【感想・ネタバレ】如己堂随筆のレビュー

あらすじ

※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。

《如己堂》――それは原子野の片隅にあって、「己の如く人を愛する」というキリスト教精神に満ちた小庵の名である。
本書はその主永井隆博士の14番目の著作で、様々な雑誌の求めに応じて書かれた4~5頁の随筆で構成され、一貫したテーマがあるわけではない。
庭に咲いたエゾギクや子どもの好物の干し柿の話から、天主堂の鐘の音、殉教者や26聖人まで内容は多岐にわたる。
ただし、それを博士が病床で「書いても死にます。書かんでも死にます」と言いながら、生命の灯が続く限りと書き綴ったことを想像すると、頼まれれば断らない「使徒的奉仕心」という言葉すら浮かび、幾多の珠玉編はさらに輝きを増す。
特に後半100頁を費やす「お返事集」の11編は、親しい知人や見知らぬ読者からの手紙に対する返事で、その人柄が溢れんばかりの好編。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

このエッセイ集は、12,3才位の思春期前期の子どもらが読むといいな、というのが第一感。
白血病を罹病し迫りくる死と向き合いつつ病中臥床に著者が、淡々とよしなし想いごとを述ぶるその語り口は、信仰の深さが底に流れ、どこまでも清らで真摯だ。
とくに印象深かったのは、巻末『お返事集』の最後の一編。
6年も大陸で行き方知れずだったクリスチャン看護婦から無事の便りを得て、それへの往信だが…。
終戦後ほぼ1年を経て、満州からの日本人送還が始まった頃、彼女にも
乗船の順番がきて船待ちをしていたところへ、中共軍が攻め寄せてきて、看護婦数名を救護隊として差し出せと要求してきた。そのとき彼女は、別の子連れの看護婦に乗船を譲ってやり、大陸に残ったのだった。
以後ずっと、彼女は中共軍救護隊の一員として、大陸の各地を転戦し廻ったのだろう。
彼女からの無事を知らせる便りは、広東省の山深い地からのものだった。
読後、はて、この女性のその後の行く末はどうであったのか、ひとときあらぬ想いに捉われた。

0
2012年02月17日

「学術・語学」ランキング