あらすじ
第一次大戦下のフランス。パリの学校に通う15歳の「僕」は、ある日、19歳の美しい人妻マルトと出会う。二人は年齢の差を超えて愛し合い、マルトの新居でともに過ごすようになる。やがてマルトの妊娠が判明したことから、二人の愛は破滅に向かって進んでいく……。早熟な少年の人妻への恋を、天才作家が悪魔的な筆致で描く20世紀心理小説の白眉、研ぎ澄まされた文体で甦った決定訳!
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Posted by ブクログ
10代で書かれたものとは思えなかった。
傍からみるとどうかしていると思うくらい強烈な感情を抱いている主人公の様子が淡々と綴られている。コントロールできない強い感情が愛情とは矛盾した行動をとらせるが、それが「僕」の未熟さや利己的な執着心を感じさせた。
最後、ジャックと子どもの行く末に希望を見つけたように思うが、寂しさが漂っていて印象的な終わりだった。
Posted by ブクログ
18にしてこれを書いたということで、大人になってしまった今読んでみると主人公があらゆる面で青すぎる。家具屋でのやり取りなど、未熟なくせにコントロールしようとするところに不快感はある。ただ若いからこそフレッシュに描けているのだろう。心理描写は非常に巧み。
タイトルからエロティックな印象も受けるがそれほどそんなことはない(マルトが肉感的に描かれているということもない)。『魔に憑かれて』が適訳であろうという解説に納得。
Posted by ブクログ
話の展開はそんなにないものの、独特で美しい比喩表現があちこちにあって言葉選びに感心してしまった。
第一次世界大戦中で、夫不在の家が多かったとはいえ、不倫に対して双方の家族の対応が甘すぎる気もしたけれど、当時このようなことはよくあったのか。
早熟だけど未熟な15歳の心理表現がすごい巧みだった。
Posted by ブクログ
三島が憧れていたと知り、手にとった。
単純な筋ながら、引き込まれた。
最後の一節が特に印象深い。
ただ、新訳だからか、少し言葉が軽い感じがした。
Posted by ブクログ
主人公が人妻と道ならぬ恋に堕ちる、というあらすじそのものはありふれたものだけれど、この作品の背景には絶えず「戦争」という非日常が影を落としている。破滅の先を見てみたいという取り憑かれたような衝動、破壊を目にする時の高揚感、「子ども」というレッテルと自身の内側の感情とのギャップ。エロスとタナトスの甘美さを味わうのは、優れた小説の中だけでいい。強いて言うなら、マルトの最期のエピソードにもう少し余韻が欲しかった。新潮文庫版も読んでみようと思う。