連合国軍は日本の病院船を軍事と誤認して、17-18隻を戦禍喪失させたが、意外にも日本は誤認したオーストラリア船セントー号しか沈めていないらしい。
これにより日本の病院船を沈めた人たちは無罪になったという。かなりなんだかなぁと思う。
でも今の戦争見てても病院攻撃してるもんなぁ。

山下公園に行けば氷川丸には会えるらしい。

河野順平は氷川丸の配属になった。国際法で認められた病院船だ。砲の一つもないので心細いと思うが、ない方が安全なのだという。一応狙われないことにはなっている。乗員は男だけで、軍の110人、船側215人の航海だ。ちなみに軍の人は医師だ。

太平洋戦争中の日本はあらゆるものが不足している。積み込むものを手配するのも至難の業だ。南洋の伝染病に対する薬まで用意しなければならない。船はトラック島に向かっていたが、行先変更でルオット島へ。軍医たちはクーラーのある部屋でのほほんとしているが、船員は熱中症を起こしてやってくる。物資が不足しているので休息と水分摂取で済ます。ルオット島に着くと、マラリア感染の者や負傷者が運び込まれた。ウエーク島からの輸送船が来ると一気に負傷者で溢れかえった。徹夜で応対する。ルオット島を出航、トラック島を目指す。また治療の日々が始まる。

こうした南洋の島は第一次大戦でドイツから奪って以来日本領になっている。陸軍の病院船はるぴん丸が撃沈された。みなが不安を口にするが、国際法的に登録されていなかった。宴会があり、翌日空襲警報で目が覚める。オペが成功しても出血で死亡していく。

ブラウン島で赤痢が発生したとの一報が入る。クェゼリン島に着くと患者が押し寄せる。設備の整った病院ならもう少し保存的にみられることでも、病院船では思い切った処置が必要になる。死亡しても宗教がわからないので黙祷で済ませる。

ウォッゼ島では厳しい空襲で酷い惨状を呈している。タロワ島でも焼け爛れた患者を収容し、再びウォッゼ島に帰るとまた空襲にあっていた。船内は悪臭が漂っている。横須賀に向けて出航することに。途中サイパンに寄る。まだ平和だった。しかしデング熱患者。民間人を助けたら怒られた。軍人しか治療してはいけないらしい。日本に着いて、病人とお骨を下す。船のメンテナンスと物品補充を行う。

パラオに向かって病人収容、ラバウルに向かう。ニューギニア方面からどんどん負傷者が運び込まれる。爆撃に会い、子猫を胸に死んだ兵がいた。患者たちの人気者になる。グアムで米兵二人がいて移送しろと言われるが、本人達が嫌がり説得を試みる。米兵を連れて船は日本に戻る。本土が空襲を受ける。

トラックに戻ると激務が待っていた。ラバウルに行くと負傷者多数。珊瑚海海戦。次はソロモン諸島のブカ島に津軽といけと。津軽は戦艦なので一緒に動くと攻撃対象にされてしまう。司令部には病院船がどんなものかわかっていない。患者をすし詰め状態にして横須賀へ。440人を運ぶ。

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2026年10月14日

Posted by ブクログ

氷川丸の歴史知らなかった。病院船だったんだ。今も山下公園に係留されている。一度見に行きたい。そして、この物語に想いを馳せたい!

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2026年10月31日

Posted by ブクログ

太平洋戦争開戦直後から終戦まで、氷川丸とそこに乗り組む軍医中尉河野を主人公として描く。戦いの真っ只中に置かれることはほぼないが、それでも凄まじい業務内容・量である。収容した軍人もかなりの数が死んでいく。
日本の病院船がほとんど撃沈されたのに、氷川丸だけが(?)攻撃を受けず、戦後まで生き残ったのは運も勿論だろうが、それだけではない。病院船としての塗装、灯りを守り、輸送物資・人員についても極力(100%ではないのが微妙だが)国際法を守ったのが大きいのはだろう。
病院船の実態がよく分かる。基本的に日本から医療物資を運び、南洋諸島を回って病気(これが多い)と傷ついた軍人に対して医療を施し、戦いに参加出来なくなった軍人を日本に連れ返す。
17年の初め頃から南洋ではもう米国はかなり強く出ており、結果負傷者が多かった、ミッドウェーが転換点という認識は正しいにしても、ソn前は日本が押していたというのは間違いだ。
なお、南洋諸島の位置関係、ミッドウェーがハワイより北だというのは初めて認識。

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2026年09月24日

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