あらすじ
2020年の東京五輪開催が決まった今、改めて思い起こしたい「日本が一番燃えた15日間」、1964年東京五輪のこと。わが国が敗戦から立ち直ったことを世界に示し、高度経済成長のきっかけをつかんだ大会といわれていますが、参加した選手やスタッフ、観客にとってはどんな大会だったのでしょうか。東京新聞で長年五輪を取材してきた著者が、15日間の会期を金メダリスト、選手村の理容師、NHKのアナウンサーなど15の視点で再現。こんなにもひたむきな思いが五輪を支えていたのか――と胸が熱くなるエピソードが満載。2020年、果たして私たちはどんな形で世界のアスリートたちを迎えることになるのでしょうか。
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Posted by ブクログ
1964年の東京五輪、15日間を、様々な人物にフォーカスしながら描いていく一冊。金メダリストもいれば、選手村で理容師として働いた女性、陸上競技のスターターなど、裏側の面からも描いているのが面白い。基本的に「存命の方に話を伺う」というスタンスがあるからかもしれないけれど、必ずしも、当時注目されていた競技だけではないところも、そこにこそあの東京五輪の雰囲気がかもし出されているんじゃないかと思うのでした。バレーボールも、東洋の魔女と言われた女子チームではなく、男子を追いかけたり、マラソンも銅メダルをとった円谷ではなく(彼が亡くなっていることもあるけれど)寺澤徹選手に話を聞いていたり。
それにしても、あの時代の、あのオリンピックは、本当に特別だったんだ。日本の行事だったんだ、ということがしみじみと伝わってきます。メダルを期待された選手も、それぞれの役割を持った人も、競技や出番が終わった時に何よりもほっとしたと語っていることが印象的。金メダルを獲得した選手すら、嬉しいよりも安堵が先に立つ。期待された重圧というのはあるのだろうけれど、それがもう今以上のモノだったんだろうなと。
7年後のオリンピック、確かに楽しみなのだけれども、あの時ほどの“特別”にはならないだろうという確信と、残念さと、それを日本が成熟した証として、オリンピックをいいものにしたいと、自分を含めて期待を込めてみるのでした。