あらすじ
近代国家を担う立法・司法・行政三権のうちでも行政は政治の中枢に位置する。とりわけ日本においては、追いつき型近代化を遂行する過程で行政の果たしてきた役割は大きかった。しかし明治以来の国家目標が達成され、自民党単独政権が崩壊した今日、行政もまた変革を迫られている。即ち、各省間の競争エネルギーを駆り立てた最大動員システムはセクショナリズムの弊害を露呈しているのである。新しいシステムはいかにあるべきか。
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Posted by ブクログ
現在に通じる行政の役割、あり方とその変化。
完全はなく、時代と他者との関係において、より良いものであることができるか。
・小規模な国家行政と地方行政、外郭団体、民間団体の最大動員(監督・指導)
・セクショナリズムのメリット・デメリット(情勢変化)
・政官関係(活動量と自律性)
・行政改革と地方分権
Posted by ブクログ
【読書その39】本書は、1994年に長きに渡った自民党単独政権、55年体制が崩壊した後の行政システムの在り方について論じた本。
著者である京都大学名誉教授の村松 岐夫は、日本の行政の大きな特徴として、最大動員システムをあげる。それは人的リソース、資金、制度等のあらゆるものを、目的に向かって、能率的に動員するというもの。
省庁ごとであるものの、行政組織を超えた民間組織を含むネットワークの構築により社会全体のリソースを最大動員するものである。
欧米諸国に追いつくためには極めて合理的なシステムであり、時代の要請に応えながら一定の機能を果たしたと一定の評価をするものの、それが省庁間のセクショナリズムを構築し、効率重視のため、他の価値への配慮不足があったという。
本書では、官僚制度の構築から、その最大の特徴である最大動員システムが成立した経緯や背景、その変貌過程、その課題について論じている。
本書が発行された94年からすでに18年が経過し、情報公開法や省庁再編、政権交代など、行政をめぐる環境も大きく変わった。しかし、政と官の関係など、現在でも議論になっているものも多く、本書の内容は古くて新しい内容である。